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第六章[写真の中の彼女]

『はーい。』

「あ、俺、ただいま。」

『あー、お帰り!今開けるね。」

インターフォン越しでも母の声を聞くと、帰ってきたなぁと実感する。

前に帰ってきた時はまだ暑かったなーなんて思いながらドアが開くのを待った。

「おかえりー。寒かったでしょ?みかんあるから、手洗いうがいしたらこたつにおいで。」

「うん、ありがと。」

もうすぐ二十歳だと言うのに母の口癖は相変わらずだ。

そして俺もまた、手洗いうがいをしながら小学生にでも戻ったような気分を感じていた。



「改めておかえり。ゆっくりしてね。」

母が嬉しそうに向かい合って座る。

つい夢を思い出して、老けたなーなんて思ってしまったのは内緒だ。

「どうしたの?なんかニヤニヤして。」

「いや、なんかちっちゃい頃のこと思い出してさ。」

“内緒”が顔に出ていたようで、俺は慌てて誤魔化す。

「そういえば電話で言ってたわね。幼稚園の頃がどうたらって。懐かしいなー。」

母も楽しそうに笑う。

「あんなにちっちゃかった郁人がもう二十歳だもんね。来月は成人式か…お母さんも老けるはずだわ。」

小さく息を吐く母を見て、俺はまた少し焦る。

「そ、そういえばさ、父さんと母さんの写真ないの?成人式の!」

「えー?私たちの?見てどうするのよ。」

「いや、別にあれだけど、俺も来月だしなんとなく興味っていうかさ。」

「そう?じゃ、探してみるわ。」

「ありがと。」

立ち上がる母を見て思う。

「やっぱり、“ママ“じゃないもんな…。」


母はほんの10分ほどでアルバムを持って戻ってきた。

さっきと同じように向かい側に座り、ページをめくる。

「あ、あった。ほら、この辺り…。」

差し出されたページには夢の中よりも少し若い母と父が写っている。

「へー、若い。」

「当たり前でしょ、今の郁人と同じくらいよ。」

「あ、そっか。」

笑いながら2人で写真を眺める。

両親は幼馴染みだったらしく、友達とはもちろん、お互いの両親や親戚っぽい人たちとの写真もたくさんある。

「わー、おじいちゃんとおばあちゃんも若いわねー!」

久しぶりに開くアルバムに母の声も弾む。

俺も楽しくなって写真を眺めていたが、あるページをめくった途端、そんな感情が一気に吹き飛んでしまった。

「え…?この人って…。」

「何?どの人?」

母が急に笑顔の消えた俺を見て写真を覗き込む。

「この女の子…。」

「あー、これね。母さんのいとこ。雪ちゃん。」

視線の先では夢の中の彼女が笑っていた。

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