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ただのおっさんなんだが、自称伝説の古龍(美少女)にからまれて困っている  作者: 木野二九
【第二部】 闇は無慈悲な真夜中の女神 ~Prologue~
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父親としての優しい愛

少女は疲れからか…… その後、倒れるように眠りについた。

やすらかな寝息を確認して、俺はシーツをかけると。


「しばらくは眠っているだろうが、もう容態は落ち着いてる。

目が覚めたら、なにか食事でもとらせれば大丈夫だ」

不思議な格好で倒れ込んだままの2人にそう説明した。


「そうですか…… では、行きましょうか」

シスターがポツリとそうもらすと。


「そ、そうじゃな。うむ、そうしよう」

リリーがそれに頷き。


――俺は2人に引きずられるように、聖堂まで連行され。

懺悔室に監禁された。



「聖ラズロットの名のもとに……

ウソ偽りなく話し、悔い改め、2度と繰り返さないと誓うのであれば。

――その罪を許しましょう」


シスターの静かな声が、小窓の格子ごしに聞こえてきたが。

そっちが司祭の入る部屋じゃないんだろうか?


「いったい何のことだ?」

俺が聞き返すと。


「罪は罪です、ちゃんと素直に話してください!」


「そうじゃ、素直に言えば我もそこまで怒りはせん。過去のあやまちなら、広い心で許してやっても良い」


シスターとリリーの声が聞こえるってことは、あの狭い部屋に2人でいるってことか。まったく、暑苦しくないんだろうか?


「何が言いたいか想像はつくが、それは誤解だ。

そもそも、そう言う関係ではなかったし。

あの子の歳なら…… 12~13年前は、帝都で冒険者をしていた。

メリーザとは会うことすらなかった」

俺がため息交じりにそう言うと。


「エロシスターよ、どう思う?」

「リリー様、困りましたわ…… ここではウソかどうか。

あたしの能力じゃ、判断できません」

2人のコソコソ話が聞こえてきて。


「うむー、それでは異端審問に切り替える!」

リリーが妙なことを叫んだ。


「おいおい、そんなものはもう教会ではやらないし。

俺は賢者会出身だが教義は守ってる、異端じゃない」


その昔、教義から外れた罪を犯す者への宗教裁判として。

そんなことがあったらしいが……

――今ではもう教会の黒歴史だ。


俺があきれていると、ドカドカと2人が移動する音が聞こえ。

懺悔室のドアが強引に開き、シスター・ケイトが乗り込んできた。


「ディーン様、あたしの目を見てちゃんと答えてください!

その、えーっと。あの子のお母さんとは…… やっ、や、や」


俺の膝の上に手をつき、二の腕で胸をはさみ込むようなポーズで顔を近付けてきたと思ったら。そこまで言うと。

恥ずかしくなったのか、顔を赤らめ。シスターは自分から視線を外した。


うん、もうその『きゃみそーる』からこぼれそうな巨乳しか見えませんが……


「さっきも言っただろう、やましいことなんかしてない。

なぜあの子がそんなふうに俺を呼んだのか。 ――こっちが聞きたいぐらいだ」


俺がそう言うと、シスターは懺悔室から出て。

俺の頭上を確認した後、リリーの顔を見た。


「で、どうじゃ? なにが見える」

「そのー、リリー様。なんだかピンクい感じが、もわっと。

欲情しているということは、やっぱり……」


「阿呆! エロシスターよ、ここで下僕を誘惑してどうするつもりじゃ」

「えっ? そんなつもりはないんですが」

「仕方ない。なら、我が代わりに問い詰めよう! よく見ておれ」


2人でまた妙な会話をしていたが。

リリーが俺の前まで来て。


「下僕よ! 主はあの娘の父親なのか?

やったのかやってないのか。男らしく白状せい!」

片手を腰に当て、空いた方の手で俺を指さした。


「リリー、人を指さしちゃいけないし。

年頃の女の子が『やったやらない』なんて、大声で叫んじゃダメだ」

俺がリリーを注意すると。


クルリと振り返り。

「エロシスターよ、どうじゃ?」

リリーはシスター・ケイトに問いかけた。


「はい、父親としての優しい愛が見えます」

「と言うことは…… やはり、あの娘は」


「リリー様、それは違うと思いますが」

シスターが微笑みながらそう言うと、リリーは不思議そうな顔をした。


「らちがあかんな」「そうですね……」

そして2人が同時に首をかしげる。


なんだろうコレ? 新手のコントか何かだろうか。



俺はため息をつきながら……

――閉じ込められた懺悔室から、脱出した。



++ ++ ++ ++ ++



昼食の準備が終わる頃に、少女は目を覚ました。

もう自分で立って歩けると言うので、食堂でいっしょにテーブルを囲む。


「あたしの名前はジュリエッタって言います。お母さんや友達はジュリーって呼んでますから。お父さんもそう呼んでください」


ジュリーはそうとうお腹が減っていたみたいで。

シスターが並べてゆく皿に片っ端から手を付けていた。


「ジュリーとやら、もぐ。主は、もぐもぐ。どこから来たのじゃ、もぐ」

「あたしは、もぐもぐ。サインロードって村、もぐ、から来ました」

競争するようにリリーも食べ始め。


「そんなに急がなくても、たくさん作りましたから。2人とも、ゆっくりと召しあがってください」

シスターが慌てて料理を並べている。


「シスターの言う通りだ、とにかく落ち着きなさい」

俺がそう言うと。


「はい、お父さん」

ジュリーは嬉しそうにそう言って。

背筋を伸ばし、ゆっくりとスプーンを動かし始めた。


素直に言う事を聞いてくれるのは嬉しいが…… 何故か急に老けたような気がするのは、なぜだろうか?


「サインロードなら、ここから馬車で3刻ほどだが。

――ジュリーはどうやってここまで来たんだ?

それから、いったい何が起きたんだ?」

サイクロンの中心街から南東に進んだその村は、魔族領との境にあるボールブ山脈のふもとにあり。


さらに山沿いを馬車で1日下ると、賢者会『東の学び舎』に行くことができる。

うろ覚えだがメリーザの生まれが、その村だった。


「昨夜、村が魔物に襲われて…… あたしはなんとか逃げのびることができたんで。昨夜からずっと歩いて。

お父さんが最近、サイクロンの教会の司祭になったって噂を聞いてたから。急いでここまで来たんです」


急に昨夜のことを思い出したのか、少し震えはじめたジュリーの肩を。

シスターが、そっと支えるように抱きとめた。


「ジュリーちゃん、安心して!

優しいお父さんが、ちゃんと助けてくれるから」


「うむ! ジュリーとやら。

その男の下半身は信用できんことが分かったが、多少は頼れるヤツじゃ。

我も力になってやるから、心配するでない!」


2人の言葉を受けて、微笑むジュリーは愛らしかったが。その横で俺を冷ややかに睨む2人の視線は、とても恐ろしく見えた。


「まずは詳しく事情を話してくれ。その後、サインロードに向かうとしよう」

俺は3人の視線を同時に受け止めながら。



はたして生きて帰れるかどうか……

――いろんな意味で不安になってきた。



++ ++ ++ ++ ++



食事が終わって直ぐ、通信魔法板でお嬢様に連絡を入れた。


この教会の領の管理担当者は彼女だし、サインロードはサイクロン領だ。教会を数日空けるかもしれないし、魔物の襲撃から領民を守るのも領主の仕事になる。


1コールで出てくれたお嬢様に、ジュリーから聞いた詳細を話すと。


「そう、ここ数年山脈を越えて魔物が襲撃に来ることがなかったけど。

辺境警備兵は山脈沿いに常駐してるから、連絡してみるわ。

それから、あなたもサインロードに行くの?」


「サインロードに昔の馴染みがいるようだし、助けを求めてきたのはその娘だ。

放っておくわけにはいかんだろう。

――それに、いやな予感がしてならない」


ジュリーの話だと、村を襲ったのは知能の高い魔物だ。計画的に村を孤立させ、そこを拠点として何かをたくらんでいる可能性が高い。


「じゃあ、領主城からも対魔物の部隊を出すわ。

陣頭指揮はあたしがとる。ねえでも、今から向かったら現地につくのは夜よ。

どうするの?」


セオリーでは魔物との戦いは昼を選ぶ。夜目が利き、夜の魔力を味方にするやつらと戦うには、不利な時間になるからだ。


「昨夜村を襲って、村人たちを教会に集めたそうだ。

なら、今晩までは生きている可能性は高いが…… 明日は、難しい」


日が落ちれば、やつらは何かの準備と。

――選別と食事を始めるだろう。


「そうね…… 分かったわ、半刻ほど待ってて。

馬車を準備して、そっちに行くから」


お嬢様との会話を、3人に説明し。

ついて行くと言ってきかない、リリーとジュリーを説得していたら。


「ディーン! ついたわよ」

指揮官服を着こなしたお嬢様が、さっそうと食堂に飛び込んできた。


ジュリーが俺の背に、そっと隠れたので。

「紹介するよ、こちらはイザベラ・プレセディアさん。この教会の責任者のひとりで、領主の御息女だ。今回魔物討伐の陣頭指揮も執ってくれる」

そう言って、お嬢様の前に立たせると。


「宜しくお願いします」

ジュリーはペコリと頭を下げた。


「この子がサインロードから助けを求めてきたんだ」

俺がお嬢様に紹介すると。


「なかなか可愛い子ね」

お嬢様はジュリーに笑いかけた。


「イザベラ様も、お父さんも。

……どうかお母さんと村の人を、助けてください」

ジュリーがもう一度、祈るように頭を下げたら。


「お、おとうさん?」

お嬢様がそう呟き、シスターとリリーを見た。

2人が同時に、ゆっくりと首を振ると。


「申し遅れました。

あたしディーン・アルペジオの娘で、ジュリエッタと言います」

ジュリーがそう言って、お嬢様に微笑みかける。


その言葉に。

「む、む、むすめ……」

お嬢様は、リリーやシスターがやったのと同じ格好で。

崩れ落ちるように倒れた。


それ、流行ってるのか?



俺は、微妙な不安を飲み込んで……

――心の中でクールにため息をついた。

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