第7話:神様もおかわり?!世界を包む幸運の食卓
無味教団との戦いから数ヶ月。 王都はかつてない食の黄金時代を迎えていた。
魔王はすっかり宮廷の「最高試食官」として馴染み、アルフレッドは「聖女の守護騎士」として、寧々の買い物袋(と彼女の心)を守る日々を送っていた。
しかしある日、空が真っ白な光に包まれ、時間が止まった。 降りてきたのは、この世界を創ったとされる至高神・ルミナス。
「聖女・寧々よ。お前の振る舞う料理が、天界までいい匂いをさせておる。……正直、我慢の限界だ。お前を天界へ招き、神々の専属料理人に任命しよう」
それは、異世界人にとって最高の栄誉。しかし、それは「この世界の人々との別れ」を意味していた。
「天界に行けば、最高級の雲のわたあめや、星の雫のスープが食べ放題だぞ?」
神様の誘い文句に、寧々は一瞬だけ目を輝かせたが、すぐに隣に立つアルフレッドの腕をぎゅっと掴んだ。
「神様、お誘いは嬉しいです。でも……私は、大好きな人たちと一緒に食べるから、ご飯が美味しいんだって気づいちゃったんです」
「ほう、神の供物を蹴るというのか?」
「いえ! 代わりに、神様もこっちに来て一緒に食べませんか? 今日はとっておきの『特製・全部乗せ聖女カレー』なんです!」
寧々は神様の返事も待たず、巨大な鍋をセットした。 魔王が運んできた極上の肉、アルフレッドが守り抜いた大地の野菜、そして寧々がポケットから取り出した「現代の市販カレールー(辛口・中辛・甘口の黄金ブレンド)」。
仕上げに、寧々が全魔力を込めて『至高の煮込み(エターナル・シチュー)」を放つ。
その香りは次元の壁を突き抜け、天界の天使たちまでがヨダレを垂らして地上を覗き込むほどだった。
「……ぬ、ぬおおおっ! なんという刺激的な香りだ!」
神様ルミナスは、神としての威厳をかなぐり捨て、寧々が差し出したカレーライスを口にした。
「う、美味すぎる……!!」
神様がスプーンを動かすたびに、世界中に黄金の光が降り注いだ。
その光を浴びた荒地には緑が芽吹き、病に伏せる者は立ち上がり、争っていた人々は「なんだかお腹が空いたね」と武器を置いた。
寧々の規格外の魔力は、カレーという形を通じて「世界全土の完全浄化」という、前代未聞の奇跡を起こしてしまったのだ。
「参った。これほど満たされた気持ちになったのは、世界を創って以来だ。……寧々よ、お前はもう聖女などではない。世界を胃袋で繋ぐ『食の女神』だ」
神様は満足げに腹をさすり、お土産に特製福神漬けを大量に抱えて天界へと帰っていった。
騒動が終わり、夕暮れに染まる王宮の裏庭。
そこには、いつものように小さなテーブルを囲む寧々、アルフレッド、そして魔王ゼノスの姿があった。
「……結局、神まで手懐けるとはな。私はいつになったら、君を平穏に独占できるんだ?」 アルフレッドが、呆れと愛おしさが混ざったような声で呟く。
「あはは、独占なんて無理ですよ。美味しいものはみんなで食べなきゃ!」
そう言って笑う寧々だったが、ふと思い出したように、アルフレッドの小皿にだけ、ハート型にカットした特製のお肉をそっと乗せた。
「……でも。アルフレッドさんには、一番『特別』を込めてますから」
「…………っ」 騎士団長は、顔を真っ赤にして黙り込み、幸せを噛みしめるようにその肉を口に運んだ。
「おい、我の皿にはハートがないぞ! 差別だ!」 横で騒ぐ魔王を、
「おかわりはあっちです!」と寧々が笑顔であしらう。
異世界に転生した食いしん坊な少女は、その規格外の魔力と胃袋で、結局、世界をまるごと救ってしまった。
彼女の冒険はこれからも続く。 次に彼女が何を「物理(火力)」で解決し、どんな「最高の食卓」を築き上げるのか。それは、キッチンから漂う美味しい匂いが知っている。
最後までお読みくださりありがとうございました!
ここから番外編をぼちぼち書いていきます。




