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第3章:後悔なし/たとえそれが全てだとしても

私はネイティブではないので、不明瞭な点や不自然な翻訳箇所があれば、お手数ですがご指摘いただければ幸いです。

パート 1


「まったく理解できない。この萎縮した脳みそのどこをどう使えば、一区画全体からたった一つの倉庫を探すなんて考えられるんだ?」


未知なるものを探すことが現時点での主目的であるにもかかわらず、数百もの思考が、すでにブレインストーミングで疲弊しきった彼の心を蝕んでいた。


例えば、どこへ向かうべきか?本質的にミナトは引きこもりだったが、部屋がゴミで埋まり、外に出て草に触れることが魔王討伐並みの難題となる末期状態ではなかった。


だからこそミナトは一時間も大田を彷徨い、軒先を伝って屋根に登り、地元民に手がかりを尋ねていた。


「でも確か、ここには何度か来たことあるな」とミナトは呟いた。アヤ姉姉に連れられて黒湯で有名な温泉に行った記憶がすおうる。あるいは、居酒屋をハシゴして泥酔した保護者を引きずって帰ったあの日も。


道中で目を通していたニュースがなければ、彼はこうした出来事をさらに思い出していたかもしれない。


血清投与後に適応できなかった者たちが、路上で制御不能に陥って昏睡状態になるか、私怨による大量殺戮を企てる事例が増加していた。


隠蔽を図っても、情報は情報圏に漏れ出していた。


公式な理由の一つに「精神支配能力による思考干渉」が挙げられていたが、それは無理がある。


仮にそうだとすれば、これほど多くの人間を途切れなく操れる存在を公にすべきではない。


「全部このクソみたいなせいだ」ミナトは頭をかきながら呟いた。今や彼は場所にも思考にも迷い込んでいた。


何百万回も聴き、寝ている間でも暗唱できるお気に入りの曲さえ、ヘッドホンの中で容赦なく叫び続けていた。だがそれらは、かすかな明晰さすら見出す助けにはならなかった。


「連続爆弾犯か」


この興味深い事件に遭遇したミナトは爆発に関する記事を読み始めたが、情報はほとんどなかった。ただ爆発はどこでも起こりうるということだけだ。


地下鉄でも、ショッピングセンターでも、あるいは公園の遊具でも。


彼は、そんな連中の頭の中で何が起きているのか理解できなかった。橋の下のあのバカどもと同じくらい周囲への憎しみに満ちているか、あるいは薬物の過剰摂取で脳が溶けてしまったのか。つまり、精神病だ。


「どうなった?脳が化学物質や興奮剤、訓練で過負荷になると、精神が不安定な者は精神病状態に陥る。攻撃性、他者を完全な生命体として認識しない傾向だ」


ミナトはこの現象を周囲より深く理解していたが、自らが被害者だったからではない。何度も目撃してきたのだ。自己保存本能の欠如、他者への無関心、自制心の喪失、そして理由なき攻撃性の閃光。


こうした者たちの末路は、良くて神経系の焼け焦げと神経細胞の消耗、最悪は死である。だがミナトは爆発を愛する男の運命など気にかけなかった。誰もが自らの人生と滅亡の設計者だからだ。


彼は事態の真相をさらに考え続けることもできたが、運命は別の計画を用意していた。ようやく、おおよそ条件に合う建物を見つけ出した。


二階建ての倉庫は、農業機械の格納庫のように見えた。


「全盛期は過ぎたようだな」大田郊外の建物に近づきながら、ミナトは口笛を吹いた。


廃墟と化した倉庫が彼の眼前に現れた。色とりどりの醜い落書きに覆われ、まるで時間が忘れ去ったかのような陰鬱な場所。ホラー映画の撮影に最適だ。


灰色のコンクリートの壁には、長年の放置によるひび割れが傷跡のように走っていた。かつて鮮やかだった青色のペンキは色褪せ、外壁から層状に剥がれ落ち、病人の体にできた腫れ物のような錆びた染みだけが残されていた。


入口の真上にある二階部分には、背の高い黒い窓が並んでいた。そのほとんどは割れており、風がかすかに唸る黒い穴となっていた。入口からでも、鉄製の老朽化した屋根に穴が開いているのが見えた。


内部の闇を破るのは、夕焼けの光線だけだった。その光が闇の奥深くまでをわずかに照らし出し、塵の粒子が空中で舞っているのが見えた。


通常なら、ミナトはこの廃墟へ向かうことなどなかった。解体を待っているだけの場所だ。だが、彼には選択肢がなかった。


門のない正面入口から足を踏み入れると、湿気と腐った木材、錆の臭いが鋭く鼻を突いた。


見渡せば、壊れたパレット、解体された金属ラック、かつてここに保管されていた機器の残骸、トラックのタイヤ、隅に埃まみれになった工具箱が、まるで小さなハリケーンが過ぎ去ったかのように倉庫中に散乱していた。


「罠にはまるには絶好の場所だ」とミナトは耳を澄ませながら思ったが、聞こえてきたのは奥の階段から続く二階から漏れる誰かのアラナギい息遣いだけだった。


軋む古い木製の階段を登ると、天井から蛇のように垂れ下がった電線が見えた。おそらく照明用だろう。風で揺れるその姿は、いつ何時でも招かれざる客の命を奪い去りそうな蛇のようだった。


二階は一階よりやや清潔だったが、同じ木製パレットや工具箱、至る所に散らばったボルトやナット、隅に積まれた判読不能なラベルの樽が並んでいた。


しかし、これらはみなとにとって何の興味も引かなかった。彼の好奇心の対象は、足元に散乱するボロボロのTシャツだった。


最初は作業員が残した雑巾かと思ったが、あまりに清潔で、その柄があまりにも見覚えがあった。騎士鎧を身にまとったパグ犬と、バイザーを上げた兜の模様だ。


奇人科学者のTシャツは、まるで野犬に噛み裂かれたように破れていた。赤い布地の上にも、鮮血のような濃い血痕がはっきりと浮かんでいる。


少し顔を上げると、血痕を辿る視線は十メートル先にあるその源へと届いた。


「アラナギ?」


気づくより早く言葉が口を滑ったが、心にはアヤ姉姉の入院を知った時のような恐怖はなかった。それは冷酷だったか?確かに。


見知らぬ者の命に、必要以上に心を痛める気はなかった。だが、ただ傍観するつもりもなかった。


彼女の動かぬ身体に近づき、周囲に広がる血の池に足を踏み入れた。手首から肩、背中、脚に至るまで全身が切り傷だらけだ。驚くべきことに顔だけが無傷だった。


どの傷も致命傷になりそうな深さだった。だが襲撃者は明らかにプロだった。骨が露出している傷だらけなのに、彼女はまだ息をしていた。苦しそうに、かすれた声で、だが確かに息をしていた。


「ちくしょう、血がすごい。早くここから連れ出さなきゃ」


時間は刻一刻と迫っていた。運び出さなければ、ここで朽ち果てる。


破傷風も待ったなしだ。犯人捜しさえ後回しになった。だがミナトがアラナギを抱き起こそうとした瞬間、暗がりの隅から、あの組長の携帯で聞いた声が響いた。


「運命が誰を連れてくるかと思ってたよ? まあ、ただの普通のガキか」


カチッ。小さな火が灯り、たばこのかすかな煙の匂いが、この場所の他の悪臭と混ざり始めた。今日の祝宴の主犯が隅から現れた。


地獄のような暑さにもかかわらず、彼はビジネススーツを着ていた。


黒いズボンに、ボタンを半分ほど外した白いシャツ。その上に、一滴の汚れもない白いレインコートを羽織っていた。指一本一本にケルト文字のタトゥーが刻まれている。まるでタトゥーショップを出たばかりのように。


右手薬指だけは例外で、指輪のタトゥーが入っていた。黒髪は短く、少し乱れ、こめかみは剃り上げられ、左眉にはピアスが光る。口元にはくすぶるタバコがぶら下がり、言葉に合わせて揺れていた。


ミナトは凍りついた。恐怖からではなく、驚きからだった。普段は第六感のように他者の気配を感じ取れるのに、観察者が自ら姿を現すまで誰かがいることすら気づかなかった。影に潜む天性の捕食者のように、獲物と遊ぶために姿を現したのだ。


「お前がやったか聞くのは無駄だろうな」 ミナトは歯を食いしばりながら呟いた。


「愚かなことだ。我々は延々と質問で時間を引き延ばすゲームのキャラクターではない」男は高慢に言った。二十歳には見えなかったが、その風貌と振る舞いは戦いに鍛えられた老練者のようだった。


「その通りだ。ただ、少年の好奇心を満たしてやるのが礼儀だろう。一体なぜ俺をここに呼んだ?傷だらけの女を見せびらかすためか?飼い主に死んだ鳥を運ぶ猫みたいに?」


「違う。理由はもっと単純だ。俺の計画を台無しにした男をこの目で確かめたかった。そしてどうやら、お前も彼女に関わっているようだな」見知らぬ男は、使い古した布人形のように床に横たわるアラナギしんそうの方へ頷いた。

向かい側の男の口から出る言葉の一つ一つに、ミナトは何かが爆発するのを感じた。未知の力を持つ未知の敵への恐怖ではない。戦いの前の興奮ですらなかった。


それは怒りだった。アラナギを冷酷に苦しめながら、まるで公園でピクニックでもしているかのように周囲を無視する男への怒り。まるで、理解しやすい世界の絵を壊したくないかのように。


「何がどうなってるのかさっぱりわからん。お前の文句が何かは知らんが…」


「文句?ああ、簡単だ」男は煙を吐きながら軽やかに答えた。「アラナギしんそうさんの研究を快く思わない連中がいる。俺は紛争を解決しに来た。最も手っ取り早く効果的な方法は、暗い隅で彼女を始末することだ。つまり、ここだ」


ミナトの頭の中で何かがはまった。少なくとも、事態の本質が理解でき始めた。この男の言うところによれば、彼はおそらく血清の開発者自身から、障害となる存在を排除せよとの指令を受けて、アラナギしんそうの研究を阻止するために派遣されてきたのだ。


その事実を知ることで、この男と同じ部屋にいることがさらに耐えがたくなった。


「まあ、お前が善人じゃないのは予想通りだ。誰の命令だ?」ミナトは血を流す拳を固く握りしめながら問うた。


「俺が頭が足りないと思ってるのか?そんな秘匿情報を、見知らぬガキに無駄遣いすると思うか?」彼は冷静に言い、応じる気はない様子だった。しかししばらくして、彼は一瞬考え込み、後頭部をこすった。


「だが…名前を交換するのはどうだ?」


「急に気前よくなっても無駄だ。お前は口数の少ないタイプだろう。何より影から彼女を傷つけた。血の匂いすらしない。ただのスカベンジャーだと証明しているだけだ」ミナトは近くに転がっていた釘を敵に向かって蹴り飛ばした。敵は首を傾けるだけでそれをかわした。


「お前はバカじゃないな。確かに俺は無駄口を叩くタイプじゃない。だがお前は、まだ駆け出しの若造ながら真実を求めてここに来た。しかし容赦はできない、残念だがな。真宗と手を組んだ代償として、ここで葬ってやる」わざとらしいお辞儀をしながら、男は腰掛けていた樽から飛び降りた。


彼はミナトにとって嫌悪すべき存在だった。冷酷で皮肉屋、自分だけが正しいと信じている。


指をパチンと鳴らすと、くすぶるタバコの吸い殻がミナトに向かって飛んだ。一瞬だけその飛来物に注意が向いた。


敵が放火魔だという考えは、視線を元に戻した瞬間に消え去った。ただ、もうそこには誰もいなかった。


影も、足音も、タバコの匂いも、存在感すらも消え失せていた。まるで半死の女と二人きりに戻ったかのようだった。この男は最初から存在しなかったかのように。蜃気楼に過ぎなかったかのようだった。


しかし数メートル先で、異様に強い殺意が湧き上がった時、その錯覚は再び打ち砕かれた。まるで自ら獲物となったサファリへ放り込まれたかのようだった。


反射的に後ろへ蹴りを放つが、足が触れたのは空気だけだった。足には真っ赤に焼けた金属のように灼熱する新たな裂傷が走り、血が滲んでいた。


「何だこれは?」 言葉が口から漏れた。何かが自分を斬った感覚すらなかった。


だが傷は紛れもなく現実のものだった。そして灼熱の痛みが、それを最も明確に証明していた。


次の攻撃がどこから、どこを狙ってくるのか、ミナトには見当もつかなかった。敵の姿さえ見えない状況で、攻撃の方向を予測することなど不可能だった。


「透明化?安っぽい手口だな、お前みたいな鼠にはぴったりだ」


反論はしたものの、優位が明らかに自分側になく、焦ってアラナギを急いで引き抜こうとすれば、致命傷になりかねないミスを連発するだけだと、彼はよく分かっていた。


鋭い痛みが彼を麻痺させた。何かが右脇腹を貫いたのだ。肝臓に近い位置で、ほんの数センチずれていれば最悪の結果を招いていた。


「透明化?侮辱だ。これは完全なる存在の隠蔽と呼ぶ」虚無から嘲笑の声が響いた。


捕食者のカモフラージュが解除されたかのように、敵の姿が徐々に現れ始めた。その手はまだ彼の体から突き出ている。槍のように、彼は貫かれていた。


まるで肉と臓器と骨の塊ではないかのように。しかしそこには張り詰めた天竺布の膜が張られているだけだった。微風ですら引き裂けそうな薄さだ。


「私のような殺し屋にも、ある種の掟がある。死ぬ前に、被害者に名を告げる。どうしても抜けなかった悪癖だ」高慢な笑みが顔に広がり、それはみなとからわずか数センチの距離で、腐った魂を真っ直ぐに見据えていた。「スオウタケシ。よろしくな。さあ、死んでくれ」


一瞬だけ、彼はミナトの瞳を見つめた。


何が返ってくるか予想がつかなかった。恐怖か、怒りか、混乱か。相手は子供に過ぎない。命を奪わねばならない子供だ。


しかしその瞳には感情の火花すらなかった。まるで現実から切り離された人形の目。傍観者のように虚ろな視線で眺めている。感情もなければ、苦痛の呻きや嗚咽もない。


命が風前の灯火という状況下でも、刺された少年は人間らしい感情を微塵も見せなかった。そしてそれは、ある意味で彼を震え上がらせた。


だが、同情や人命を奪う恐怖に浸っている暇などなかった。


もう一方の手は躊躇なく、ミナトの心臓を狙い定めた。疑いなく貫こうとする。アイルランド神話の英雄クー・フーリンの呪われた武器のように。


ほんの数瞬のうちに、ミナトの燃えるような苦痛は素早く鋭い死で終わるはずだった。少なくとも、スオウ芳はそう考えていた。


現実は違った。ミナトは敵の手を熊の罠のようにがっちりと掴み、締め上げた。


心臓を引き裂き苦痛を終わらせるはずの攻撃は途中で止まり、スオがどんなに力を込めようとも、その手は微動だにしなかった。


「夢でも見てろ、この野郎。お前の手で死ぬものか」ミナトは嘲るように呟いた。


暗殺者の腕を引っ張りながら、みなとは呆然とするスオウ芳を引き寄せ、髪を掴んで鼻梁に頭を叩きつけた。必死に頭蓋骨を砕こうとするのだ。


みなとの頭は石のように何度も何度も殺し屋の顔面に激突し、その卑劣な顔をぐちゃぐちゃに潰すことを明らかに意図していた。


一瞬の衝撃の後、ミナトの突然の粘り強さにやや混乱しながらも、スオウ生は膝で学生の傷ついた脇腹を打ち付けた。何度も何度も、膝の下で傷口を押し潰すように。


まるで化膿した傷口に一キロの塩を注ぎ込むかのように、可能な限りの苦痛を与えようとするかのように。耐えきれず、ミナトは一瞬だけ握りを緩めた。その隙にスオウ生は自らを押し離し、透明化して姿を消した。


「何だ? もう勇気はなくなったか?」ミナトは嘲るように言った。だが実際は、そう楽観できる状況ではなかった。


二撃で仕留めようとした試みは惨めに失敗したものの、出血する脇腹を押さえ、アラナギい息を吐くミナトを大きく弱体化させることは成功していた。


表情は変えなかったが、明らかに痛みに苛まれている。だが、眠りに落ちる度に襲う恐怖に比べれば、この傷はほんのわずかな痛みでしかなかった。


しかし、影の中で折れた鼻を直しているスオウ芳にとって、彼が平然と立ち上がっている事実は驚きだった。彼の能力は最強クラスではなく、不意打ちと環境を頼りにしていた。しかし素早い決着を図った試みが失敗した以上、勝つためにはあらゆる手段を尽くさねばならない。


「なぜまだ立っている?肝臓には確実に、たとえ軽くでも一撃を食らわせた。普通なら動けなくなるはずだ。それでも彼は立っている。明らかに筋力の問題ではない」警戒するミナトを見つめながら、スオウ生は心の中で結論づけた。「おそらく高い痛みの耐性だろう」


「で?いつまで影で腰を据えてるつもりだ?お前との約束だけが俺の予定じゃない」


ミナトの挑発は明快だった。彼はもはやスオウ芳を致命的な脅威とは見なしていない。なぜなら彼は殺戮マシンではない。


ただの人間だ。殴れば痛みを感じる。十分に強く殴れば骨を折る。だから今の挑発は、むしろ踊りの誘いのようなものだった。


そして相手は、どうやら拒む様子もない。鋭い風と共に、血の酸っぱい香りがミナトの受容体に届いた。それで大まかにスオウ羽の位置を推測できた。


その匂いは部屋中に広がった。隅から隅へ、部屋の反対側の天井へ、そしてミナトから数メートル離れた床へと。


最初は傭兵が自分を惑わせようとしているのかと思ったが、もしスオウ芳が本当にプロなら、それはあまりにも無謀だ。


「認めるぜ、ガキ。お前のことを甘く見てた。調子に乗りすぎたな。結局、最初の攻撃で生き残った者はいない。これからは本気で行く」


「黙れ。口より手だ」


血の匂いのする方向へ斬りつけるが、ミナトは何も感じなかった。スオウ芳は再びかわし、唇から漏れるかすかな呻きだけがミナトの耳に届く。


しかし今度は、軽い刺すような感覚の後、手首に切り傷が現れ、血が噴き出した。別の方向へ斬りつけると、今度は肩を斬られた。


ミナトは混乱した。五感はすべて、血の匂いが最も新鮮な場所にスオウ芳がいると告げていた。それなのに、どこからともなく新たな傷だけが彼を襲った。


その動揺の隙を見逃さず、スオウ芳は再び攻撃を仕掛け、ミナトの体に新たな穴を開けた。今度は腎臓の近くだ。


必死に反撃しようとスオウ芳の腕を掴んだミナトだったが、背後から攻撃しようとした肘が斬り落とされた。まるで野球選手にボールを供給する機械に、何パックものカミソリの刃を詰め込まれたかのようだった。


スオウ生が二階を駆け回っていた理由は、誰にでも明らかだった。罠を仕掛けていたのだ。一つ一つが計算された位置に配置され、ミナトが一歩踏み出すたびに必ず傷を負うようになっていた。


それでも、痛みに耐えながらミナトは自らを奮い立たせ、スオウ生の喉を掴んだ。まるで重さなどないかのように持ち上げると、コンクリートの床に頭を叩きつけた。


敏捷性は劣っても、その靭性と爆発的な力は依然として彼の味方だった。


「がっ!」床との鋭い接触で殺し屋の肺から空気が抜けた。


倒れた敵を殴りつけようと拳を振りかざした瞬間、どこからともなく現れた刃が前腕を切り裂き、ミナトの静脈を寸前で断ち切った。


一瞬の隙が再びスオウ我にチャンスをもたらし、彼はそれを逃さずミナトの喉頭を狙った。


しかし鋭い一撃が喉に届く前に、ミナトは掌の縁でその刃をかわし、傭兵を横へ吹き飛ばした。


スオウ我は確かに頑強だが、このような消耗戦は遅かれ早かれ彼の消耗を招くだろう。どうやら敵はそれを狙っているらしい。


「安っぽい手口で勝てると思うか?俺を仕留めるには、もっと本気を出せ」


これは単なる威嚇ではない。ミナトは自らの身体の限界を熟知しており、必要なら何度でも傷を負う覚悟だった。ここで死ぬ権利など、彼にはなかったからだ。


地面に踏みしめた足が前へ飛び出し、投げ技で生じた距離を瞬時に埋めた。


地面に伏せたままのスオウ生は両手で体を支え、腰を浮かせて脚を振り上げた。狙いは傷ついた肝臓だ。


戦いを一刻も早く終わらせるという掟に導かれ、彼は敵の身体で最も脆弱な点のみを狙った。ゆえに攻撃は極めて予測可能だった。


そして初撃で必ず仕留める者は、遅かれ早かれこうした持久戦の習慣を失うものだ。


自らの掟によって、スオウタケシは知らず知らずのうちに自らを追い詰めていた。


地面に倒れた男の脚を掴み、ミナトはスオウ生の胴体を踏みつけ、コンクリートに押し付けながら骨を紙のように砕いた。


手際よく関節を破壊すると、白衣の男は苦痛の叫びを上げた。


ミナトは武の側頭部を蹴り上げ、頭蓋骨を砕いた。


痛みと脳震盪でスオウ芳はほぼ無力化したが、ミナトは止めるつもりなどなかった。


「一体何が起きてるんだか知らんが、一つだけ言える。お前、俺を怒らせてるぜ」


蹴りは、必死に守ろうとしたスオウ芳の砕けた肋骨に命中した。ゴリラのような打撃は骨と内臓を粉砕した。


わざと大きく足を振りかぶったみなとは、修和に回避を許す。相手の注意をフェイントに逸らし、真の一撃を仕掛けるためだ。


みなとが84キロの体重を乗せたその一撃は、修和の横隔膜を直撃した。酸素供給を遮断し、内臓を粉砕する衝撃は、全速力で突っ込んでくるダンプカーに轢かれたような感覚だった。


「戦う術も知らぬなら、這い出てきた岩の下へ戻れ」


顔面に直撃を叩き込んだ後、ミナトは床にしゃがみ込み、素早く足元を掃うように足を弧を描かせ、踝を真っ直ぐに狙った。


無防備となった今こそ、とどめを刺す時だ。


両手で床を押して体を持ち上げると、バランスを敵へと移し、文字通り体を投げつけるように、まるで体育の授業で子供たちが練習するような側転のように。


しかし今回は両足でスオウ芳の頭部を蹴り上げ、大きな音を立てて近くの樽へと叩きつけた。


最後の一撃で脳震盪に加え、頭蓋骨にひびが入った可能性は十分にあると確信していた。地面に倒れた男を仕留めるだけだ。そうすればアラナギを離れられる。


彼はスオウ芳へ突進した。たとえ永久に不具にしたり殺したりすることになっても、必ず仕留めてやるつもりだった。


数歩進んだところで、敵が相変わらず傲慢な笑みを浮かべていることに気づいた。慌てる必要などないというのか。


少し警戒はしたが、彼は一瞬も足を止めなかった。標的まであと三歩というところで、突然かすかなカチッという音がした。


それは命を奪う罠が仕掛けられたことを告げる音に他ならなかった。


「早く仕留めなきゃ。さもないとここで血を流して死ぬだけだ。こんなクソみたいな話、意味すらない」ミナトは自分の鈍さを心の中で呪った。


彼は再び刃が急所を襲うのを覚悟した。しかし現れたのは、四方八方から彼を包み込む糸の網だった。まるで蜘蛛の巣に落ちた虫のようだった。


デジャヴがミナトを襲った。つい一昨日、マコトとの戦いで鋭利な糸の網に絡め取られ、ミンチにされかけたばかりだったからだ。だが…


「冗談だろ? こんな状況にずっといるんだ」


飛び降りたミナトは、首から頭が吹き飛びそうになる無数の糸をかろうじてかわした。スオウ芳に近づいたままでは脱出できず、死を待つだけだ。


だから、自ら進んで数跳び後退せざるを得なかった。


「まったく、うんざりだ。頭おかしいんじゃないか、このバカ」


「戦いに手段を選ばぬ。勝つためならサンドバッグ役も厭わぬ。お前は自分の身を守れ」スオウ生は嘲笑を浮かべて言った。


「何だって?」


武の口から出た言葉を考えた途端、脚から力が抜け、気づかぬうちに膝をついていた。身体は綿のようにふにゃふにゃで、まるで麻痺したかのように、体が言うことを聞かない。


脚を見下ろすと、アキレス腱付近に二つのかすかな切り傷があった。皮膚は腐り始めたかのように黒ずんでおり、傷口からは強い化学薬品の臭いが漂っていた。


だが毒が襲ったのは足だけではない。刃が刻んだ他の切り傷を見渡すと、同じ嫌悪感を催す光景が広がっていた。


血管が不自然に浮き出て、皮膚は黒ずんでおり、傷口からは今も腐った肉と毒が混ざった臭いが発せられていた。


その悪臭は溺死体よりも酷く、ミナトは吐き気をこらえるのに必死だった。


「ちっ。まともじゃないな」スオウ芳がゆっくりと近づいてくるのを見ながら、ミナトは顔をしかめた。


「確かに、お前は悪くない。ただ感情が思考を曇らせているだけだ」 足を振りかぶったスオウ芳が顎を蹴り上げると、剥き出しの歯の間から血が噴き出した。


飛沫は破れ汚れたマントに落ちた。そこにはもはや真っ白な部分は一箇所も残っていない。


受けた傷一つ一つへの仕返しでもするように、スオウ芳は何度も何度も殴りつけた。怒りをミナトにぶつけるあまり、二人が二階の窓にどれほど近づいているかさえ気づいていなかった。しかし逃げ場などなかった。


非常階段はとっくに外れ、金属屑の山と共に下へ転がっていた。錆びた釘から鉄筋まで。


「これで終わりだな。お前がヒーローになることなど絶対にない」スオウ生は嘲るように血を吐き、まっすぐミナトの目に吹きかけた。


ミナトが反論したくても、気の利いた言葉を返したくても、それは叶わなかった。結局のところ、自業自得だった。


感情に流され集中力を失ったこと。明らかな傷に気づかなかったこと。


愚かさが自らの滅びを招く。だが死ぬなら、自らの意思で。残された力を振り絞り、綿のようにふにゃふにゃした脚に力を込め、窓に向かって後方へ跳んだ。

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