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 親は私が生まれてくるのとすぐに事故で死んだという。最後の言葉は『子供なんて生むんじゃなかった』だという。それなりの富を持っていた親の残された財産は欲の皮を被ったような親族たちが口論をしながら奪い合ったという。お前は生まれてくるべきじゃなかったという。施設も迷惑してたという。


 そんな話を親戚の私を引き取った人が酔いの回った真っ赤な顔を近づけて、お酒を吐くように言っていきた。まだ小学生になったばかりの私には理解できなかったが、その人たちと交わした言葉はそれぐらいしか覚えていない。


 だって家にその人が居たのは物心がついてからそんなに長くないもの。それに私はひどい扱いをされていたらしい、そこは一般の家庭なんて知らないのだからわかるわけがない。


 引き取って以来、約七年で怪我やリストラに借金があったらしい。夜に出て行ったときに話していた。引き取るんじゃなかった、こんなはずじゃなかった。それがその人たちの声を聞いた最後だ。関わった人は不幸になる。いつも不幸を撒き散らすことを終わりにはさせてくれない――


 雲が空一面に広がったくもりの日に公園のベンチで女は目を覚ました。


「夢……」


 服はところどころ破れているので、大きなカーテンの布がベースのローブみたいなもので顔まで覆って身につけている。やっと春がきて寒さで死にかける心配はない。おなかの虫が泣き声出した。


「水」


 公園についている水道は蛇口をひねれば水がそれに応じた量を出してくる。喉を鳴らして飲み続けていく。胃袋は水風船のように水を溜めていった。


 飲み終え、蛇口から顔を上げると公園の入り口の陰に人が立っている。少し見える服は解れ、汚れていることから同じホームレスだろう。それを確認するや女は足早に公園を後に汚れた路地へと向かった。


 いつものように太陽の光があまり入ってこない薄暗い路地を一人歩いている。


「おい、あいつがきたぞ」


 その通りに座っていた、汚れた格好をしている男達が声を上げていた。声を潜めているつもりか、潜めるつもりがないのか普通に聞こえてくる。


 だが女にはいつものこと、そんなのは部屋にほこりが溜まってしまうのと同じ、仕方がないことだ。


 朝から覆っていた雲は灰色が黒い雲が電気を含み音立てている。やがて雨が降ってくるだろう。


 黙々と歩いていると、地面に黒い点が浮かんだ。次第に周りにもでき始め、雨が本格的に降り出した。すると女の行く手を阻むように車が停車する。

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