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過疎ゲーが現実化して萎えてます。  作者: ペリ一
本編

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335/339

変わらぬ日常


「じゃあまたなー」


「おー」


 下駄箱で部活に向かう友達に別れを告げ、校舎を出る。

 日差しが強いな。


「――に清き一票を!」


 校門を出ると、選挙の凱旋カーが走っていた。

 見たことのある顔だ。

 カーリアだったか? 駅前で演説しているのを見たことがある。


 何となく気分で帰る道を変えてみる。

 すると普段は気付かなかったものが目に入るようになった。

 この辺は選挙ポスターが多いな。


 “お代官様ファースト党”


 “お代官様第一! 他のやつは知りません”


「世も末だな」


 通るわけねぇだろ。

 そもそもお代官様って誰だよ。


 そんなこんなで家に着く。

 

「ただいまー……ん?」


 知らない靴があるな。

 薫の友達か?


「あ、お兄ちゃんおかえりー」


 リビングには薫と、赤いメッシュの入った同年代っぽいやつが居た。


「よ! 心臓どうなった?」


「……?」


 何が?

 俺が首を傾げていると赤メッシュが次第に怪訝な表情になっていく。


「は? 何? お前……嘘だろ?」


「ゆうちゃんどうしたの?」


「いや薫の方は分かるぜ? でもお前は覚えてないとダメだろ!?」


 急にお前呼び?

 最近の学生って荒れてんな。


「ほら、紅羽だって! 十傑のさ!」


「どうしたのゆうちゃん……そんな名前じゃないでしょ?」


 ああ、そういう系か。

 確かに年頃ではあるもんな。

 任せとけ、俺は理解ある兄だ。


「ああ! 前世からの盟友……みたいな、な!」


「てめぇ! ぶっ殺す!」


 ええ怖。

 俺は紅羽とやらを薫が羽交い絞めにして止めている隙に部屋へ戻った。


 宿題を机の上に置くだけ置いてベッドに寝そべる。

 スマホを開くと、ジークから連絡が入っていた。



ジーク:なぁ、とりあえず十傑で集まって飯でも行こうぜ



 ――また、十傑。


 頭が痛い。

 心臓と、あと両腕に違和感がある。

 俺が、忘れてるって?

 いったい何を?


「……」


 考え込んでいると、下で微かに鳴るチャイムの音に気付いた。

 両親がいない時間帯は妹じゃなく俺が応対することになっている。

 何かと物騒な世の中だからな。


 リビングを通り抜ける。

 紅羽が何か言いたそうな目をこちらに向けてきていたが……後で話すことにしよう。


「はいはい、っと」


 玄関の扉を開ける。

 そこに立っていたのは眼鏡をかけた大人しそうな印象を受ける女性。


「こんにちは。隣に引っ越してきたエリーです。ご挨拶の品を渡そうと思いまして」


「ああ、それはそれは。ご丁寧にどうも」


 そう言いながらエリーさんが花束を取り出す。

 なんだこれ。黒いし。なんか酸っぱい臭いもする。

 どういうセンスだよ。


「身体を過去のものに同調させすぎた弊害、ですかね」


「?」


 過去のもの?

 ピンとこないが、とりあえず思いついたことを言ってみる。


「あんたもその……十傑、的なやつか?」


「いいえ。では少し荒療治をしましょう」


 荒療治?

 俺がその言葉を理解するよりも早くエリーさんの腕が膨らむ。

 いや、全身が隆起し始める。


「え? は? いやいやいやいや」


 あっという間に巨大な怪……いや違うなこれ。

 土竜もぐら


「じゃあ今からこのまだローンが残ってる家壊しますね」


「お兄ちゃん何の音!?」


 薫が玄関から飛び出し、状況を見て絶句する。

 まずい、家もやべぇが俺らもやばい。

 何とか……何かできるのか?


「やれるだろ」


 落ち着いた声音だった。

 紅羽だ。

 何の心配もないような。いや、違うな。信用してるのか。


 俺を?


 どうして?


「散々理不尽な状況を何とかしてきたじゃねぇか。無茶苦茶な手使ってよ」


 ああ。

 そうだった気がする。

 

 羽音が聞こえた。

 這い出た蛆が羽化する。


「……え、そっち?」


 こいつらは使い切ったと思ってたが。

 そうか。

 過去に戻ったから居るのか。


 振り下ろされるエリーさんの手に蝿達が殺到する。

 そして——ぺちぺちと音を立てた。


「あちゃー」


 通じないみたいっすわ。


「いやあちゃーじゃなくて……ああクソ! 龍人回路ッ!」


 紅羽が熱波を放ちながら龍人へ変化する。

 即座に跳躍。拳でエリーさんの手を押し返した。


 衝撃で周囲の空気がビリビリと震える。


「ったく。初めてリアルで会った時もこんなんだったな!」


「あの時はこんなきめぇ蝿出してないけど」


「羽虫みてーなきめー逃げ方してただろ」


 言い過ぎ言い過ぎ。

 なんだ羽虫みてぇな逃げ方って。


 紅羽が地面に降りてくる。

 エリーさんも徐々に人間態に戻り始めた。


 まったく、マジでこいつら。


「荒療治すぎるだろ。家か俺がぶっ壊れたらどうする気だ」


「紅羽さんがいるのは知ってましたので。それに……あんな熱烈な愛の言葉を囁いておいて忘れるなんて。ちょっとだけ怒っちゃいました」


 エリーさんが歩いてくる。

 次は、その差し出してきた花束を受け取る。

 良いセンスだな。


「実は私も転移直後は記憶がぼんやりしていて。でも店先にあったその花で思い出したんです」


「……悪かったよ。もう二度と忘れない」


「ふふ。じゃあ、許します」


 そこで後ろの薫がうがーっと小さく叫び声をあげた。


「うわうわうわ! なんで!? ど、どういう世界!?」


 ああ、流石に思い出したか。

 そりゃ混乱するよなぁ。


「過去に転移したんだよ。まぁ他の世界ごとだから割と別世界にはなっちゃってるけどな」


「~~~ッ、色々言いたいことはあるけど! まずは……」


 うんうん。まずは?


「お兄ちゃん、そのキモい能力なに? 変な物拾わないでって、氷の時も言ったよね?」


 あっ。

 あー……っすね。

 

 説教か。初手で説教かぁ。

 俺の肩で、気まずそうに蝿どもが手を擦り合わせた。




タカ:というわけで思い出しましたいえーい


ジーク:やっぱ忘れてやがったわコイツ


紅羽:だりーわマジで。てか他のメンバーどうやって集める?


ジーク:スペルマンはちょうどツイッターでエロ絵がバズってたの見つけたからDM送ったわ


紅羽:ああそう。あとはガッテンって同じ名義でどっかのEスポーツチーム入ってなかったっけ?


タカ:そうじゃん。探すか


ジーク:頼むわー。他はどうすっかね



 【ガッテンが入室しました】



ガッテン:連絡とってくるの遅ぇよ! わざわざ匂わせ投稿してたのに!!!!!!


タカ:マジ? どれ?


ガッテン:ほらこの、「差し入れ頂きましたー!」つってお尻のラバーストラップ10個並べてるやつ


ジーク:あれって普通にウケ狙いにいってスベってただけじゃないんだ


紅羽:センシティブ設定で見れねー


タカ:こいつがこれ10個集めてる姿想像するときめーな



ガッテン:もおおおおおおおおおおお!!!!!!



タカ:久々聞いたな


ジーク:言うほど久々か?


紅羽:てかこいつのスベりツイートの話とかどうでもいいから他のメンバーとの連絡どうやって取るか考えようぜ


タカ:それなー


ガッテン:別に……スベってねーし……


ジーク:でもリツイート0でいいね数件だろ? でブクマが……9?


ガッテン:あれ?


ガッテン:ちょっと待ってDMきてるわ


 【スペルマンが入室しました】


 【ほっぴーが入室しました】


 【七色の悪魔が入室しました】


 【鳩貴族が入室しました】


 【お代官が入室しました】


 

 【Mortalが入室しました】



ほっぴー:クソ寒いツイート経由で来ました、よろしくお願いします


鳩貴族:ナイスジョークでしたね~


七色の悪魔:フハハハ! 前世、いや――何時ぞやの世界線振りと呼ぶべきか……盟友達よ!


ジーク:その路線まだ諦めてないんだ


七色の悪魔:せっかくやり直すチャンスを貰いましたので!


ジーク:崩れるの早いって


スペルマン:一度終わらせたはずの原稿が蘇ってて感動しました!感動しました!感動しました!感動しました!


タカ:メンタルが崩れちゃった人もおるみたいやね


スペルマン:締め切り的に前の世界線よりえげつないことになってて感動しました!感動しました!感動しました!!!!!! 紅羽氏、出版社教えるからドラゴンブレス吐いてきてよ


紅羽:お前ん家じゃダメ?


スペルマン:……紅羽くん、それは“アリ”だ


ほっぴー:無しだろ


鳩貴族:私だって終わらせたはずの仕事が再湧きしてて最悪でしたよ


七色の悪魔:あぁ……忌々しき再臨よ……


タカ:ほら、社会人勢は皆苦しんでる。でも皆我慢してる。大げさに言ってるのはお前だけ


スペルマン:ぱ、パワハラカス……


ほっぴー:俺も一回書いたはずのレポート書くのだるいし


ジーク:俺も一回捨てたはずの単位また捨てさせられるし


ほっぴー:そこはお前の努力次第だろうが、今からでも授業出て教授に泣きつきに行け


ジーク:んー いやっ!


ほっぴー:こいつ知らね、除籍になればいいのに


タカ:そういやアルザは?


ジーク:ああ、俺んとこいるよ


タカ:そすか…………


紅羽:ちなみにこいつエリーさんに思い出させてもらってたよ


ほっぴー:え、そもそも忘れてたん???


タカ:へへ


ジーク:じゃあ、あの俺らにこれから手に入れた天の石を全て譲渡するって宣言も忘れてたのか?


タカ:元々言ってねぇわぶっ飛ばすぞ




お代官:あの、歓談中申し訳ないのだが……


ほっぴー:おっ


ガッテン:なかなか喋らないなーとは思ってた


タカ:それで言うとモータルもな


ジーク:あいつはまぁ……今他のことしてんじゃね




お代官:選挙ポスターを……見たかね?



タカ:あっ


鳩貴族:アレは、まぁ、そうですね…………


七色の悪魔:面白過ぎて写真を撮ってしまいました、すみません


ガッテン:あれひでぇよな


お代官:……他の皆は?


紅羽:知らね


ほっぴー:あんま知らんかも。何の話?


ジーク:俺も知らなーい。つまりこの状況をまとめると……



ジーク: 他 の や つ は 知 り ま せ ん



タカ:知ってるじゃねぇか


ガッテン:さっそくいじりにいってるのやべぇって


お代官:…………


鳩貴族:すみません、職場で声をあげて笑ってしまったのですが


七色の悪魔:悪辣さに磨きがかかっていますね


ほっぴー:今検索して見てみたけどめちゃくちゃ面白いことになってんな。あとカーリアちゃん出馬してるの何?


紅羽:投票権ないの悔しいなー 絶対入れるのに


お代官:投票先でふざけるのはやめなさい


紅羽:いやでもこれ実質お代官さんが実権握る感じになるじゃん。砂漠の時見るに結構良いんじゃね?ってなるけど


お代官:いやぁ……うぅむ…………



Mortal:とりあえず今からお代官様ファースト党の事務所行こうと思ってるんだけど皆も来る?


お代官:!!!?!!?!?


タカ:いきなり書き込んだと思ったらお前さぁ 行くから早く住所教えろよ


ジーク:流石にナイスやね


ガッテン:ああクソ、ちょっと試合ドタキャンするわ


スペルマン:俺も行きます。明日の原稿はもっと進むよね、ハム太郎!


タカ:進まないのだ。人間はそんな短期間で成長しないのだ。へけっ


スペルマン:なんでそんなひどいこと言うの?


紅羽:っしゃータカが移動費奢ってくれるってさ


ジーク:マジ? 俺も俺も


タカ:死ね


ジーク:シンプル罵倒!?


鳩貴族:少し合流遅れます……


七色の悪魔:自分ももう少しかかりそうですね、急ぎますが


お代官:私は今すぐ準備して向かうが……皆距離がバラバラだからな……モータルくん、明日にできないかね?


Mortal:明日もいるよ多分


お代官:うむ! ダメだな! 今すぐ向かおう!



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― 新着の感想 ―
GM!!!!!!!!!!!!!!!生きてるよなゲーム前なら!!!!!!!!!!
10ケツは草、ガッテン当たり電車復活してるの忘れて飛んできたりしないかな
ポルノ撮影に興じていたカーリアちゃんが「清き一票を!」言っているのかと思うと笑う
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