報告会
「茅と仲良しみたいじゃん?」
「えええ、そうかなあ」
雅美ほどじゃないよ、と言いかけて、奈緒は口を閉じた。
もぐもぐと、買ってきたドーナツを食べながら雅美が言った。
奈緒は紅茶を淹れて雅美の前に置いた。
「あ、でもね!」
「うん」
「わたしのこと」
「うん」
「八島くんの友達にね」
「うんうん」
雅美はキラキラと目を輝かせて奈緒のことを見ている。
「あの、友達って、紹介してくれたの」
少し照れながら、奈緒はそう話した。
それを聞いていた雅美は、しばらく目を見開いて、
「ぶっ」
噴き出した。
「あっはっはっはっ!!!」
盛大に笑い始めて、今度は奈緒がきょとんとする番だ。
「友達!友達ね!!!」
尚も笑い続ける雅美に、奈緒は首を傾げる。
「それでそれで?奈緒は何か言ったの?」
「えっと、男友達できたの初めて、って…」
「茅は?」
「わたしとこんな仲良くなれると思わなかったから、嬉しいって」
「ぷーくくく…あーお腹痛い」
「雅美…」
お腹を抱える雅美に、奈緒は笑われる覚えがなくて困った。
「わたし、なんか変なこと言っちゃった…?」
「いやいや、いいよ。奈緒はそのままでオッケー」
雅美は涙を拭いながら、奈緒の頭をポンポン撫でた。
「奈緒に初めての男友達ができたわけだ」
「う、うん」
「よしよし、いい傾向だね」
「な、何が…?」
わかるように説明してほしい。
奈緒は紅茶を一口飲む。
「奈緒はそのまんまでいいよ。今まで通り茅と仲良くしてあげて」
「う、うん…?」
釈然としないままだが、その話題はおしまいのようだった。
「そうそう、来月隼人が遊びにくるって」
「隼人くんが?」
「うちの大学受験するかもって。」
隼人は、2つ下の雅美の弟だ。今は高校3年生。志望校をそろそろ決める時期だろう。
兄弟同然で育った奈緒も仲が良い。
「そっかぁ、夏休み帰ったときには会ったけど、楽しみだなぁ」
会うたびに大人っぽくなる、小さかった男の子を思い出しながら、奈緒は紅茶を飲み干した。