ウェイリス
「やあ。」
いつの間にか、背後に立たれていた。
まずい。俺は彼のことをよく知らない。
ここは、強く刺激しないよう、下手に下手に……。
「ウェイリスさん……。全く気付きませんでしたヘヘッ。」
「はは。すまない。先ほど『デス・クラーケン』の討伐から帰ってきた所でね。闇に慣れるため、ロビーで瞑想をしていたんだよ。」
「さ、流石ですね。」
俺は、慣れない言葉のキャッチボールを、歯切れの悪い言葉で返す。
ウェイリス。
討伐隊、サブチーフのもう一人。
クラン【陽キャラバン】の討伐隊には、2つのグループが存在する。
サンは『豹』グループ、ウェイリスは『鷹』グループのサブチーフである。
豹グループは、一言で言えば『量』だ。
毎朝、早い時刻にクランを出て、民間のジョブで依頼されている害獣を大量に討伐し、単価よりも総額でゴールドを稼ぐ。
対して、 ウェイリス率いる鷹グループは『質』。
国より指定された特別指定害獣を討伐することで、ゴールドを稼いでいる。
ここで、『一般害獣』は、種族全体に適応されるのに対し、『特別指定害獣』は、その中でも特異な性質を持った1個体を指す。その分、討伐難度は高く、より長い期間を要する傾向にある。代わりに、一匹あたりの報酬は大きい。
彼らは、近日行われる、討伐隊のトップチーフ決めに参加している。
判断点は一つ。『どちらが、より、クランに貢献しているか。』
だが、先の『サン非勃起事件』の後では、どちらが勝利するかはもはや明白だろう。
ウェイリスは、懐に手を入れ、ゆっくりと何かを取り出す。
武具か?また殺される!?
……コトリ。
「君も大変だね。エルフ族の滋養強壮ドリンク、ここに置いておくよ。」
「え……ありがとうございます!」
まさかの、気遣い。
クランカースト最下位の、こんな俺なのに。
他のメンバーと同じように扱ってくれるなんて。
「まさか、こんな朝早くから活動していたなんて、君はなんとも勤勉だね。」
「は……はい……!」
佇むウェイリス。
討伐後だと言うのに、ウェイリスの一張羅には、シワ一つ付いていない。
そういえば、彼らのメンバーからは、あまり虐められた記憶がないな。
それは、彼らが普段から遠征に出ていて、会う機会が少ないからかもしれないが……
だが、なんというか、『鷹』グループには、サンのグループには無い―――そう、『気品』のようなものを感じられるのだ。
俺がそうこう考えていると、ウェイリスは正面の椅子に座り、俺の顔をまじまじと見つめる。
「え……あの……」
「さて、メインチーフ決めの時期も近い。そこで是非、君からの意見も聞きたくてね。」
「え……えぇっ!?」
俺の……意見を……!?




