転生者が多すぎる!?
ギャグです。悪役令嬢です。好きな感じを詰め込んでみました。ゆるふわ設定ですみません。
私、アウロラ・ハーゼル侯爵令嬢には前世、日本人だった記憶がある。
前世、私がアラサーになる頃には両親の仲は非常に悪く、罵倒し合うなんて日常茶飯事。酷い日にはコップや皿を投げる。仕事から疲れて帰ってきて、それを片付ける身にもなって欲しい。
そんな両親を見ていたからか、私は溺愛物の小説が大好きだった。一途な想い、万歳。相手を思いやる心、それはプライスレスなのだ。小説の中では。
そんな私の死因はおそらく、ながらスマホ。あの時更新チェックなんてしていたから、階段から落ちて…そのまま、きっと死んだのだろう。
両親が泣いたかは知らない。知る由もないし。他に誰か泣いてくれたんだろうか?心に引っかかるけれど、今はもうそれどころではない。
それで、アウロラ・ハーゼルなのだが、おそらく、悪役令嬢だろうと思う。だって金の巻き髪。抜群のスタイル。ちょっと吊り目。もう悪役令嬢の三拍子が揃っている上に、婚約者が第二王子であるユーステス・ドミニオン殿下。四つも揃っちゃった。更に更に、皆には秘密にしているけど、闇属性らしいんだ、私。五つも揃ってしまっている…だと!もう悪役令嬢でしょ、断罪でしょ、追放なんでしょ!?
闇属性じゃ修道院にも嫌厭される。詰んだ!人生が既に詰んでいる!!
かと思いきや…ちょっとおかしい所もあるのよね。
「アウロラ!会いたかった!」
第二王子が、私に、デレなのだ。
「殿下、苦しゅうございます」
ぎゅうぎゅうに抱き締めてくる。ちょっと待って、まだ未婚なの。各方面からお叱りを受けてしまうの。
「ごめんね、そうだよね、もっとそっと抱き締めないとアウロラが痛いよね。次から気をつけるよ」
違う、そうじゃない。だけど仔犬の様な顔で詫びられると弱いんだ。私は前世から犬派なんだわ。犬と言えば、隣の家の幼馴染が飼ってた渋谷太郎くん、可愛かったなぁ。子供の頃からいっぱい遊んだんだよ。そう言えば飼い主、子供の頃ちょっと尖ってたけど、落ち着いたんだったけ?思い出せないわ…。
「ねぇアウロラ、僕の気の所為であって欲しいんだけど、変な事考えてない?他の男とか」
「まさか、嫌です、無いです、ふふふ…」
断罪、追放怖い。無理。私平穏に生きていきたい。王子妃教育は将来貴族のままなら役に立つだろうけど、追放されたら無意味じゃない?いや、ちゃんとやるけど。血税で成り立つ義務放棄は良くない事。そのくらいわきまえてます、元アラサーですから。
「それに殿下じゃないでしょ?名前で呼んで欲しい…」
くっ、可愛い…あざとい…わざとだな?あざと系王子なのね?ますます怪しい。ヒロインが現れたらコロッと態度変えちゃったりするんじゃないだろうか。と言うか、既に情報は他のご令嬢から来ている。私は疑心暗鬼なのである。
「ユーステス様…あの、最近、ユーステス様の周りに変わった女子生徒が」
「あぁあの男爵令嬢ね、僕はあんまり、好きじゃないんだ」
「え?」
「僕にはアウロラが居るのに邪魔しようなんて万死に値すると思うんだよね」
「死……」
「あ!ごめんね?怖かった?大丈夫だよ、僕、アウロラには人畜無害で居たいと思って努力しているからね!」
「そ、そうですの、ありがとうございます?」
努力しているって事は未だ完成形には至って居ないと言うこと…?駄目よアウロラ。今、私気が付いてはいけない事に触れた気がする!
「だから安心して!アウロラに害のある奴はとりあえず駆除…ううん、ご退場願うからね」
頼りにして良いのか判断に困るわ!!
「ようやく会えたわねアウロラ!」
私は貴女の運命の相手か。顔はめっちゃ怖いけど。可愛い顔台無しだけど。
「転生者?」
「YES、そっちも?」
「遺憾ながらYESよ」
舌打ちするんじゃありませんよ。淑女でしょう。
「もうズバッと聞くけど誰狙いなの?逆ハーなの?」
「そんな恐ろしい事するわけないじゃない!逆ハーはザマァまっしぐらでしょ…大体」
「現実だと理解したパターンのヒロインで良かったわ。で、誰狙いなの?」
彼女はちょっと照れた様にはにかんだ。あら、なんだ、可愛いじゃない。少し応援してあげなくも…。
「腹黒ユーステスさま!」
「ごめんなさい!!」
やっぱり腹黒だったのね、恐ろしい。あの子犬みたいな顔は演技なのね。何だろう、裏切られた感が半端じゃない。
「ユーステスさまを私に下さい!」
「はいどうぞと娘のようにやれる訳ないでしょ!馬鹿なの!?」
はっ!しまった、ヒロインさまを罵ってしまったわ。これから転がる様に断罪、追放が待ち構えて…。
「アウロラ…」
断罪、追放がワンセットで私を手招きしている!!
「ユーステスさま!アウロラさまが私の事悪く言ったのには理由があるんです!責めないであげて下さい!」
「はぁ?」
怖い、王子の口から出るチンピラみたいなはぁ?が怖すぎる。
「責める訳ないじゃない。アウロラが僕をあげられないって言ったんだよ?僕は今もう凄く気分が良い。君の事はウザいし割と本当に害虫だと思ってるけど今この時だけは感謝するよ」
ヒロインを害虫呼ばわりしたよ。これが腹黒?違わよね?純粋な罵りよね?推しにそんな事言われたら立ち直れないんじゃ…。
「ありがとうございます!」
まぁ、見事なカーテシー。なかなかやるじゃない(現実逃避)
「アウロラ!」
「なんでございましょう」
巻き込まないで欲しい。その特殊性癖の中に私を加えないで欲しい。なんか酔いそう。
「僕の事、好き…?」
「………えぇと、あの、その案件一度持ち帰って熟考させていただいてもよろしいですか?」
「駄目。アウロラは冷静になると直ぐ悪い方に考えるから。今聞かせて。僕の事、ちょっとでも、好き?」
ぐ、ぐぅぅ…。
「わりと、好き、ですけども」
「わりと!?そんなに!?」
「え、えぇ、わりと、そんなに…」
「じゃあ僕ら恋愛しているよね!?」
「う、うーん、そうなります、かね?」
「じゃあ僕とアウロラは恋愛結婚だよね!?」
今まさにエンディングみたいな流れになってますが、ヒロインさまの視線が痛い。視線で人を殺せるなら私今死んでるわ。
「推しの幸せは、自分の幸せ、か…そんな訳あるかー!私も好きなんじゃー!!」
「君には一ミリの興味も無い」
「冷たくされてときめく私にどうしたら良い!?どうしたら諦めがつく!?」
「新しい恋でもすれば」
「そんな投げやりな…」
「推しからの天啓だと思って、泣く泣く、新しい恋を探します…」
「ご、ごめんなさいね?協力は惜しまな…」
「駄目だよアウロラ。君は僕に忙しいんだから」
ちょっと凄む様に鋭く見つめられて不覚にもちょっとときめいた。私の馬鹿!もう性癖が歪められてるじゃない!!
「なるべく早く結婚しようねアウロラ。あぁ早く君をこの腕に抱いて目覚める朝を迎えたい…」
「全年齢!!」
「大丈夫よアウロラさま!この世界観R-15括りだから多少は目を瞑ってもらえるわ!」
「余計な知識!!え、嘘でしょうユーステスさま、んっ、ちょっと待ってくださ、んんっ!」
感極まっているユーステスさまのキスの嵐は、その後尾ひれをつけて校内を、城を駆け回る事となり、私は随分早く、ユーステスさまの腕の中で朝を迎える事となるのだった。
「おはよう僕の花嫁さん」
「……昨夜は随分意地悪でしたこと、忘れておりませんからね」
「ん〜?やだなぁアウロラ、もっと?」
「ちが、違います!や、遅刻してしまいま…」
「蜜月の二人がそんな簡単に離れる訳ないじゃない。ねぇアウロラ」
「ひゃい…?」
「可愛い。ね、断罪も、追放も無かっただろう?この金の巻き髪も、この豊かな胸も、全部、ぜーんぶ、僕のもの、だものね?」
まさか。
まさか、まさかまさかまさかまさか…!?
「てん…」
「しぃー。ほら、集中して?」
そう言ったユーステスさまの目は完全に捕食者のそれだった。
「わたくし、れんあいけっこんがしたいんですの」
だからぼくとはけっこんできないという。
「だいすきなひととけっこんして、なかよくいっしょういっしょにいたいんですわ」
そう、なきそうなかおでわらったきみがまぶしくて。ぼくはおもいだした。
可哀想な俺の幼馴染を。現実主義な癖に、妙に夢見がちで。画面の向こうの恋に浸っては、隣の俺に気付かない彼女を。
その上、俺を置いてさっさと逝ってしまった、大事な大事なお前を。
「じゃあぼくはずっときみだけすきでいるよアウロラ。きみがぼくをすきになったら『れんあいけっこん』しよう」
ゆびきりげんまん。うそついたら、らいせでもにがさない。
読んで下さってありがとうございます。
10/6感想ありがとうございます、少し直してみました。
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