③
行雲は足手まとい、もとい能力の劣る該当者の資料を手にした行雲は誰にするか決めかねていた。
「どれもなんともいえないな」
「では諦めになさいますか」
座っていた行雲に突然かけられた声は、いつの間にか現れたメイド長の貝瀬だった。
「いきなり現れるのは、やめろといっているだろ」
一瞬身体を震わせ、振り向くといつものごとく無表情でしわのみが刻まれた顔だった。
「ずいぶん前から居りました。ノックも行いましたよ」
「……そうか」
腑に落ちないといった表情をする。しかしたまにあることだ。
「どうするのですか?」
「さらに探すことにした」
最後に持っていた資料に眼を通し終えると机にある紙の山へ乗せる。
「彼でもいいのではないのですか」
貝瀬は今置かれた資料に眼を向ける貝瀬は文章を読み上げる。
「神山幸助 年齢二十一。家は裕福ではないが兄が三人おり、その三人にはそれぞれよい得意な事柄があったが、彼にはなかったため劣等感を常に感じて――」
「いや、だめだ。この者では変えられない」
「そうですか、気にいる者が出るまで探しましょう。ではわたくしはこれで」
そういうと普通に扉から出て行った。
「どこかに隠し扉でもあるのではないだろうか」
後ろ姿を見送る行雲はいつの間にか入ってくることある貝瀬に対して、そんなことを本気で考えだした。