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【ホラー 怪異】

くれくれ君

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/03/08

 

 その怪異は自殺しようとしているところに現れる。

 そして、にっこりと笑って尋ねてくるのだ。

「その命、いらないのですか?」

 自殺を間際に問われた言葉。

 大抵の者が興味も持たずに頷いてしまう。

「あぁ、やっぱり! なら、もしよろしければ私に譲っていただけないでしょうか?」

 すると大抵の者が問い返す。

「何に使うんですか」

「いえ、別に。ただ集めているんです。命というやつを」

 要領の得ない言葉。

 しかし、もう命を捨てる直前なのだ。

 だから、特に気にもせずに言ってしまうのだ。

「好きにしてください」

「あぁ、ありがとうございます!」

 そう言って、怪異は大層喜び命を奪う。

 奪った命をどうするのかは分からない。

 そして、怪談話であるが故にこの先は語られることはない。


 だからこそ。

「その命、いらないのですか?」

 屋上に立ち、飛び降りようとしている私の前にそれが現れた時、小さな動揺が起きた。

「く……くれくれ君?」

 私の問いかけに怪異は微笑んだ。

「ははは……実に恥ずかしいですが、そう呼ばれております」

 怪異は丈が全く合っていないスーツを着た小男だった。

「しかし、私の名を知っているならば話は早い。その命、譲っていただけないでしょうか?」

 私は思わず唾を飲みこんでいた。

「なっ、何に使うんですか?」

「ははは。ご存知でしょう? ただ集めているだけです。コレクターという奴でしょうか?」

 身体が震えていた。

 恐怖を感じていた。

 それはきっと、生きていたいという実感なのだろうと私は思った。

「すみません。あげたくありません」

 そう言って私は。

「じゃあ、早く死ねよ」

 突き飛ばされた。

 落ちていく。

 自分が。


 死にたくない。

 死にたくない!

 死にたくない!!


 死にた


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