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3話 濡れ手にアワー

「おぉー本当に銀貨もDPに加算された。称号『最速最多DP獲得者』の1万DPもなかなか美味しいな。これって明日以降もDPがもらえるのか?」

「いえ、今日1日限りです。しかし知識としては知っていましたが、まさか称号がつくほどDPを稼ぎ出すなんて……」


 オレとネアは『ドリーム・ダンジョン』マスタールームで席に座りながら、今日1日の反省会をしていた。


 マスタールームとは、ダンジョン内部の操作をする場所である。

 他の場所でダンジョンを操作すると、冒険者に目撃され情報が流れる可能性がある。

 それを防ぐための処置だろう。


 オレが座っている背後には、自身とよく似た魔物ウッドゴーレムが3体直立不動で立っている。

 その内の1体は他と違って赤いマントを羽織っている。


 ルールとしてダンジョンコアを破壊されなくても、殺された場合は死んでしまう。

 そのため身の安全を考えて、ウッドマンをマスタールームから操作し、自身の身代わりにしたのだ。


 お陰で安全な位置から、命の心配もなく冒険者の相手をすることができた。


 オレは今日来た冒険者達から得られたDP、搾り取った銀貨全てをDPへと変換。

 今日1日だけで100万以上のDPを稼ぐことに成功する。

 100万DPといえば、初期にもらえるDPの10倍である。


『インベー○ーゲーム』も美味しかったが、やはり一番効率がよかったのは『アイスパン』だ。

 一つ800DPのシロノ○ール――ではなく、アイスパンに金貨1枚払ってくれた。

 濡れ手に粟というレベルではない。

 アイスパンはこの世界では珍しく、甘味が貴重で、美味いから絶対にいけると思っていた。

 読み通り強気な値段にもかかわらず、冒険者達は所持していた有り金全部を出してアイスパンを食べていった。


 ちなみにネア曰く、得られたDPから冒険者の実力値がだいたい分かるらしい。

 一般人      :10DP

 冒険者      :100~500Dp

 冒険者Bクラス  :1000DP

 冒険者Aクラス  :5000DP

 冒険者Sクラス  :1万DP

 勇者(チート有り):2万DP

 ――だとか。


 今回の冒険者はBクラスらしい。


 彼らは結局、所持金を使い果たすと長椅子に座って食休みの談笑をだらだらした後、昼過ぎにはダンジョンを出て行った。

 冒険者ギルドに報告があるため、今日はもうこれないらしい。


 彼らがギルドへ報告し、安全が確保されないと他冒険者が来ることはないとか。

 だったら、もう今日は店じまいならぬダンジョンじまいすると返事をした。

 去り際、冒険者パーティーリーダーが『明日もやっているか?』と尋ねられたので快活な声で、『もちろんです』と答えておく。


 どうやら彼らは明日も『ダンジョン調査』という名目で来てくれるらしい。


『ドリーム・ダンジョン』の方向性を知ってもらったため、明日はかなりの金額を手にダンジョンを訪れてくれるだろう。

 頑張って搾り取る――ではなく、一時の楽しい夢が視られるようにこちらも全力で応えなければならない。


「これは夢? 幻? でも本当に短時間で新人魔王がナイフ1本使わず、稼ぎ出すなんてありえない……」


 ネアは頭を抱えてぶつぶつと自問自答していた。

 現実逃避する彼女の肩を叩き、顔を上げさせる。


「とりあえずいい加減、落ち着いてくれ。これから今日得たDPを使って色々拡張したいからアドバイスを聞かせてくれ」

「はっ!? す、すみません! サポーターの私としたことが……。あまりの非現実的光景に我を失ってしまいました」


 ネアは正気に戻ると、椅子に座り直す。

 オレは落ち着いた彼女を前に、改めて今日得たDPとまだ余っているDP、合計約110万DPを使ってダンジョンを拡張する相談をした。


 そしてオレ達は深夜遅くまで、ダンジョン拡張と新規ゲーム導入と配置に取り込んだ。




 ☆ ☆ ☆




 翌日。

 今日もダンジョン外は晴れ。

 エーナー王国へ向かう街道には大勢の馬車や人々が居た。

 まるで前世、日本で見た通勤ラッシュだ。


 そんな人の行き交いがやや落ち着いた10時頃、昨日来たBクラス冒険者達が再び『ドリーム・ダンジョン』へと訪れる。

 オレ(偽ウッドマン)は、赤いマントを翻し、歓迎の挨拶をする。


「ようこそ『ドリーム・ダンジョン』へ! 皆様どうぞ一時の楽しい夢を存分にお楽しみください!」

「よぉ、また調査に来たぞ」


 冒険者パーティーのリーダーが片手を上げ、ダンジョン内部へと入ってくる。

 昨日と比べて明らかに警戒心が薄くなっていた。

 彼の後ろから見覚えのある冒険者達がぞろぞろと顔を出す。


 彼らの後、さらに新顔が3人、警戒しつつもダンジョンへと足を踏み入れる。

 少年1人、少女2人の計3人パーティーだ。


 オレは彼らと初対面だが、見覚えがあった。


 彼らを連れてきたリーダーが意地の悪い笑みを浮かべつつ、彼らを紹介する。


「こいつらは我がエーナー王国が誇る最強戦力、勇者様達だ。昨日、俺達の報告を聞いてこのダンジョンに興味を抱いたらしく、連れてきたんだ」


 ダンジョン運営から2日目。

 勇者様ご一行と早々と出会った。


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