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6話 勇者達3

 相川唯(あいかわ ゆい)、17歳。

 日本なら女子高生をしている年齢だ。

 彼女の仲間達曰く、相川唯の趣味はゲームらしい。


 趣味というだけあり、相川唯のゲーム無双が続く。


 まず最初は『インベー○ーゲーム』。

 一度も敵のタマを受けずクリアしてしまう。


 次は格闘ゲーム。

『スト○ートファ○ター2』はリ○ウで、『ギ○ティー・ギ○X』はチ○プ=○ナフでクリアする。


『プリントシールで遊ぼう(プリシル)』は一度撮影すればクリアだ。


『掴みキャッチー』はヌイグルミ10個を獲得。


『ダンス・ダンス・ダンス・ダンス(D4)』、『太鼓で遊べ!』も最高レベルを一度も間違えず踊りきり、達成する。

 この時、見学していたBクラス冒険者達が一番盛り上がった。


 唯って子が、いかにも『魔法使い』というローブ姿で、ダンスを踊る姿はかなり見応えがあった。

 お金を支払うぐらいの価値があるほどだ。


 異世界チートハーレム境遇に居る黒髪少年が、改めて向き直る。


「ウッド魔王さん、これでゲームは全てクリアしました。ダンジョンコアに案内してください」

「それはできませんね」


 オレの返答に勇者達だけではなく、Bクラス冒険者もピリピリとした空気――恐らく殺気を放つ。

 彼らの目の前に居るのは身代わりのウッドマンなので、殺気を放たれても怖くはあるが、恐怖までにはいかない。


 パーティーメンバー以外にも、各地で美少女を攻略してそうな勇者少年が睨んだ瞳のまま問いかけてくる。


「……やはり魔王ということですか。ゲームを全てクリアしたらダンジョンコアまで案内するというのは嘘だったんですね?」

「嘘なんてついてませんよ。ちゃんと全てのゲームをクリアしたら、ダンジョンコアへ案内します。『ドリーム・ダンジョン』魔王のプライドにかけて。ただ皆様はまだ全てのゲームをクリアしていないので、案内できないというだけです」


 オレは背後を振り返り、奥にある階段を指さす。


「あちらの地下2階に新しいゲームコーナーを作ったんです。そちらのゲームもクリアしたらダンジョンコアへと案内しますので」

「……なるほど僕達はまだ全てのゲームをクリアしてなかったのですね。すみません、失礼な態度を取ってしまって」

「いえいえ、お気になさらず。折角なのでご案内しますね」


 勇者少年が謝罪すると、殺気が最初からなかったように霧散する。

 オレは先頭に立ち地下2階にあるゲームコーナーへと案内した。


 勇者達だけではなく、興味を抱いたBクラス冒険者達も罠の有無を2チームで確認した後続く。


 地下2階は昨日の地下1階のように教室ほどの広さがあった。

 互いに邪魔にならないように4つのテーブルが置かれている。


 一つは将棋。

 一つはリバーシ。

 一つは麻雀。

 一つは囲碁。


 合計4つのテーブルゲームが並ぶ。


 対戦相手は新たに召喚したウッドマン達に任せている。

 座ると自動的に開始するよう設定した。

 またお客様――ゲスト同士で対戦したい場合は、ウッドマンに声をかければ席を立ってくれる。


 オレは背後に居る勇者達へと振り返る。


「こちら4つのボードゲームをクリアすれば、ダンジョンコアに通じる転移陣が開きます。どうぞ頑張ってクリアしてくださいませ」


 Bクラス冒険者達が期待の瞳を唯少女に向けた。


「後4つクリアするだけでダンジョンコアに辿り着けるなんて楽勝だな」


 軽薄そうな剣士が口火を開く。


「でも、どれも難しそうよ?」

「(こくこく)」


 魔術師風衣装の女性の台詞に、白い衣装で身を固めた女性が同意し頷く。


「いやいや、さっきの遊技を見てただろ? どれも1発で達成。これぐらい勇者様なら余裕だって」

「あれは凄かったな。今でも胸が熱くなる……あれが勇者の実力というものか。やはり俺達とは格が違うな」


 斥候職らしき軽装装備の男性の台詞に、リーダーの重装備戦士が賛同した。

 若干、重装備戦士リーダーの目は、尊敬というより、異性に好意を向けるモノに近い気がするのだが……。つまり彼はロリコン――いや、唯の見た目は子供でも年齢は高校生ぐらいだからギリギリセーフなのか? 

 とりあえずゲスト同士の関わりに首を突っ込むつもりはないので、スルーさせてもらおう。


 皆の視線が唯少女に集まる。


 彼女は下を向いたまま小声で呟く。


「……り、リバーシのルールは知っている。でも、他は知らない。クリアは無理」


 今時の若者らしい返答。

 女子高生ぐらいの年齢の子が、将棋や麻雀、囲碁のルールなんて知らないよな。

 オレはフォローの言葉をかける。


「しかたないですよ。自分だってリバーシと将棋ぐらいしかルール知りませんから」

「え? ならどうやってウッドマン達にやらせてるんですか?」

「彼ら――部下ウッドマン達にはルールブックを渡して勉強してもらったんです。1冊、金貨1枚でお譲りしますよ?」


 実際はモンスターの項目に、『特殊強化』という項目がある。

 DPを支払うことで、モンスターに本来備わっていない特殊な技能、スキル、魔力を与える機能だ。

 あまりに特殊な能力を与えようとすると多くのDPが必要になってしまう。


 この『特殊強化』を使って、部下ウッドマン達に各種ゲームのルールをインストールすることに成功した。

 手痛かったのは、1ゲームのルールを覚えさせるのに5万DPかかった点だ。


 戦闘技能ではないがあまりに特殊だったため、多めにDPがかかってしまったのだ。

 なので勇者達にルールブックの本を高値で売りつける。

 どうせこの本が外に出れば、内容を写し広まるだろう。

 その前にふっかけて、DPの補填をするのが正解だ。


 勇者達は若干悔しそうな表情を浮かべながら、『将棋』、『麻雀』、『囲碁』のルールブック1冊金貨1枚。

 合計3枚を支払い購入する。


 リバーシをクリア後は、地下1階で『アイスパン』を食べて帰っていった。


 こうして無事に勇者をダンジョンから追い返すことに成功したのだった。




 ☆ ☆ ☆


 収支報告。


 ダンジョン挑戦者:6万5千DP


 金貨:22枚

 銀貨:7枚


 称号『最速勇者撃退』:以後勇者を撃退するたびに×2倍のDPを得られる。


 1day獲得DP     :233万5千DP


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― 新着の感想 ―
全部クリアか、1回だけでも普通無理。 ウッドマンもえげつない進化しそう、背中が煤ける。
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