完全犯罪計画
推理小説マニアの男が、完全犯罪を思いついた。それは何の落ち度もない、完璧なトリックであった。
男はとても素晴らしいモノを手にした気分になり、試してみたいという衝動に駆られた。しかし男にはそんな度胸などなかった。そこで代わりに試してくれる人を探した。
ネットで調べたり、怪しげな店に出向いたりした。数か月が過ぎた頃、ついに代わりに試してくれると言う青年とコンタクトを取る事に成功した。青年は虫も殺せなさそうな優男に見えるが、感情の一部が欠如しているようで、他人に対して愛情や思いやりが持てないといった、いわゆるサイコパスであった。
男はその青年と会い、自分の考え出した完全犯罪を熱心に説明した。彼はいたく感動していたのだが、突然難しい顔を浮かべた。
「どうかしましたか?」
「素晴らしいと思うんですが、ただ、今のままでは完全犯罪は成立しない事に気が付きまして」
「え、そんなはずは…完璧だと思うんですが…」
青年は腕を組みもう一度熟考したのちにこう言った。
「大した問題ではないようです。後はこちらで何とか出来ます」
「そうですか。良かった。では、いつ実行に移してもらえますか?」
「今晩にでも」
自宅へと帰った男は、目をぎらつかせ、気持ちが高揚していた。明日の早朝のニュースで自分が発明した完全犯罪を使った殺人事件が報じられる。胸が躍るようだった。きっと世間は騒ぐだろう。今夜は眠れそうにない。
その日の夜。男は自分が発明した完全犯罪によって殺された。青年は男を殺す前にこういった。
「他にトリックを知る者がいれば、警察にリークされたら終わりです。でもこれで、あなたが考えた完全犯罪は完成しました。おめでとうございます」
終