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過疎ゲーが現実化して萎えてます。  作者: ペリ一
本編

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200/339

毒を以て

「タカさん。帰ってきてたんですね。そちらの方は?」


 想定内の質問だ。


「キプロスのとこの組員でね。ちょっと人材を引き抜けないかの相談だ」


「そうですか」


 これ以上、質問をする余地は与えない。


「ここはよく来るんですか?」


「ええ、まあ」


「この値段でこの雰囲気と料理の質はなかなかないですよ。もっと早く教えてくれれば良かったのに」


 冗談めかした動作でそう言う。

 だが、返事はない。


「……どうしました?」


「いえ、そのお連れの方、先ほどから一言も発しませんが。体調が優れないのではないですか?」


 まずいな。声でバレるか? いや、喋らせないよりマシか。それとも――。


「もういい。事情があるんじゃろう。タカよ。店の外で話そうか」


「構いませんが……食事はいいんですか?」


「ああ。もちろん、食事の後だ」


 スルーグさんとエリーさんが席から離れていく。

 店員の案内で、こちらから見えない席まで遠ざかってしまった。


「まいったな。どうする」


「どう、とは」


「バレてるぜ」


「でしょうね。私の分析ですが、先ほどの会話の段階でタカさんの方から事実を伝えるべきだったと思います」


「そうかぁ?」


「場所が場所なので、かなり手短にする必要がありましたが、それでもそうすべきだったかと」


 難易度高くない?

 後でいいつってんだから後でいいだろ。

 というより、そこまで分析してたなら自分で言えばいいものを……。


「私が発言した瞬間に激昂する可能性があったので控えていました」


「頭の中読むのほんとに気持ち悪いのでやめて」


「善処します」


 しないんだろうなぁ。


 その後、頼んだ肉と野菜の炒め物を完食してから、店の外に出た。



 冷涼な風が吹き抜ける。

 手を軽く擦り合わせながら待っていると、スルーグさん達が店から出てきた。


「スルーグさん。まずは俺から良いか?」


「構わないとも。横の害虫を駆除したらの話だが」


 俺のすぐ隣を、轟音と共に液状の腕が通り抜けた。


「ッ!?」


「想定内です。より激昂させる可能性を考慮しつつも発言します。タカさんの話を先に聞いた方が良いですよ」


 甲殻を展開しながら、ムカデ女が冷静な様子でそう口にする。


「タカの内部から妙な魔力が消え、魔女と瓜二つの貴様が現れた……その意味を理解できぬほど、耄碌してはおらぬッ!」


「こんな場所で大規模な戦闘を行うのは、お互いにとって損失ですよ」


「貴様を殺せばお釣りもくるというもの……!」


 最悪の展開だ。

 何が最悪かって、スルーグさんの思っているように、俺が洗脳されている可能性はゼロではないと俺自身が思えてしまうような状況な事だ。


「エリーさんッ!」


「……」


 エリーさんに向け手を伸ばす。

 かなり迷っている様子だ。

 

「タカ、さん」


「一旦止めてくれないか!」


「そ、れは……」


 エリーさんの表情が歪む。


 クソ、そうだよなぁ! 迷うよなぁ!?


「分かった! じゃあ、俺が止める! エリーさんは手出しせずに見ててくれ! 見てるだけでいい!」


 俺の剣幕に、エリーさんが頷いた。

 よぉし! ここでエリーさんから邪魔が入ると難易度が跳ね上がるからな!


 ……あの人は、魔女の事になるとああなってしまうが、本来は分別のつく人だ。


 短剣を構えつつ、叫ぶ。


「スルーグさんッ! こっちとしても手荒な真似はしたくないんだが! 一度落ち着いて話をさせてくれ!」


「そっちこそ落ち着けッ! あの容姿に声ッ! 我らの怨敵そのものだろうッ!」


「毒を以て毒を制すってやつだよッ! 魔女を殺すのに、その魔女の模造品が必要なんだ!」


「ははははッ、魔女が自ら、自分を殺しうる物を授けたとでも?」


 流れ弾の一つを避けながら、続ける。


「そういう事をする奴だろッ! 俺が説得した時の口上を思い出せ……ッ! 罠が仕込まれてるにせよ、そいつは使えるッ! まだだ、今殺すのは得策じゃない……ッ!」


 スルーグの動きに鈍りが生じる。


 その隙を縫うようにして甲殻が迫り――接触寸前で停止した。


「……クソッ」


「冷静になれたようで何よりです」


「その声で喋るな。貴様に説得されたわけではない」


 スルーグさんがムカデ女と俺に手をかざす。

 その瞬間、何かに包まれたような感覚が走る。


 隠密系の魔術をかけられたのだろうか。


「人が集まってきた。さっさと去るぞ」


 スルーグさんに言われるまま、俺達は飯屋街を後にした。






 術を施しているらしい路地に入り込む。

 しばらくして、スルーグさんが振り返って言った。


「で、なんじゃ。それは」


「俺の意志に従うように定義された人格、を核とした魔女の模造品……で、合ってるよな?」


「肯定します」


「……ふむ」


 スルーグさんがムカデ女を睨みつける。


「魔女と呼ぶにはあまりにも欠けた物が多い、か」


「魔女もたいがい欠けてる物が多いと思うが」


「違いないのぅ。じゃがな、ワシが言いたいことはそうではない。奴はもっと、こう……色々と混じっている」


 見た目からして別の生物の特徴をふんだんに取り込んでやがるからな。

 中身を見れたとしたら、そりゃあ恐ろしく混じり散らかしてるんだろうよ。


「ムカデ単体じゃ、魔女というには程遠いか」


 現状じゃ嘆きの母のフォルムチェンジに近いだろうな。


「むかで? あぁ、あの甲殻か。ついでに言うとお主と聖女の要素も僅かに入っとるぞ」


「最悪な字面だなぁ。やっぱ殺すか」


「感覚で生きとるのぅ」


 それ以外で強者に通用するものを持ってねぇからな。

 

「おい、ムカデ女」


「はい」


「お前さ、結局生きたいの?」


「分かりませんが、魔女は殺したいと思います」


「……ふーん」


 前とは違った解答だ。

 微妙だが、意志表明できただけ良しとしようか。

 俺がこう判断する事を見越して、ただ機械的に口にした可能性も高いが、そこはおいおい探っていこう。

 形から入るってのは大事だ。


「スルーグさん」


「はぁー……そうさな。一旦生かしておこう」


 よっしゃ。

 

「じゃが、状況次第ではタカ。お主ごと絶たせてもらうぞ」


 命を?

 いやー……それはそれは。


「善処します」


「……」


 んだよムカデ女。

 なんだその何か言いたげな視線は。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 200話おめでとうございます
[一言] タカの毒舌を以ってすればムカデ女の自我の獲得なんてあっという間ですねww
[良い点] 更新うれちい
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