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対談

「座敷牢の居心地はどうだ、タカ」


「ええ、まぁ……はい」


「ハッキリと言え」


「家具がオーク規格なのでそこがちょっと。仕方ないことなのは承知の上ですが」


「ああ、うむ……我慢しろ」


「はい」


 そして会話が途切れる。


 ……

 …………


「メッセンジャーのあの男……シュウトだったか。なかなか戻ってこないが」


「人間の脚の速さには限界があるので」


 まだ領域に戻れてすらいないんじゃないかな。

 いや、モータルには会えたから情報はいってる……よな?アイツ逃げたりしてねぇよな?


「……うむ」


 

 ……あの。

 気まずいんですけど。


「さっきから何が目的なんですか」


「……」


 オークエンペラーは目蓋を閉じ深く息を吐いた。


「話せば少しはお前のことが分かるかと思ったが……ダメだな。コミュニケーションの機会に乏しい環境にいたせいなのか、お前がどうかしてるのか」


「機会に乏しかったせいですね」


「即答だな」


 そらそうよ。


「お前は、ここを国として認めると言ったな。そして我々オークをケダモノではなく種族の一つとして認めるとも」


「え?」


「あ?」


 いやちょっと待て。意味がよく分からなかった。

 んな事言ったっけか?


「オークって種族じゃないんですか?」


「……こんな歪な存在を種族と、いや、生物と呼べるか?」


 んん?あー、そうか。思い出した。確かに俺は種族として認める、と言った。

 ただそもそも種族として見てないとかは無かった。人権的なサムシングを与えますよ的な意味で言ったんだが伝わらなかったのか……?

 いや違うな。もっと初歩の段階の「認める」だと思ってる?

 ……こりゃ好感度稼ぎチャンスかもしれん。


「はあ。仮に生物じゃないとすれば何なんですか」


 俺の発言を受けたオークエンペラーが黙りこくったまま動かなくなる。


 こいつよく分かんねぇな。

 てかオークでも生物であることに疑いの持ちようはなくないか?そりゃコイツの種族がゾンビかなにかなら生物かどうか迷っただろうが……


 ゾンビ……ああ、そういやバンシーちゃんは生物なのか?

 いやでもバンシーちゃんはマジあうあうだし生物だな。間違いない。あうあう……


 そんな事を考える合間があってもまだオークエンペラーは動かなかった。


「あの。そもそも生物の定義の擦り合わせからやった方がまだ建設的な話ができるかと」


「いや、いい。すまないな。この知性はしょせん貰い物だからまだ馴染み切れていない」


 貰い物?……ギフト、か?


「貰ったってのは、聖樹から?」


「ああ。知識と知性。それが我の貰った物だ」


 ふむ。

 ……ちょっと待てよ?


「それまでは何をしてた?」


「敬語が崩れているぞ」


 やっべ。


「し、失礼しました」


「いやいい。ただでさえぎこちない会話だ。気楽にやれ」


「……分かった」


 今まで違和感を抱かなかったがオークが何故日本語を……ああいやでも……


「単なるオークキングだ。唸り、兵を突撃させるしか能の無い、な」


「言語を持っていなかった?」


「然り」


 ってことは、だ。


「聖樹が日本語を教えた?」


「ニホン?」


 それは知らんのかい。


「知らんが、魔族や人間が使う言語と相違ないのではないのか?日本語という名称は聞き覚えがないが」


「……そうか」


 なんかすっげぇ重要な情報発掘しちまった気がするぞ。

 聖樹が日本語を教えた?何のために?なんでわざわざ日本語なんだ?


「何やら悩んでいるようだが」


「色々と衝撃的でな。ああクソ、掲示板魔法使いてぇ……」


「掲示板魔法とはなんだ」


「文字使って遠隔で会話ができる魔法だ。何を言うか把握できんだろうし流石に使わせてはくれないんだろ?」


「いや構わぬが」


「だよねぇ……え?」


「確かに我は文字を知らん」


「ちょっと待って」


 言語だけで文字は教えてもらえてない?ならなんで向こうの人間は日本語を文字まで知ってた?

 ……いや待てそういや魔族達は言語が日本語のくせに文字は違ったよな。

 オークと同じで言語だけをギフトで得た?

 

「……オーケー、オーケー。もろもろ把握したし掲示板魔法使えるってんならそれに越したことはないわな」


「ふむ。では我はそろそろケアに行かねばならんのでな」


「ケア?」


「人間の、メスだ」


「……」


 クソッ、そうなんだよな。そこがネックだ。


「言いたい事は分かるが、ここを譲るわけにはいかん。我々オークはメスがいない」


 ……歪つってたのはそういう事か?

 確かに生物としちゃちと歪な生態だが。


「……ケアってことは丁重に扱ってるのか」


 だからと言って許す気にはなれないが……


「壊れてしまってはこちらが困る。代わりに繁殖のペースが落ちはするが……長期的に見れば丁重に扱う方がより多くの――」


「いや、いい。その辺でやめてくれ」


「そうか。では、また」


 オークエンペラーはそう言うと俺に背を向け部屋を後にした。


 種族の壁は厚い、な。

 俺はオークエンペラーが出て行った扉を横目で睨みつつも掲示板を起動した。



タカ:よう


ほっぴー:!?


ガッテン:はあ!?なんで!?


Mortal:タカ!


ジーク:うわやっべ


ジーク:ちょっと百件ぐらい「あ」って連投していいか


ほっぴー:ログを埋めようとするな


タカ:マジか漁ってこよ


ジーク:あ


ジーク:あ



ほっぴー:二個だけでいいの?


砂漠の女王:お代官様のログまで埋められたくないので、書き込みを制限しました


砂漠の女王:まぁあの部分は別場所にもしっかり保存していますが


タカ:おいジークてめぇログ見たぞ


タカ:ただ今はそれどころじゃねぇから一旦置いとく


砂漠の女王:では書き込み制限を解除しますね?


ジーク:ふう


ジーク:そのまま忘れてくれると助かる


タカ:絶対に忘れてやらん


ほっぴー:ところで、今度はどんな手をつかって生かしてもらってんだ?


タカ:ここを一つの国として周囲に認めさせてやるって言った


ほっぴー:は?


ジーク:売国奴じゃん


ガッテン:ウッソだろお前


七色の悪魔:私以上の悪魔ロールやるのやめてもらえませんか


ほっぴー:草


ジーク:対価に寿命要求してそう


タカ:してねぇわ


タカ:いやまぁ確かにある種俺の寿命の延長を要求した感じだけど


タカ:てかこれが伝わってないってことは……あの野郎……


タカ:まぁそれは一旦置いといて、だ。とにかく、ここを国として認めてくれないと俺の命がヤバい


砂漠の女王:はあ


砂漠の女王:オークはオスしかいない、悪意から生み出されたような醜い怪物ですよ?


タカ:思ったんだが


タカ:人間じゃなきゃダメなのか?


タカ:それこそ豚とかで代用できないのか?


砂漠の女王:それは分かりませんけど


ガッテン:馬鹿にされた、って怒るんじゃねぇのか


ほっぴー:いや、待て。あいつらは豚を知らんわけだし貴方方の為に作った動物です、みたいな事を言えばいける……か?


タカ:あっ


ほっぴー:どした


タカ:いや豚のこと知ってるかもしれん


ほっぴー:なんでだよ


タカ:そうだよ、重要な情報があってな


ガッテン:お?


鳩貴族:ほう?


タカ:オークエンペラーはギフト持ちだ


タカ:そしてそのギフトは知性、知識、そして言語


タカ:てか俺がオークエンペラーと会話が成立してる時点で気付いてもいいと思うが


ほっぴー:ちょっと待て


鳩貴族:もしや


鳩貴族:その言語とは、日本語?


タカ:はい正解


ガッテン:はあ!?


ほっぴー:えーっと、ということはどういう事だ?


鳩貴族:ふむ


鳩貴族:「聖樹、或いはそれを操る存在は日本語を知っている」


鳩貴族:ということですかね?


ジーク:とびっきりのダジャレ言うのかと思ってドキドキしちゃった


鳩貴族:新作のダジャレなら定期的に個チャで教えてるじゃないですか


ほっぴー:そんな事されてんのかよ


タカ:新手の拷問かな?


ジーク:今度からタカの個チャにコピペして送るね


タカ:やめろ


鳩貴族:遠慮しなくていいですよ。囚われの身では娯楽に乏しいでしょう


タカ:いやー!意外と楽しみもあるっていうか!ね!


タカ:あっ、将棋あるじゃんこの部屋!いやー、楽しめちゃうなーこれは!


タカ:将棋!!?!?!?!!!?!?!?!?なんで!?!?!!!?!?!?


ほっぴー:草


ジーク:流れるように大発見をするな




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― 新着の感想 ―
[一言] そういえばこのオークエンペラーが聖樹から得たギフトは知識と知性で、ギフトは呪術と同じ法の書き換えな訳だから、オークエンペラーの近くにいるオークたちはその影響で知能が上がっている?
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