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騙りと疑い

タカ:あの動画のせたツイート、バズって草


ほっぴー:お前有名人じゃんwwwwwwwwwwwwwwwww


タカ:それなwwwwwwwww通知止まらんwwwwwwwwwwwwww


ほっぴー:以上テンプレ会話劇場でした!解散!


ガッテン:やり口が汚すぎる


タカ:異世界に侵攻かけてきてる時点であっちの方が汚いんだよなぁ


ジーク:あれカーリア?


タカ:多分な


スペルマン:ほっぴーくんまだですか


ほっぴー:一般市民に見つかるとやべぇから必死に隠れつつ行ってんだよ!!!


スペルマン:ねぇドラドラ見えてきたんだけど。遺書書いた方が良い?


タカ:担当編集「そんな暇があったら原稿書けよ」


スペルマン:笑えない


ほっぴー:俺も見えたぞ!今行く!


スペルマン:ねえ惚れそう。ホモになっちゃう


ほっぴー:ええ……


ジーク:ドン引きされてて草












「魔王軍、ツイッターまでは把握してないみたいだな」


 俺は珍しく紅羽の家に入らせて貰っていた。というのも、軟禁生活と言っても差し支えないような生活を送っている妹と紅羽の両親に、少しでもストレスを緩和して貰うためのプレゼントを渡したかったのだ。


「みたいだな」


 もぐもぐとようかんを食いつつ紅羽が適当に頷く。

 その様子を両親と俺の妹である薫が困ったように見つめていた。


「あー、そうだ。ちょっとしたプレゼントがあるんですが」


「おう、そうだったそうだった。はやく呼べよ」


「……おーい、ポチ。入って来い」


 俺がそう玄関の方へ声をかけると、トタトタという音と共に俺の練成した魔狼が部屋に入ってきた。

 初日におっさんが間違えて狩ってきた魔狼の魔石から何となく惰性で練成した所、こういった使い道を思いついたのだ。ほら見ろ。もっふもっふだぞ。


「ポチ……?厳つ過ぎない……?」


 失敬な。ポチは芸だってできるんだぞ。ほら、ポチ。お手。


「爪えぐくない……?」


 そっかそっか。大丈夫だぞ。俺が後で手入れしてやる。

 俺がそう言った瞬間ポチの手がブルリと震えた気がしたが……気のせいだろう。


 ほーら、おすわり。いい子だなー。ポチ。後でハト食わせてやるからなー。


「餌ハトなの……?」


 注文の多い奴だな。紅羽の両親を見てみろ。ずっと笑顔のままこっちを見……気絶してる!?












 リビングに、お腹を撫でられご満悦の狼……犬の鳴き声が響く。


「わふっ、わふっ」


「慣れると意外に可愛いじゃん」


「そうね。可愛いわね。ありがとうね、薫ちゃんのお兄さん」


 いえいえ、このくらい当然ですよ。あと妹よ、最初から俺はそう言ってただろ。


「お兄ちゃんのプレゼンが下手すぎ」


 さいですか。次はうまくやります……


 若干肩を落としつつ倉庫へと戻った俺は、いつものようにグールのお腹に頭を乗せスマホを開いた。




タカ:ドラドラ倒せた?


ガッテン:個チャで様子聞いてたんだが今さっき本格的な戦闘に入ったみたい


タカ:じゃあもうちょいかかるか


ガッテン:負けるとは思わないのか?


タカ:おう。いざとなりゃ逃げ切るくらいの胆力はあるだろ。あんな攻略サイトが動いてないどころか存在してなかったような過疎ゲーを生き抜いた猛者やぞ


ジーク:何回か全滅したんだよなぁ


タカ:だいばくはつ


紅羽:てめえそれやめろつってんだろ


七色の悪魔:あのー、四国にお住みの方いらっしゃいますか


ジーク:え?


七色の悪魔:いえ。ただの確認です。今の流れなら流石に反応すると思いまして。個チャで詳しく伺っても?


ジーク:うーん。まあ、いいよ


ガッテン:意外にやり手じゃん……


タカ:ガッテンも少しは見習えよ


ガッテン:その前にお前はブロックを解除しろ



 なんだか眠くなってきたのでスマホをスリープモードにした後、俺もスリープモードへと移行した。












「あ、うーーう。ああー」


「いやちょっと勘弁して下さいよグールの姉貴。別に危害とか加えないですって」


「がるるるるる……」


 お腹のぷるぷるとした振動で起きた。何これ寝起き超スッキリ。今度からこの方法で起こして貰うか。


「あ、起きた。師匠、何とかして下さいよ……」


「盗賊か!?帰ってくれ!」


「悪ノリしだすの勘弁して下さい……」


 とうとう涙目になりだしたマサルをどうどう、とおさめる。


「避難所の様子はどうだった?」


「……星野」


「うッス。避難所の様子ッスけど、はっきり言ってあまり良い様子では無かったッス」


「と、言うと?」


「食料が行き届いてないんじゃないッスかね。俺が入り口で喋ってる最中、奥の方で食べ物をねだる子供の声と、それを怒鳴って追い返す声が聞こえたッスから」


「それがパフォーマンスの可能性は?」


 俺の言葉に驚いたように固まるベガ。おいおい、そのくらい疑わないとすぐに食いもんにされちまうぞ?大丈夫か?


「……無い、と思うッス。現場の空気からしてピリついてたッスし……」


「うーん」


 さて、な。人間、追い込まれりゃ意外と色々とこなせるもんだ。一世一代の詐欺ともなりゃ、そりゃあ気合の入った演技をするぜ。


「師匠は、救いたくないんスか?」


 救いたいね。自分――いや、仲間と家族に被害が無い限りは。


「……」


 その仲間にはお前らも入ってる。……意外か?


「……意外、ッスね。正直」


「おい!星野!い、いや、すまんな、コイツ、歯に衣着せぬ物言いするタイプっつーか」


 構わない。ただな、これだけは忘れるなよ。俺はお前達を、避難所支援の為に育てた。

 ただ本当の意味で救うには手順が要るんだよ。考え無しに物資を与えたところでそれはその場しのぎにすぎない。本当に救う気があるのならもっと接触を図って相手を知らなきゃいけない。


「それまで物資は、渡すな」


「……ッス」


「わかった」


 少し納得がいってないみたいだな。しっかし、食料か。そんなに不足するもんかね。


「フェアリーの仕業みたいッスね。ゴブリンは俺達がかなり減らしたから被害は減ったッスけど。フェアリーはそう簡単に狩れないから厳しいッス。一度食料庫から直接盗られた事もあるみたいッス」


「……じゃあ。やるか」


「……何をッスか?」


 決まってんだろ。フェアリー狩りだ。そろそろ俺もやりたい時期でな。
















――ピチャン。


 水の、はねる音。本来無かった筈の洞窟。


 その奥に、ソレは居た。


 フェアリーの運んできた食料。だがまだ、ソレが満足するには足りなかった。否、足りな過ぎた。


「オオ_____ッ!」


 上位者にふさわしい雄たけびをあげて、ソレは街へと繰り出しつつあった。




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