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2人目

彼とは趣味で始めた自転車をきっかけに出会った。

1人目と別れる少し前からSNSてやり取りをしていて、高校1年生の10月、初めて会うことになった。


SNSで知り合った人と会うのは危ない、と思っていたので、近所にあるファミレスで待ち合わせをした。

9個上の彼は社会人だった。彼は仕事が終わってから車で向かうと言っていた。

何かあっても助けて貰えるように、友人には事前に人と会うことを伝えており、ピンチの時にはLINEすると打ち合わせをしておいた。待ち合わせ場所には自転車で向かった。車に乗る口実を作らせないためだ。

ワクワクする気持ちと緊張する気持ちが混じりあってなんだか食欲が湧かなかった。


少し遅れてきた彼は想像していたより小柄でずんぐりとしていた。はじめまして、と簡単に挨拶をして店内に入る。

緊張して何を話そうか迷っていた私と反対に、彼はのんびりとした口調で「何食べたい?」とメニューを手渡してくる。

悪い人では無さそうだな、とぼんやり思った。

少しずつ話題を提供してくれる彼に安心して、身体がようやく空腹を思い出す。


自転車やアニメ、声優が好きなようで、所謂ザ・オタクといった趣味だった。私もある程度は姉たちの影響でついていける内容だったので助かった。

微笑みながら相槌を打ち、時々質問をする。気持ちよさそうに答えてまた話を広げている所を見ると、相手を知ることより自分を知ってもらうことの方が好きみたいだ。

大体の人間はそうだろうと思っているが、彼の場合は随分と顕著に現れていた。

昔はバレー部に入っていてね、車はローンじゃなくて一括で買ったんだ、あの芸能人に似てるって言われるんだよね。

否定せず、時折タメ口で会話を続けていく。

礼儀正しすぎるよりは拙い敬語を使う方が好きなのか。9個も離れている相手と会っている時点で成熟した女性よりはあどけなさの残る女の方が好きなことは分かるが、さすがに仲良くなりすぎても良くない。

連絡は帰ってこないけれど私には彼氏がいる。

「そういえば彼氏とかはいるの?」

思い出したように彼が聞く。

「あ、一応。学校は違うんですけどね」

「青春だねえ。仲良いの?」

「頻繁に会えるわけじゃないんですけど、中学の時から付き合ってて。」

照れているように返事をする。あまり残念そうにしていないのを見ると、恋人はいると思って誘っていたのだろう。最初から期待されていても気持ち悪いだけだからその方が好都合でありがたい。



そろそろ帰ります、と伝えると彼は少し驚いた顔をした後に時計を見た。納得したようなしていないような表情で、「じゃあ1回お店出ようか」と言った。

1回も何も無いから帰らせてくれとは口に出さなかった。悪い人では無かったし、早く帰りたいとはいえ不快にさせるのは嫌だった。


レジで会計をしている彼の後ろから顔をのぞかせ、「私も出します。いっぱい食べちゃったし」と少し恥ずかしそうにしながら俯いた。多分こういうのが好きだろう。

「さすがにいいよ。ここは出させて。次会ったらその時はお願いしようかな?」

爽やかなつもりの笑顔でそういう彼にお礼を伝えて空の財布をしまう。財布を出されて嫌そうにしなかったあたり、判断は間違っていなかったみたいだ。



ご馳走様でした、と店を出て改めて言った。頬を緩めながらいえいえ、と返事が返ってくる。

帰ろうとするとあの、と引き止められた。はい?と微笑みながら振り返る。

「もう少し話したくてさ、良かったら車の中で話さない?外少し寒いでしょ」

来た。本当にあるんだこういうの。

こういうの言われたらやばいよね、と事前に友人と話していたセリフがそのまま来たのだから笑ってしまった。

「話すならここでいいですよ。着込んできたからそんなに寒くないですし」

表情が一瞬固まっていたがすぐ元通りになる。

その後は少し話を続けては、やっぱり車に乗らないか、別の所で話そうか、車で送っていこうか、と繰り返した。

段々面倒になり、返事もおざなりになってくる。焦ったのか「車で送っていくよ」「自転車は後日取りに来れば?」と相手もグイグイと踏み込んでくる。

「すみません、もう本当に帰らないと。門限厳しいんです。自転車も明日通学に使うのでこれで帰ります。」

「……そっか。じゃあ、また、DM送るのもあれだし、連絡先交換する?」

これで帰れるならまあいいか。

「もちろんです!……これで交換できてるかな、スタンプ送っておきますね」

「あ、きたきた。これで大丈夫だね」

「じゃあ、今日は本当にありがとうございました。楽しかったです」

笑顔で残してその場を去った。

自転車で帰っていく女子高生のを眺めている成人男性は周囲から見たら中々シュールな光景だっただろう。

帰る途中に携帯がポケットで震えたが無視してそのまま帰りを急いだ。



家に帰って携帯の通知を確認すると1件の通知。

「今日はありがとう(*^^*)次いつ会えるかな?」

さっきの彼からの連絡だった。

友人に無事を報告してから風呂に入る。

ようやく返信する気が起きてから

「今帰宅しました〜ありがとうございました!

テストとかでちょっと予定詰まるんでまた連絡しますね!」と携帯に打ち込む。こんなものでいいだろう。


ベッドに入ってから今日のことを振り返る。

かっこよくは無いがまあ悪くない人柄だったな。

ちょっと危ない気もするけど、彼氏がいると伝えているしまあ大丈夫だろう。明日学校でどう話そうかな。

彼氏との最後のLINEを見ながら眠りにつく。最後にLINEをしたのはもう3週間前だった。

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