相手の弱み確定ガチャ
「ここは、しゃがんでスイッチを押すー」
「おう」
「なぁタカ。これ明らかに隠し通路……」
それ以上いけない。
「なぁ俺怖くなってきたんだけど……帰っていいか?」
「おいおいシャノン、言っただろ?もう放っておいたりなんてしないって」
「タイミング次第でそこまで最低なセリフになるんだな……」
やかましいわ。
いや俺だって予想出来ねぇよこんなの。
どんだけやましい事があったらここまで入り組んだ場所に住居構えるんだよ。
「一周回ってちょっとワクワクしてきやがったぜ……!」
「勘弁してよ……」
勘弁もクソもあるか。
良いから行くぞ!俺は……止まんねぇからよ……!
お前らが止ま……おい、どうした?
「着いた」
「……どこにだ?」
完全に行き止まりである。
「おいおい、道に迷ったのか?」
俺がそう呟いた瞬間、モータルに服をつかまれ地面に叩きつけられた。
「ぐふぅっ!!?」
その数瞬の後に頭上を一本の剣が通過していく。
「だ、誰だ!?」
とりあえずその辺の虚空へ向けガンを飛ばしてみる。
だが俺がそんな事をしている間に、モータルが敵がいるらしい方向へと切りかかった。
「てめぇッ!?どういう勘してやがるッ!?」
キィン!という甲高い金属音が鳴り、ぐにゃりと歪んだ景色の中から一人の男が姿を現した。
「タカ!殺すから手伝って!」
「了解!」
モータルの呼びかけに応じ短剣を構え立ち上がろうとしたその時。
「ダメーーーーーーッ!!」
耳がキーンとなる程の叫び声。
「うっせぇぞガキ!こんな治安最低な場所に案内しやがって!慰謝料は保護者からたっぷり絞ってやる!」
「……おい」
「あ?何だよ」
最早完全に姿を現し切っている、キツネ顔の男が俺を睨みつけてくる。
「その保護者ってのは俺だ」
「そうか。慰謝料くれ」
「面の皮が厚いってレベルじゃねーぞ!?あと、おい、やめろ!おい!コイツ止めろ!」
この会話の最中もひたすら男に向け剣を振るっていたモータル。
「おい、本当に保護者なんだな?」
「いや、ちょ、おい!一旦戦闘やめようぜ!?なんでわざわざ……おまっ、ふざけんな!攻め方がエグいんだっつうの!」
モータルの猛攻を必死に防ぎながら悲鳴をあげる男。
まあこんなもんか。
「おい、モータル。そろそろ許してやれ」
「何で上から目線!?お前コイツに助けられてなかったら首すっ飛んでたからな!?」
「だからだ。殺そうとした件を一旦置いといてやるつってんだよ」
モータルが未だ警戒状態を維持しつつも、俺の方まで後退してきた。
「まあガキの様子からしてお前が保護者なのは分かった」
俺はしくしく泣いていたガキを引っつかみ、男の方を向かせる。
「即座に俺らを殺しにかかるくらい大事にしてんだったらな……目放すなよ。育児放棄は感心しねぇ」
「えぇ……」
おいシャノン、何だその顔は。
「俺はお前の事をあまり知らんが……何と言うか……お前にだけは言われたくない気がする」
「なんだてめぇコラ。喧嘩か?あ?上等だ、買ってやるよ。やっちまえモータル」
「お前はやらねぇのかよ!?……おい!やめろ!やめさせろ!コイツなんでこんな強ぇんだよ!」
再びモータルのえげつない攻撃に身を晒された男が、再び必死に攻撃を受け流す。
「割と余裕ありそう」
「ねぇよ!ふざけんな!不意打ちかわされた時点でほぼ手札尽きてんだよ!」
「しょうがねぇな。おい、モータル」
俺の呼びかけに応じモータルが俺の所まで下がってくる。
「タカ。あいつもうちょっとやれると思うよ」
「やっぱそう思う?じゃあ……」
「じゃあ、じゃない!やめろッ!」
慌てたような様子でガキに駆け寄り抱きしめた後、こちらを睨みつけてくる男。
「……というか、てめぇら何しに来たんだよ」
「チンピラに絡まれてたガキの見送り」
「……」
「いやぁ、散々だわ……チンピラから助けんのも大変だったし、ここまで来るのだってしんどかったってのに、当の保護者に殺されかけるんだもんなぁ」
俺の話を聞いていく内に顔を青くしていく男。
「いや……その……」
「そういや不意打ちの時投げてた剣、なかなかの品だったけどなぁ。あー、欲しいなぁ」
「お前……」
だがあのまま壁に叩きつけられて地面に転がっているはずの剣は見当たらない。
十中八九、コイツの魔法かスキルか何かだろう。
剣渡すついでにアイツの戦闘手段を見てやろうという魂胆だ。
「……持ってけ泥棒」
「誰が泥棒だ」
男が剣を投げ渡してくる。
危ねぇな。キャッチするのがモータルじゃなきゃ死んでたぞ。
「切り傷くらいつけてやろうと思ったのに……そいつの戦闘能力おかしいだろ……」
いや俺もちょっとびっくりしてるんだよね。
精神と時の部屋かなんか使ったの?動きのキレが以前の比じゃねぇよ?
……まぁいいか。さっきの受け渡しをじっくり見ていて、俺はアイツがどういう存在かだいたい察した。
「じゃあ、行くぞ。シャノン、モータル」
「了解ー」
「わ、分かった」
俺の潔さにビックリしたのか少しポカンとした様子の男を放置し、俺達はその場を去った。
普通に帰り道に迷子になってキプロスの所に行くまで二時間くらいかかった。
「誰か覚えとけよ」
「タカ、あんまり俺に期待されても困る」
「……分かってるっての」
いやまぁ二時間で帰れたのはモータルの野生的な勘のお陰なんだが。
そんな事をぼんやり考えながら、屋敷の門を顔パスしつつ、屋敷の中へと入る。
階段を上がっていく内に段々声が聞こえてくる。
「待ってくれ!もうちょっと待ってやってくれ!」
「あぁ!?こんなに待たせるようなクソ客じゃなくたって俺にゃもっと有用な客がいんだぞ!?分かってんのかァ!?運送費三倍だ!それでならもう少しだけ待ってやる!」
そのやり取りの片方はおそらくソリコミくんの物だろう。
そしてもう一方。
その声にも、聞き覚えがある。
その事に思わず口の端を歪めながら俺は階段を上り切り、声の主がいる場所へと到達する。
「あっ!ホラ、来たぞ!」
「てめぇかコラァ!俺は忙し……」
「どーもー、クソ客でーす」
俺は二時間前会ったガキの保護者――いや、今回、キプロスに間を持って貰った「運び屋」に向け、にこやかに挨拶をした。
「……」
「値段三倍ってマジ?」
「えっあっ、いや、そんな事はないぞ。うん」
「ああ、三分の一倍の聞き間違い?」
「てめッ……いや、あの、半額で勘弁して貰っていいですか……」
ははははは。
はははははは!!!!!
言っただろ!?俺はガチャ運がねぇかわりにこういうとこで運が良い!
「おお!半額かぁ!待たせちゃったのに値引きまでしてもらって悪いねぇ!」
「い、いや……待ってない……です……」
わはははははは!!!!
最高の気分だぜ!!!!!!




