奇譚なき意見
「はは、何を驚いているんだい?」
俺の意見を聞いてくれるなんて。
そんなメンバー、過去に1人も居なかった。
「かく言う僕も、今のクランについては思う所あってね。――――そう、あまりにも『合理的』でないものが多すぎる。」
ご、合理的――――!
先ほど、まさに俺が考えていた事だ!
そう。俺にも、少しの罪悪感があった。
仮に、女神から授かったこの能力で全員を実質的に去勢できるとして。
その力は、俺個人が持つには、あまりにも強大すぎるのではないだろうか?と。
相対的に俺が強者男性になった所で、結局の所、俺は奴らほどのカリスマ性は無い。
このクランにしても、優秀なリーダー無しでは立ち行かないのが現状だろう。
裏ではグチグチ不平を垂らしつつも、この巨大なグループを纏めれる程の力量は、俺には無い。
結局、人間は、一人の力では何も成し遂げることはできないのだ。
それに―――どんなに残虐な連中であろうと。
奴らは結局の所、周囲に流されているだけの人間に過ぎない。
彼らが生まれながらに持つ、子孫を残す自由。
それを絶つなんて残酷な行為、俺に許されるのだろうか?
確かにサンは酷い奴だった。俺を殺しかけた。いや、現に殺された。
実際、能力付与をしてサンを陥れた時、俺は未だかつて感じたこともないような優越感に包まれていた。
だが―――それと同時に、自分の力に対する恐怖を、俺はうっすらと感じていたのだろう。
女神は、『未来は自分で切り拓け』と、俺にこの力を託した。
でも。
ウェイリスは、クランに変革を望んでいる。
俺は、そんなウェイリスに対してまで、酷い仕打ちをしようとは思えない。
ウェイリスのメインチーフ当選は、もはや決まりきったようなものだ。
そんな彼が、もし。俺の意見を聞いてくれるのであれば。
この状況が改善されるのであれば。
もし、『みんなと同じメンバーとして』。
対等に扱われるのであれば。
俺は、望みを託し、言葉に出す。
「あの……」
俺は、ゴクリと唾を飲む。
「……このチェックシート、廃止しませんか?無駄が多いし、効率も下がります。」
「……ハハハハハ!!!」
ウェイリスは、笑う。
そうだよな。こんな合理的じゃないシステムなんて、馬鹿げてるよな!
「もし、メンバーの身に危険が及ぶようなことがあれば、皆も困るでしょう。」
俺は、自分の気分が肯定された高揚感で、続けて言葉を紡いでいく。
俺の意見が、認められている!
「あなたが本当にメンバーの事を思っているのなら、チェックリストを今すぐ廃止してください!」
「はは!はははは!」
ウェイリスは、ひとしきり笑った後、口を開く。
「やはり君は、想像以上の馬鹿のようだな。」




