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男嫌い

「最近茅と仲良いじゃん?男の子苦手ーなんて言ってたのに」


茅がいなくなったところで、雅美はニヤニヤして奈緒を小突く。

雅美は幼稚園から一緒の、言わば幼馴染だ。

奈緒とは真逆で、雅美はキツめな美人という外見の通り、しっかり者で物言いもハッキリ。気取ったところがなくて男女問わず友達も多い。


奈緒は背が小さくて、目は大きくて鼻が低く、白やパステルカラーの柔らかい雰囲気の服しか似合わない。せめて大人っぽく見えるようにと、髪はショートボブにしているが、雅美のように大人っぽくはならない。

それどころか、内気なことも手伝って、年相応に見られた試しがない。


奈緒はそんな雅美に奈緒は面倒を見てもらいっぱなしで、遠くの大学に行って一人暮らしをすることに反対していた両親も雅美と一緒だと言えば雅美の近くに住むことを条件にあっさりと許可されたくらいだ。

クラスが離れることもあったが何だかんだとずっと仲良くしてくれているのでそれなりに居心地のよさを感じてくれているのかもしれない。


「雅美の方が仲良いと思うよ…」


今日だってきっと、茅は雅美と話したいから声をかけてきたんだろう。

よく声をかけてくるところを見ると、茅は雅美のことを好きなのかもなと思っている。

ついでに奈緒にも挨拶してくれるのは優しさか。


「サークル一緒だからね。でも一番話すってわけじゃないし」


雅美はクラスの男の子たちの名前も呼び捨てにできるほど仲良くなるのが上手いのを思い出して、少し凹んだ。


「隣の席の男子にも挨拶すらできなかった男嫌いの奈緒がまともに会話できる日が来ようとは」


“男嫌い”と雅美は言うが、奈緒は男が嫌いというよりは苦手なだけだと思っている。

初対面の人と話すのさえ苦手な上に、背の小さい奈緒からすると男の人は大抵大きくて、筋肉質な人なんてクマのように見えたりして、話す前から恐怖心が芽生えてしまってどう接していいかわからなくなるのだ。


「茅は奈緒の苦手なタイプではないよね。ぱっと見そんなに男らしい男じゃないし」

「雅美…それはちょっと失礼なんじゃ…」


奈緒はそう言いつつも思わず教室で談笑している茅の方に視線を向ける。

もちろん奈緒よりは大きいが、雅美と背丈はそんなに変わらないかもしれない。談笑している他の男の子たちと比べると小さくて、細身に見える。

少し明るくてふんわりと柔らかそうな髪や、顔立ちも笑ったところも怖いとは思わなかった。


「うん、結構失礼だったわ。茅いい奴だしね。ちょーっと口悪いけど」

「えっそうなの」

「わりと。外見で怖いと思わなければ、口の悪い女友達と喋るつもりで話せばいいわけだし」

「そ、そっか…」

「男嫌い治って、彼氏とかできたら嬉しいなぁ。一番に見せなさいよ!見定めるから!」

「は、はぁ…」


想像もできない遠い未来の話をされて、奈緒は曖昧に笑った。

雅美のように男友達とも気軽に笑い合えるくらいにならないと、彼氏なんてとてもできっこない。


まだ何か言っている雅美に気付かれないように、奈緒はこっそりため息をついた。


簡単に言わないでよ。



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