part4
翌日、最初に動き出したのは一樹だった。
ホームルームが終わると、教室を出た担任教師に声をかけた。
「岸谷先生、すいません」
「ん、ああ、門司か。どうした?」
「あ、ちょっとあっちの話で協力して欲しいことがあるんですが」
一樹がそう言うと、担任の岸谷は今までのへらへらした表情を引き締めた。
「あっちっていうと、お前の専門分野か?」
「ええ、まあ」
一樹は、そう答えながら苦笑する。
実は、この担任もちょっとした霊障を受けて、それを一樹が解決したことがあったりする。もともと日本史を担当していてそういったものに興味があったこともあり、一樹にとっての数少ない教師側の理解者、というか楽しんで協力者をしている。
「オカ研に今だれが所属しているか、教えてほしいんですよ」
「オカ研、というとオカルト研究会か。そういえば最近、なにか妙なことをやっているらしいな」
「あ、やっぱりそうなんですか」
「ああ、用務員の相良さんから聞いたんだが、土曜の夜中に、部室に集まってなにかやっていたみたいだぞ」
「それはまた、あからさまですね」
「だが、ほら。そのオカルト研究会の会長、うちの理事長の孫だろう。門司も知っているだろう、A組の赤石瑞姫のこと」
赤石瑞姫。オカルト研究会の創始者であり、同時に同級生の間では知らぬものがいないと言われる女だ。
勉強・運動とも成績優秀で、容姿端麗。だが、性格は高飛車で我儘。そして、彼女がいる3年のA組では、彼女は女王のように振舞っているという噂である。
「・・・・・・と、ああ、あったあった」
そういっているうちに、岸谷は持っていた分厚いシステム手帳をぱらぱらと捲り、あるページを開いた。ちなみにこの手帳、生徒の間では「岸谷閻魔帳」と呼ばれており、噂では全校生徒の学校の態度からプライベートに踏み込んだことまで色々と記されていると言われている。
「オカ研に今現在所属しているのは11名、全員女子だ。うち、お前たちと同じ3年生が赤石瑞姫含めて7人、2年生4人、1年生はゼロ。3年生のうち5人がA組」
そして、昼休みまでに顔写真などのデータをそろえておくと約束してくれた。
一樹は、先生の協力に感謝し頭を下げた。