精液付与
慌ただしいクラン内部。
一人、掃除用具部屋に戻った俺は、掌に感覚を集中し、そこで揺らいでいるオーラを観察する。
『私は力を与えるだけ――――――』
もしこれが…… 女神から授かった【能力】だとしたら―――――?
サンの股間は、勃起していなかった。
【アイバラグ】によって、全身の血流が増加しているにも関わらず、だ。
詳しいことはまだ分からないが、どうやら俺の能力は対象から、オス的なホルモンを減少させる能力のようだ。
オーラの色は、黄色がかった白。これは、俺の精液の色に酷似している。
だとすれば、俺の能力には、俺に含まれる弱男要素が絡んでいるのだろう。
性交渉が、できない。
「まさか、サンが勃起しないとはな!」
「ちょっと、”陰キャ”っぽかったよねw」
「ミアちゃん、かわいそーw」
弱者男性の精液、そこに含まれる遺伝子の一部を付与する。
すなわち、【精液付与】―――――――
それが、俺の能力?
だとすれば一体、女神は何のためにこんな力を?
俺は、女神の、【審判の間】での最後の言葉を思い出す。
『貴方の望みは、貴方自身で叶えるのです――――』
俺の望み――――
ミアとのセックス。
ミアとセックスするには、俺が強者男性にならなくてはならない。
だが、蘇生後、迫害される立場に変わりはなかった。
俺の能力は、弱男属性の付与――――
その瞬間、俺は直感的に、自らの能力の意味を悟る。
俺以外の男を、俺未満の弱者男性にすれば、
相対的に俺が強者男性となり、ミアとセックスが出来る……!??
俺は、その場で立ち上がる。
いや……何も、ミアに限った話じゃない!!
屈強な女騎士!
ダウナー系の魔法使い!
天使のような女ヒーラー!
博識な女サモナー!
クランメンバー全員と!!!
セックスが!!!!
できる!!!!!!!
俺は、心の中でガッツポーズを握る。
弱者男性の俺が、ハーレムライフを、実現してやるぜ!!!!
精液付与 〜俺の本当の能力は、弱者男性の遺伝子だが、お前らが気付いてももう遅い〜
開幕