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23話 視察団の案内2

 オレ達が次に向かったのは闘技場だ。

 現在、モンスター同士が戦いどちらが勝つかの賭け事をしている。

 この程度ならダンジョン外の闘技場でもおこなわれているため、聖教(せいきょう)国家視察団も特に驚きも無く受け入れていた。


 次はちょっと珍しい競馬場だ。

『競馬場』という名称だが、基本走っているのはモンスターである。

 楕円型のグラウンド周囲に段々畑のように設置された席から観客達が懸命に声をあげ応援している。

 彼らの応援を受けて多種多様なモンスターが汗を流し走っていた。


 競馬場を視察した司教が、『闘技場では血を流し、競馬場では汗を流しているのですか』と妙に上手いことを口にしていた。

 思わず座布団を一枚進呈するところだった。


 さすが歩き回ったため、疲れを癒すのも含めて次の視察をレストランコーナーに定める。

 ちょうど良いタイミングで女性神官が『女性しか入れない店』の買い物――げふんげふん、視察を終えたと付き添ったシルキーから連絡を受ける。

 彼女も一緒にレストランコーナーに連れ来るよう指示を出し、視察団にも許可を取った。




 レストラン出入口で女性神官と合流を果たす。

 彼女が内部で購入した品物は付き添っていたシルキーに預け、今夜泊まる一室に運ぶよう手配する。

 手配が終わった所で、内部へと足を踏み入れる。


 レストランコーナーは『ドリーム・ダンジョン』でも1、2を争うほど人が集まる場所だ。

『女性しか入れない店』とは違い、事前に予約席を確保していたため足止めされることなくスムーズに席につくことが出来た。

 観葉植物&仕切りで半個室スペースのため周囲の目をそこまで気にする必要はない。


 オレはメニュー表を開き視察団に手渡しながら尋ねる。


「皆様は教義的に食べられない食材や苦手な物はありますか? もしメニュー表に乗っている物が食べられなければ、特別にご用意させますが」

「魔王殿、お気になさらず。教義的に食べられない物はありません。それに苦手な食べ物が出てきても幼子のように嫌がる者はこの場におりませんから」


 司教のジョークに席についた神官達が微苦笑を漏らす。

 最初に出会った時はこちらを酷く警戒していたが、『ドリーム・ダンジョン』を見まわったことで警戒心が薄れ、大分距離が縮まったようだ。


 司教がメニュー片手に眼鏡をずらす。


「詳細な絵が付いているお陰でどんな料理か一目で分かるのがいいですが、味の想像が付かず迷ってしまいますな。もしよろしければ魔王殿のお勧めなどお願いできますかな」

「お任せください。と、言っても私はウッドマンで食事が摂れませんから、味は分からないのですが……、この店の人気メニューを一通り注文させて頂きますね。もし合わなかったら、遠慮無く申し出てください。すぐに別の料理をお持ちするので」


 オレはブザーを押すと、猫耳メイドに注文を付ける。

 この店の人気メニューはパスタ、ハンバーグセット、唐揚げ、枝豆、ピザ、グラタンなどが並ぶ。

 やや子供向けメニューが多いのは、家族連れが注文するためだ。

 故に子供向けメニューに偏るのである。


 雑談していると猫耳ウェイトレスが、注文の品を並べていく。


 一応神官の1人が料理に毒物、洗脳魔法の類がかけられていないかのチェックをし終えた後、早速料理に手を付けていく。


「この衣を纏った鶏肉は美味ですね!」

「わたしはこちらのカルボナーラが濃厚で美味しいです。まさかチーズにこのような食べ方があったなんて」

「いやいや! それを言ったらこちらのグラタンとピザこそチーズの新しい可能性を示す素晴らしい料理ではありませんか!」


 神官達はいざという時、脱出するため腕利きが揃っている。

 当然、体は大きく、現役冒険者にも引けを取らない肉体をしている。結果、がっつりとした料理がヒットしたらしく、皆、美味しそうに料理を口にしては感想を告げていた。


 一方、初老に入った司教にとってやや脂っこい食事だったらしく、神官達とは違ってひたすら枝豆を無心で食べていた。

 これはオレのミスだ。

 一つぐらいあっさりとした料理を注文すべきだったな。


 オレは遅まきながら自身のミスに気付き、司教に声をかける。


「司教殿、別のあっさりとした料理を注文いたしましょうか?」

「……おぉっ、いえ、魔王殿、お気遣い痛み入ります。小生は元々小食で、それほど食べるほうではありませんから。それにこの『えだまめ』ですかな? こちらの塩気が絶妙で、食感もよく美味しく食べさせて頂いているのでお気遣いなさらず」


 こちらを気遣っての台詞ではなく、再び黙々と枝豆を食べ始めた。

 まるで冬に備えてリスが溜め込んでいるようだった。


(前世のネット記事だか、ニュース記事で海外の人に枝豆が受けて、延々と食べ続けられる云々とか言っていたって聞いた覚えがあるけど……。この異世界でもどうやらそうらしいな)


 喜んでもらえるならありがたい。


 休憩も兼ねた食事も一通り終わり、顔合わせ当初あったピリピリした雰囲気が嘘のように消え、視察団全員が和んだ空気を漂わせていた。

『もう仕事は終わった』とばかりの緩んだ空気だが……まだ視察は終わっていない。


 最後に一番難度が高い、恐らく視察団が目を付けるだろう場所が残っている。

 オレはタイミングを計って切り出す。


「では食後ですが、最後に男性陣しか入れない施設に向かいましょうか。先程と違って、女性の神官には申し訳ありませんがこちらに残って頂いてもよろしいでしょうか?」

「もちろんです。魔王殿の指示に従わせましょう」


 代表して司教が返事をする。

 女性しか入れない店の前で男性神官が『女性しか入れない施設と仰っておられましたが、なぜ女性しか入場できないのでしょうか云々』と騒ぎ、余計な注目を集めたのは記憶に新しい。

 女性神官は彼の轍を踏むマネはせず、大人しく上司の指示に従う。


 オレは待機している間の慰めに追加でケーキと紅茶を注文。

 彼女の前に置いて、『もし足りなければお好きなだけご注文ください。こちらの支払いは全て私が致しますので』とフォローも忘れない。


 こちらの異世界ではまず食べられない苺のショートケーキを前に女子神官は喜色満面の笑みを零す。

 反対にこれから視察に向かう男性神官達は名残惜しそうな、羨ましそうな表情で後ろ髪を引かれていた。


 そんな神官達を前に司教が頭を軽く抱える。


「魔王殿、申し訳ないお恥ずかしい所を……」

「いえいえ、お気になさらず。それではレストランを出ましょうか」


 オレと司教が先だってレストランを出ると、さすがに追いかけない訳にはいかず男性神官達がカルガモの子供のように後へと付いてくる。


 出入口のショップ店から今まで歩いて来たが、次に向かう場所は再び転位陣を使用する必要があった。

 オレ達が次に向かう場所――『娼館街』へと向かったのだった。


『【連載版】ようこそ! 『ドリーム・ダンジョン』へ! ~娯楽ダンジョンで日本製エンターテーメント無双~』を読んで頂き誠にありがとうございます!


また今回本作ドリームダンジョンの他にも、『【連載版】廃嫡貴族のスキルマスター ~廃嫡されましたが、『スキル創造』スキルで世界最強のスキルマスターになりました!?~』を連載版としてアップさせて頂きました。

ドリームダンジョンだけではなく、スキルマスターの方も是非是非チェックして頂ければと思います。


一応作者名をクリックすれば移動できますが、他にも移動しやすいようにアドレスを下に張らせて頂きます。

『【連載版】廃嫡貴族のスキルマスター ~廃嫡されましたが、『スキル創造』スキルで世界最強のスキルマスターになりました!?~』

https://ncode.syosetu.com/n9129ga/

です。


他にも新作として『軍オタが異世界ヨーロッパ戦線に転生したら、現代兵器で魔王ヒトラー(美少女)を倒す勇者ハーレムを作っちゃいました!?』をアップしております。

こちらは現在毎日更新中で、1章が終わって現在2章に入っております。

2章では『軍オタらしい盛り上がり』が多々あるので、是非チェックして頂けると幸いです。




では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタンがあります)』を是非宜しくお願い致します。


 感想もお待ちしております。


 今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >彼らの応援を受けて多種多様なモンスターが汗を流し走っていた。 体温調節のために全身に汗を流せる動物ってかなり少ないんですよね。馬とかカバとか。 >観葉植物&仕切りで半個室スペ…
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