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39話 プロパガンダ

 現在『ドリーム・ダンジョン』には帝国、聖教(せいきょう)国、連合国、冒国(冒険者が集まって出来た国)の兵士達が、集まっていた。

 彼らはオレが運営している『ドリーム・ダンジョン』に一度魔法陣で集まり経由して、大魔王ヨーゼフが構える『大魔王城』へと出陣するための兵士達だ。


 今日は『ドリーム・ダンジョン』持ちで、史上最悪の魔王『悪魔の魔王』の再来である大魔王ヨーゼフ討伐の出陣式がおこなわれていた。


 オレは代表者として、挨拶をするため壇上へと立つ。

 この挨拶は結婚式パレードで使用したカメラ&映像画面を使い各国、『ドリーム・ダンジョン』に生放送で配信されている。


 オレはマイクの前で切々と訴える。


「皆様、『ドリーム・ダンジョン』の代表を務めるウッド魔王と申します。世界は今、新たな史上最悪の魔王『悪魔の魔王』――セカンドデーモンの危機に晒されております!」


 一度区切り皆の注目を集める。

 十分なタイミングで再度語り出す。


「現在進行形で大勢の無辜の民がセカンドデーモン――大魔王ヨーゼフとその一味によって苦しんでいます。このまま彼らを放置すればより大勢の人々が謂われのない、理不尽な不幸を味わうことになるでしょう!」


 普段は楽しい会話、声、歓声で賑わう『ドリーム・ダンジョン』が静まりかえり、オレの言葉に耳を傾き続けていた。

 ウッドマンのため涙を流すことはできないが、そのつもりで訴える。


「このような悪辣な大魔王ヨーゼフとその一味――セカンドデーモンを世界のため、力のない民達を護るためにもこれ以上放置する訳にはいきません! その思いは人々だけではなく、同じく被害を受けた他ダンジョン魔王達も『打倒セカンドデーモン』の意思と共に大魔王ヨーゼフが居る『大魔王城』を攻略するため動いております。この戦いはただのダンジョン攻略ではありません! 第2の史上最悪の魔王『悪魔の魔王』を討つ戦いです! 今、再び世界に伝説の戦いが始まったのです! 自分には戦う力はありません……ですが大勢の被害者を前に指をくわえて見ていることなど絶対に出来ません! なので自分達は武器などは出せませんが、食料品や消耗品、嗜好品、資金は全て『ドリーム・ダンジョン』が支払わせて頂きます! 少しでも皆様のお役に立ち、一緒に大魔王ヨーゼフ――いえ、セカンドデーモンを倒しましょう! セカンドデーモンに鉄槌を!」

『オオオオオォォオォッォォオォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!』


 最後の言葉に目の前の会場に集まった兵士達だけではない。

 画面を通して映像を見ていた各国、『ドリーム・ダンジョン』内のあちこちに居る兵士以外の人々も狂気的な熱と共に叫ぶ。


『セカンドデーモンに正義の鉄槌を! セカンドデーモンに正義の鉄槌を! セカンドデーモンに正義の鉄槌を!』


 繰り返し、繰り返し『セカンド・デーモンに正義の鉄槌を』という言葉が響き渡る。


 オレの挨拶が終わると、次は勇者達に挨拶をしてもらう。


『セカンドデーモン討伐』の中心人物なる勇者達には、士気を上げてもらうため心ばかりの粗品――カタログギフトを贈っている。

 前世日本時代にあったカタログに乗っている商品を選んだギフトが届くというものだ。

 カタログにはこの異世界では絶対に手に入らない松坂牛や高級スイーツ、果物、衣服、下着類、高級化粧品、お米などが多数載っている。


 あくまで勇者達に士気を上げてもらうための粗品だ。

 決して袖の下なのではない!


 3人いる勇者の中で唯一の男性である悠人が、壇上に上がり挨拶をする。

 内容は『自分達だけではなく、他ダンジョンの魔王達と協力してセカンドデーモンを討つ。連合軍、魔王軍、人魔一体で共に力を合わせてセカンドデーモンを倒していこう云々』といった内容だ。


 オレはその様子をダンジョンマスタールームからのんびり眺める。

 手元にあるぬるくなったお茶を口しながら、画面に映る者達のやる気溢れる姿に茶々すら入れていた。


「皆、元気があっていいな。特に勇者達は気合十分って感じだな。ギフトを贈って大正解だったよ」

「…………」


 一方、オレのアシスタントデーモンを務めるネアは、今まで見たことがないほどドン引きしていた。

 オレはぬるくなったお茶を口にしつつ、そんなネアに話しかける。


「ネア、ドン引きしているのは分かったからいい加減顔を戻した方がいいぞ。女の子のしちゃいけない表情をしているから」

「あ、あんな酷い嘘を堂々と付いて相手を貶めて言うことがそれだけですか?」

「酷い嘘? オレはそんな嘘一つもついていないぞ?」


 実際、今でも大魔王ヨーゼフ(偽)が撒き散らしたシュールストレミング&くさや液×キビヤック(アザラシのお腹に鳥を詰めて発酵させた食品)を混ぜた腐臭に苦しんでいる人々が大勢いるのは事実だ。

 嘘など一つもついていない。


「他にも色々酷いことをしたじゃないですか!?」

「酷いこと? さて何かしたか? ちょっと大魔王ヨーゼフ(偽)を使って色々やらかして、商人達を使って各国の街、町、村へサクラと共に情報をばらまいただけだぞ? 誰一人傷つけていないのに酷いことをしたなんて心外だぞ」


 早い話がプロパガンダだ。


 大魔王ヨーゼフに喧嘩を売られて直ぐ、オレは以前からこのような場合に備えて準備していた計画を実行した。

 以前DPが溜まったお陰で、新しい機能ツールが解放された。

 その一つがハリウッド映画のような映像を撮って、ダンジョン内部に放映出来るというものだ。

 この機能を使って、アリア&エゾンの結婚式パレードをダンジョン内でリアルタイム放送したのは記憶に新しい。


 ここで重要なのは『ハリウッド映画のような映像を撮って』――つまり『ハリウッド映画が撮れる』ほどの技術を得たことだ。


 この『ハリウッド映画技術』で大魔王ヨーゼフ、彼の自称右腕のデカトス、寡黙なカンツァーに背丈が似た魔物を使って特殊メイクを施した。

 ハリウッド映画を観たことがある人達なら、特殊メイクの凄さを理解できるだろう。

 若者を老人に、人を異形の怪物やゾンビに仕立て上げることが出来るのだ。


 声も彼らが『ドリーム・ダンジョン』で見学した際の音声を取り込み、雑音を消してボイスレコーダーで発音しているかのようにセット。


 姿を変える魔物は変化している間はずっと魔力を垂れ流す。

 しかし『ハリウッド映画技術』の特殊メイク&ボイスレコーダーで、魔力を垂れ流さない本物そっくりの偽者を作り出すことに成功する。


 あとはちょっとサクラを紛れ込ませて、扇動し、レッテル張り(セカンド・デーモン)をして、人肉っぽい腐敗肉が混ざった臭い液体をばらまき、『次は自分達が殺されバラバラにされてこんな風にばらまかれるのかも』と不安を煽った。

 さらに連日『ドリーム・ダンジョン』の魔法陣を狙うのが大魔王ヨーゼフの仕業と叫ぶ。

 サクラ達には臭い液体をばらまく魔物達が『大魔王ヨーゼフとその部下達だ』と断言させ吹聴し、『ドリーム・ダンジョンで神官スタス様と親しげに話をしていたのを見た』と連呼させ本物感を強めたり、『ドリーム・ダンジョンを見学していたのを自分はこの目で確かに見た』と煽り続けただけだ。

 他にも品物を卸している商人達に、噂をガンガン流して村々、親族、町々、街々に注意勧告するよう善意で教え、率先して情報を流しちょっとプロパガンダをしただけである。


「実際『ドリーム・ダンジョン』の魔法陣を狙って配下を嗾けたのは事実なわけだし。オレはその真実を流した上で、ちょっと味付けしただけだぞ。後は『セカンド・デーモン』という繰り返し印象に残るフレーズを連呼することでレッテルを貼り付けて、各国、他魔王が大魔王ヨーゼフ討伐を止められないように仕向けただけじゃないか」

「貴方は悪魔ですか!」

「いや、魔王だが?」


 ネアのツッコミにオレは思わず素で返答する。


 とはいえここまで上手くいったのは史上最悪の魔王『悪魔の魔王』という前例があったからだ。

 人も、魔も、獣も、一度も進んだことの無い道を歩くのは嫌がる。

 しかし一度でも進んだ道ならば、進むのは容易い。

 実際、魔王達の中にはこれが『仕掛けられた濡れ衣だ』と把握しているのも多数居るがもう走り出してしまったのだ。止めることは不可能である。

 もしここで止めようとするなら『貴様はセカンド・デーモンの仲間か』と問われる。自分の命が危うくなるのだ。

 わざわざ、そんな危険な行為をする者はいない。


「さらにこの機会にダンジョンランキング1位の大魔王ヨーゼフを削りたい、あわよくば倒したいと願う層もいる。それらがこの勢いを止めるようなマネはさせない。人と魔も決して一枚岩であり続けることは不可能だからな」


 皮肉にも、それを証明、確信させたのは大魔王ヨーゼフだ。

 彼は『ドリーム・ダンジョン』で交渉する際、『僕が手を下さなくても、派閥のダンジョンマスターが手を出すかもしれない。ダンジョンランキングトップだから下が多くて、中には血気盛んなマスターもいるから云々』と言っていた記憶がある。


 つまり、『大魔王ヨーゼフの存在が気に入らない派閥も存在する』ということだ。


「オレはそれを少し利用させてもらっただけだよ」


 一通りの説明にネアが頭を抱える。


「本当に貴方という魔王は……」


 だがそれ以上何も言わず黙り込んでしまった。




 ☆ ☆ ☆




 こうして『セカンド・デーモン』――改めて大魔王ヨーゼフの『大魔王城』は人、魔王連合によって約3ヶ月で本人死亡、陥落させられてしまったのだった。


『【連載版】ようこそ! 『ドリーム・ダンジョン』へ! ~娯楽ダンジョンで日本製エンターテーメント無双~』を読んで頂き誠にありがとうございます!




また、本日(4月17日)昼12時に、ついに以前からお伝えしていた『【連載版】信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』をアップさせて頂きました!


また初日ということで2話連続でアップする予定です(2話目は夕方予定。プラス短編分の1話があるので厳密には3話)。

詳しくは作者欄をクリックして飛べる作品一覧にある『【連載版】信じていた仲間達~』をチェックして頂ければと思います。


頑張って書きましたので、是非チェックして頂けると嬉しいです!



では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 攻略される描写も無くさっくり退場の大魔王(笑)
[一言] 勇者VS魔王というこれぞという戦闘シーンすら全カットしていくスタイル。3ヶ月と言う時間に何があったのかその顛末すらない……技術面でチートしてるとはいえ軍略家として普通に天才な気がするw
[良い点] 人を殺すのに刃物は要らないという信念のまま、戦闘シーンをバッサリ省略。この潔さ。知略で勝つことを際立たせているかと。
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