そろそろ集まれよ!十傑の森!
[十傑の集い(10)]
ガッテン:タカことタカフミ氏からラインでブロられたでござるの巻き
ほっぴー:草。俺もブロっとくわ
ガッテン:やめろや。なくぞ
ジーク:ワンって鳴いてそう
ガッテン:ここぞとばかりに反応するのやめーや。ラインの方返信しろや!揃いも揃って未読無視か?コラ
ほっぴー:なんかラインでお前と連絡取るの嫌でさ
ガッテン:火の玉直球ストレートやめぇや。え?何なの。俺嫌われてんの?
ジーク:ラインは敷居が高い
ガッテン:まあいいか。連絡取れるんならツイッターだろうと何だろうと構わん
タカ:ガッテンてめえ何本名バラしてんだ
ほっぴー:タカフミくんちっすwwwwwwwwwww
ジーク:タカの時点で本名モロやん
ガッテン:よし、俺が悪かった。一旦落ち着こうか
タカ:ホブゴブ練成なう
ガッテン:頼むから黙って
ほっぴー:アレ?もしかしてサービス継続してんの?ちょいPC付けてくる
ガッテン:もおおおおおお!!!
ジーク:牛かな?
タカ:宣言通り鳴いたな
紅羽:通知うるせえ
ガッテン:タカてめえ!お前場掻き乱す気しかねえだろ!もう頼むから黙って練成しててくれよ!
タカ:しょうがねえな。俺があと10体ホブゴブ作るまでに話終わらせとけよ
鳩貴族:ガッテン「合点承知」
ジーク:鳩貴族さんスベってますよ
「仕方ねぇな、作業に戻るか」
俺はツイッターの通知をオフにするとホブゴブを練成する作業に戻った。
「主殿。その……一体何ですかな、この大量のホブゴブリンは」
「お前の餌」
「……主殿。我輩は基本的に人間と同じ食事で生きていけるのです。なんせ我輩はそもそもが蝙蝠であるからして……」
「スキルの餌だっつの」
現状、蝙蝠屋敷の主は物理攻撃補正のスキルを所持していない。このスキルは物理前衛には必須と言っていいレベルのスキルであり、基本的にはこのスキルのレベルが火力のおおまかな指標となる。
「ホラ、はやくそこの“合成の魔方陣”の片割れに立て」
「う、うぅむ。敢えて口出しすまいとは思っていたのですがコレはまた複雑な陣を……」
「いいから早く」
「……御意」
この合成の魔方陣は俺がゴブリンの魔石を大方ホブゴブに変えた所で例の思い出しで描けるようになった魔方陣である。これを使う事で、魔物同士を混ぜスキルを付与したり鍛えたりする事が出来る。
「よし、ホブゴブA、陣の片割れに立て」
「グブッ」
俺の言葉に従い最初に作って進化させた個体であるホブゴブAが陣の上へ移動する。心なしか寂しそうな顔だが、正直そういうのは美少女になってから出直して欲しい。
「じゃ、合成」
そんな詠唱にしてはお粗末過ぎる言葉を口にすると、俺は陣へ魔力を流した。
「ォ……ォォォオオオオオオオオ!!!!」
叫ぶと魔物が寄り付きかねないのでやめてもらえますか。
ホブゴブAからどんどん漏れ出る光の玉のようなモノが蝙蝠屋敷の主に吸い寄せられていく。
「演出なっが」
そうポツリと俺が呟くと同時に、急に早送りのようにホブゴブAが光の塊になり蝙蝠屋敷の主にぶち込まれた。
「おぉう!?」
それと同時におっさんが嬌声をあげる。スキル付与くらいでいちいちやかましいおっさんだな。
俺はその作業を数回繰り返すと今度はホブゴブ同士を混ぜたホブゴブをおっさんに混ぜる等しつつ、順調にスキルを鍛えた。
「我輩、魂の磨耗を感じますぞ……」
「そんな仕様ねえから。ま、でも、疲れたんなら休め」
「うう、主殿は優しいのか鬼畜なのか……」
「慈悲の塊に決まってんだろ」
失敬な。こんなに休憩くれる上司とかなかなか居ないぞ。
「さて、もう一回ぐらい妹に電話しとくか」
何やら一段落着いたような雰囲気になっているが、蝙蝠屋敷の主……もうめんどくさいからおっさんで統一するか。おっさんが狩ってくる魔石の量を見るに、外はかなり危険な状態にあると言っていいだろう。俺のような、というか十傑のような特殊な例を除けば。
「もしもし?」
『お兄ちゃん?……ねえ、今どうなってるの』
「警察やら自衛隊が何とかしようと駆け回ってるみたいだな。まあ数日もすれば俺が迎えに行くからそれまで家に篭ってろ」
『私、怖いよ……』
かなり参ってるみたいだな。先程ツイッターのタイムラインをチラリと覗いたが、皆もどうやらコレがテロではない……いや、テロにしろ何か異常な、ともすれば世界がひっくり返りかねない事態が起きているという事に気付き始めたらしい。
「大丈夫だ。待っていれば鎮圧される」
……言っていて俺ですら説得力に欠けるなと思う。だが錯乱して妙な行動を取られても困るのだ。
『で、でも、さっき、二階の部屋にいたらね、変な緑色の化け物と窓越しに目が合って……そしたら、玄関のドアがドンドンって乱暴に叩かれて……私、私……』
ゴブリンか。
「そいつ等にドアを破る程の力は無い。じっと待っていれば何処かに行く筈だ」
薫には一度落ち着いて貰わなければならない。俺は一先ず気休めの言葉を吐きつつ、今後の予定を組み上げる。
しっかし、参ったな。目を付けられたか。一度向かって周囲のゴブリンを殲滅……間に合うか?
『で、でも、遠くの方で雄叫びが聞こえて……また聞こえて……段々、近づいてきてて……』
雄叫び、か……それに、近づいてきてるだと?それは……まずい。
「大丈夫だ、落ち着け。そういえば、お前が今居る友達の家って何処だ?ある程度騒ぎが収まったら迎えに行かなきゃならないし、教えてくれ」
レイドボス。聖樹の国の魔物使いでは様々な種類の物が居たが、共通して持っている特徴があった。それは、多数対一に耐えうる強大なタフネスを持ち、開戦時に上位者の咆哮、所謂雄叫びを発動し、一定以下のレベルのプレイヤー及び魔物に恐慌のバッドステータスを付与するという二つの特徴だ。
この街中にゴブリンが徘徊している様子を見るに、現在出現している可能性が高いのはゴブリンキングだろう。
ただ、幾ら初期と言えど、回復薬及び回復役が皆無な現状で、回避しまくって被弾したらギリ一発耐えて回復してまた攻撃、みたいなプレイスタイルの俺がレイドボスを相手取るのは不安しかない。
だが、俺には守れるかもしれない力があって、助けを必要とする家族が居る。ならば、行くしかない。
「おや?主殿、我輩を置いて何処へ行くつもりですかな?」
「お前じゃ勝てないヤツを殺りに行く。お前の初期装備の短剣を貸せ」
「……もしや、雄叫びの発生源ですかな?」
「ああ」
実の所、雄叫びは俺の方にも微かに聞こえていた。ただその時点で戦う気は無く、そもそもソレがゴブリンキングである保証すら無かった為スルーしていた。
だが今は違う。
「主殿が戦地に赴くのであればそれに追従するのが我輩の務めであるからして、我輩も……」
正直、短剣使いが二人居るとヘイト管理が滅茶苦茶になるのでソロでやらせて欲しいのだが……あ、いや、そもそも俺があっさり被弾して死ぬ可能性もある。妹の脱出とそれ以降の保護をおっさんに任せるというのはどうだろうか。
「分かった。ただお前はまだ雑魚だから手は出すな。これから向かう先に俺の妹がいるから、そいつを命を懸けて守れ。いいな?」
「……雑魚、ですかな?」
「ああ。だけど、“まだ”雑魚だ」
「ふぉっふぉ……御意に」
さあ、色々予定が狂ってしまったがレイドボスのソロ攻略と行こうか。