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第一話④

「それより、話の続きね。僕らはとりあえず、命からがらこの王都にやってきたわけ。」

「…ええ。」

「で、国王陛下に恥を忍んで謁見して、君の命を、」

「まって、国王陛下?」

「そうだけど。」


 声にならない声をあげながら頭を抱えた。なんなんだ、彼らは寿命を縮めるためのRTAでもやっているのか?

本来であれば、聖別後数ヶ月は村周辺の街を転々として、その流れで陛下に見つかり、ユーゴを人質にして回復魔法の乱用へ繋がるはずであった。盛大に、盛大にズレている!やはり私が生き残ってしまったせいで、歴史が滅茶苦茶になってしまっている!ずっと勇者と兄様の仲を取り持てば大丈夫だと思っていたが、そうも言っていられないらしい。ぐるぐると回る最悪な想像を振り払うようにかぶりを振った。


「続き、話して平気?」

「ええ、大丈夫よ。」

「よかった。…とにかく、国王陛下にお話をして、君の身体をなんとか蘇生したんだ。すごかったよ。国中のありとあらゆる偉い治癒術師様たちが、一斉に部屋に集まって君を治すの。君にも見せてあげたかったなあ。」

「見たくないわよそんな光景。」

「変なの。…でも兄さんも僕も必死だったからさ、治癒術師様のお手伝いとして駆け回ってたら、その将来性を買われてね。助手としてお仕事をもらえることになったんだ。」

「じょしゅ。」

「そう。でもまずは勉学でしょ。賢者の末裔たるもの、知識がなきゃいけないってことで、兄さんと王立の魔法学校に転入したんだよ。」

「まほうがっこう。」

「二人で成績荒らすの、楽しかったなあ!僕らそのへんの貴族の坊ちゃんたちよりずっと成績が良くてね、もうびっくりするくらい周囲が荒れちゃうし、パトロンもできたんだ。」

「ぱとろん。」

「国王陛下からたまにくる治癒術師のお仕事をこなしながら、そこを最速卒業して、二人でこの小さな診療所を作ったのが最近の話。もっと詳しく聞きたいことある?」

「…いや…。」


 思っていたよりずっとずっと良い生活で驚いてしまった。どういうこと。ゲームの世界では、まるでボロ雑巾のように扱われていたというのに?なにがトリガーになっているかはわからないけれど、もしかして事態は好転しているのか。


「そう?いい感じに診療所が回るようになってから、勇者の末裔が魔法使いの末裔を連れて旅に出たって話が王都に入ってきてね。」

「…そう、なの。」

「当然、僕と兄さんのどちらかも同伴するように言われたんだ。君が目覚めたときにいるべきなのは、きっと兄さんだと思ったから、僕が行く予定だったんだけど.」

「…リュカ兄様が、先に出て行った。」

「そう!ひっどいよねえ。僕、冒険に出るの、すごく楽しみにしていたっていうのにさ。」


 本来、ゲームのリュカ兄様は国王に二者択一の選択を迫られて冒険の旅へと身を投げる。【身体の弱いユーゴを旅に送り出し、自分は国のために知恵を利用される。】【自身が旅に出て、ユーゴは残って最高の医療を受ける。】リュカ兄様にとって、ユーゴは宝物だった。話を聞いてその場で準備を済ませ、ユーゴには軽口をたたいて旅へ出るのだ。彼の身体を選んで、自分は危険へと飛び込んだ。

 だが、話を聞いていると今回はそんな脅しをかけられるような暇はなかったように思う。もしかすると、聞くことができていない部分でなにかあったのかもしれないが。


「最初に話題に上がったのはユーゴ、貴方だったんでしょう。」

「いや?国王陛下に【どちらが行くか決めておきなさい】って言われて、翌朝には黙って出て行っちゃったみたい。」


 「立候補したのになあ」なんて唇を尖らせる。原作と話が違っていて、混乱してしまっていた。自分の意思で、望んで出ていった?本当に?原作の、彼の行動を反芻して首をかしげる。わからないことだらけだ。






だって、わたしは、今の彼について、何も知らない。


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