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過疎ゲーが現実化して萎えてます。  作者: ペリ一
本編

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亀裂、破壊

「僕に頼みがあると聞いたんだけど」


 アルザがリビングに現れるなり、たむろしてる俺達を見て顔を顰める。


「とりあえずろくでも無い頼み事だって事は分かったよ」


「アルザ、そうやって偏見で物を見るのはよくないぞ」


「偏見じゃない。経験に基づいた推測だ」


 はあ、と溜め息をついたアルザが空いていたソファに腰掛ける。


「で?一応、聞いてあげようじゃないか」


「おお。コレなんだが」


 タカがアルザに印刷した衣装の資料集を渡す。


「……ふーん。民族衣装?結構可愛……っ!?何この破廉恥な衣装」


「どう?」


「どう?って……僕は着ないよ?」


 呆れた視線を返すアルザに、やれやれと言った風に肩をすくめる三人の漢達。


「むっ……すごく馬鹿にされた気分」


「アルザ、着るのはカーリアちゃんだよ。アルザは……それを作るんだ」


 タカの言葉にアルザはああ、と納得したような声を出す。


「……まあ、いっか」


「「「あざーっす!」」」


「軽いなぁ……僕一応魔王軍の中じゃ重役なんだけど……」











 数時間後。リビングは、いたるところで魔法陣が展開され宙を浮く針が衣装を作り、カーリアまでもが何故か裁縫をやらされているという混沌とした空間となっていた。


 アルザに指導され慣れない裁縫作業をやっていたタカが顔をあげ叫ぶ。


「生地が足りん!ちょっと調達行くぞ!」


「分かった。俺も行こう」


 タカの声に反応したほっぴーが立ち上がり、部屋を出て行くタカに追従する。


「じゃあちょっと抜けるから」


「ああ」


 そう言って二人を見送るアルザ。


 二人の背に向けられたその視線が、恐ろしい程に冷えたモノであった事に、二人が気づくことはなかった。








「さて、と。紅羽」


 避難民と共に薫と両親が出て行き、今ではすっかりもぬけの殻となった家のリビングで、紅羽がお茶を飲んでいた。


「……ああ」


「そんなに心配すんなっての。バレやしねぇ。俺らはいつもみたいにバカやるだけだ」


「あたしまでバカやってるみたいな言い方はやめて欲しいんだけど……」


 え?みたいな表情でタカがほっぴーを見る。


「こいつも大概だよな?」


「十傑ってだけでアホの部類には入る」


「てめぇら……!」


 紅羽が二人を睨むが、心無しかいつものような覇気が無い。


「……不安なんだよ。流石に、な」


「そうか?あいつ等アホだぞ?」


「タカ、ブーメラン刺さってるぞ」


 そんな二人のいつも通りのやり取りを聞いていた紅羽だったが、未だに表情は優れない。


「相手は魔族だ。あたし達とは違う生き物だぞ?そりゃ姿形は人間だけど、さ」


「つってもなぁ……警戒はしてたし、大丈夫だろ」








 その後紅羽がある程度心を落ち着けるまで喋りに付き合った後、布類を持ち拠点へと戻った。


「ちと遅れたわ。すまん」


 タカがそんな言葉と共にリビングのドアを開ける。


「ああ……おかえり」


 そして、アルザの言葉と共に宙に浮かぶ針が一斉にタカとほっぴーの方へ向けられる。


 唐突に針がどこかにいってしまい、スペルマンとカーリアがわたわたと慌てる。


「ちょっと緊張感に欠けるから隅の方に立っててくれるかなぁ!?」


 アルザの声に、二人が慌ててタカとほっぴーの横に並んだ。


「……色々と言いたい事はあるけど。簡潔にいこうか」


 アルザがソファから立ち上がりタカ、ほっぴー、スペルマンを順に睨みつける。


「やってくれるじゃないか。妙な動きがあるとは思っていたけど……どうやって砂漠の女王を丸め込んだ?そんな隙は無かったはず……いや。彼だな?僕の個人研究室の暗号を解いた挙句脱走した」


「何の話だ?」


 タカの問いをアルザが鼻で笑う。


「今更とぼけたって無駄だ。いやあ、やけに遠まわしに領域やら聖樹の事について聞いてくるからね。妙だとは思ってたんだ」


「だから、何の話だよ!?」


「……もしかしたら君達は本当に関係無いのかもしれないね。ただ、疑わしきは罰す。普段の僕ならもっと早い段階で殺していたんだろうけど――情、かな。こんな最後の遊戯にも手を貸してあげたのも。ああ、衣装ならだいたい完成したよ」


 そう言うとタカ達の目の前にドサリ、と衣服が出現する。


 タカがアルザを睨みつけながら、それを畳みつつスペルマンのバッグにしまっていく。


「疑い?何の、疑いだ」


「……東京に砂漠が出現した。いやぁ、魔王軍は大慌てだよ。僕らとしても、あの砂漠はいざとなった時のシェルターだった。どうやったか知らないけど、とんでもない事をやらかしてくれたね」


 苦々しげに顔を歪めるアルザ。


「東京に砂漠?何かの比喩か?」


「分かってるはずだろ?僕は既に確信の域に達している。君達は異常だ。他の人間と比べて強すぎるんだよ」


 アルザの言葉にほっぴーが口を挟む。


「確信じゃないだろ。どこかで少しだけでも俺達を信じてる。……さっき、違うかもしれないって言ったばかりじゃねぇか」


「やめろ。君達の言葉を聞いていると惑わされそうになる」


 アルザが深く、深く溜め息を吐く。


「……抵抗はしない事を勧める」


 そう呟くと、周囲の宙に浮いた針が矢へと姿を変え、タカ達の下へ殺到した。



 防御手段をなんら持たない上に室内。その矢は三人を貫く――はずだった。


 突如として矢の軌道が変わり、床や天井に突き刺さる。


「……カーリア。どういうつもりだい?」


「どうもこうもありませんよ?部下があらぬ疑いをかけられて殺されかけているのなら、守るのが上司の役目でしょう」


 カーリアの髪が、風により、ぶわりと広がる。


「少し功績を得た程度で図に乗りすぎじゃないかな?それに、あらぬ疑いだって?僕の話を聞いていなかったのかい?」


「ええ。聞いた上での判断です。そちらこそ、図に乗りすぎ、では?明らかに断定する証拠に欠けています。それに脱走と言いましたね?そんなもの、報告にはあがっていませんが」


 カーリアの言葉にうんざりとした表情を浮かべるアルザ。


「あーあー。その件は悪かったよ。それに、確かに客観的証拠には欠けるさ。魔族は人間を下に見すぎているから、今回の件と人間を結び付けようともしないんだろうし、この判断が下せるのは僕と……カーリア、君だけなんだ。分かってくれよ」


「なおさら賛同しかねます。本部の意に反した独断専行という訳ですよね。立派な謀反行為に思えますが」


「……フン。少し前まではせいぜいが中間管理職だった君が言うじゃないか」


 後方でタカ達が、え?そうだったの?とヒソヒソ会話を始めたのも意に介さずアルザは続ける。


「分かってるよねぇ?君程度の実力じゃあ僕に勝てないって事くらいは」


「謀反者の取り締まりは幹部の義務です」


「その幹部になれるよう、それとなく助け舟を出したのは誰だっけなぁ……はあ。全く、頭が固い子は嫌いだよ」


「その言葉そっくりそのままお返ししますが」


「えぇーと。カーリアちゃんこの場は任せて、俺ら逃げちゃってもいい?」


 タカの発言に、アルザが反応する。


「逃がす訳――」


「ええ。任せてください」


「チッ。残念だよ。カーリア。君は気に入っていた子だったのに」


「私も残念です」


 家から慌てて逃げていくタカ達にアルザが矢を放つが、あえなくカーリアに防がれる。


「……フン。まあいいさ。追跡はあの子達に任せるとして……僕は残念な後輩に、熱い指導をくれてやるとしよう」


 アルザの周囲に魔法陣が大量に出現する。


 時を同じくして、カーリアの周囲にも魔法陣が展開される。





 程なくして、家が倒壊した。

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