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【完結】陰陽師は神様のお気に入り  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
第1章 陰陽師は神様のお気に入り

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18/131

18.***悪友***

 正座して、目の前の2人に引き攣った笑顔で応じる。


「……だから、アレは人の悪意が固まって出来る『人魂』もどきであって……厳密には人格とかないから、比較的吸収しやすいんだよ」


 これ以上の説明をしろと言われても、真桜だって詳細を知っているわけじゃない。困りながら首を傾げれば、にこにこと山吹が口を開いた。


「悪意を飲み込んで平然としている真桜を、ちょっと開いてみたいですね」


「それはいい」


 簡単に同意したアカリの声に、真桜の笑顔は崩壊した。


「ちょ、開くって……」


『真桜さま……ばらばらにされそうですね』


 心配しているというより、雰囲気を楽しんでいる黒葉の追撃にがくりと項垂れた。


 冷えた室内へ侵入した悪霊を指先で弾く。消えた霊がしゃらりと甲高い音を立てた。


 通常『陰陽師』とは読んで字の如し。陰と陽を同様に持ち合わせて操る存在を指す。


 一番適しているのが、闇の器と光の魂を抱く人間だろう。しかし真桜は闇の神族の血を引く為、つねに闇に偏りがちだった。それを補っているのが、光の神族に近い式神なのだ。


 真桜単独ならば、いつ闇に染まってもおかしくない。


「冗談はさておき、今回の首謀者はまた……彼ですか?」


 山吹が声を顰める。自然と輪を小さくして、顔を突き合わせるようにした面々に、真桜は諦めたような仕草で溜め息を吐いた。


「ああ……」


「懲りないですね」


 事情がわかった様子で進む話に、アカリは素直に疑問を挟んだ。


「……彼とは?」


 一瞬顔を見合わせた彼らの視線を一斉に受け止め、軽く小首を傾げる。


 天照の眷属であるアカリは地上に降りたばかり、何もかも見通す能力はあっても……まだ使いこなすには時間が足りなかった。


「悪い、説明忘れてた。『彼』ってのは……まぁ、オレの幼馴染なんだけどな。天若(てんじゃく)って奴、闇の神族に属するのに真っ赤な髪と蒼い目で目立つんだよ。仲良かったのもあって、オレが地上に出ると決めた後は大騒ぎだったんだけど……」


「真桜を連れ戻したいのでしょうが、よく悪戯を仕掛けてきます」


 山吹の締めくくった大雑把な説明に、アカリは眉を顰めた。


「……幼馴染、友人なのか?」


 過去形ではなく?


 そんなニュアンスに、真桜が肩を竦めた。背の髪が揺れる。


「親友なんだ。今もね」


『悪友だろう』


 茶化した華守流の物言いに、全員が苦笑いを浮かべた。真桜も否定せずに笑うだけ。


 穏やかな空気の中、「くしゅん」とくしゃみが響いた。


「やべっ! 風邪引くぞ」


 慌てて真桜がアカリの肩に上着をかける。神様とはいえ、アカリの器は現在人間と同じ…風邪を引いたら大変だ。ましてや風邪の経験などないだろう身体に、万病の元は辛すぎるだろう。


「じゃ、今日は帰るわ。出仕は明後日ってことで……」


 物忌みとか何とか理由をつけて休む気満々の真桜に、今上帝はにっこりと釘を刺した。


「帰る前に、ちゃんと封印を戻してくださいね」


 解除してしまった部屋の守護―――確かに依代の山吹が住まう場所としては危険すぎる。


 引き攣った笑顔で「も…もちろんじゃないか。忘れるわけないだろ」と請け負った真桜は、裏で式神達に『…完全に忘れていたな』と囁かれ、派手に数回くしゃみをした。

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