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鬼畜ですね

素早い行動が功を成したのか…… まあ、『どげざ』だが。


それ以上責められることも無く、どうしてそんな通信をしたのか。俺の話をちゃんと聞いてくれた。


室内に大きなため息が充満すると。

「つまり盗聴を回避して、人を集めるためにあんなこと言ったのね」

お嬢様が、疲れたようにそう言う。


「皆には悪かったが、結果時間稼ぎもできたようだし。

こうやって集まることもできた。 ――どうか許してほしい」


おもむろに顔を上げると。ルイーズのスラリとした太ももがあった。

どうやら警護するように、俺の前に立っていたようで。


態勢からどうしても……

その短いスカートの中身が見えてしまう。


躍動感あふれるスラリとした脚の付け根には、引き締まった上向きのお尻があり。

黒いレースのパンツが、それを引き立てていた。


「ねえ、なに見てるの?」

ドカドカと勢いよく歩いてきたピンクのふりふりパンツ……

じゃなくてお嬢様が、俺の頭を踏む。


片脚を大きく上げるから、なんか凄い光景だ。

しかも片手には、さっき隠したムチが握られている。


なんとかお嬢様をなだめようとして考えていたら。


ルウルが後ろから、そっと抱きしめるようにおおいかぶさってきた。

ムニュっと押し付けられた胸に、さらに身動きがとれなくなる。


「お嬢様、そのへんで止めとけよ……

ちょうど良く切れそうな短刀があるから、この駄犬はあたいが去勢しとく。

ディーン安心しろ、痛いのは一瞬だから!」


とてもマジメな顔つきのルウルが……

――短刀を、鞘から抜こうとしていた。



お嬢様の妙になれたムチさばきを避けながら、短刀を抜こうとするルウルを取り押さえていたら。


「おや、お取込み中でしたか? ではまた後で」

ライアンが一度部屋に入って、薄ら笑いを残して出て行こうとしたので。


「ちょうどいい、お前にも相談にのってほしかったんだ!」

大声で叫んだら。


――なんとかお嬢様もルウルも大人しくなってくれた。


ライアンはぐるりと部屋を見回し。

「しかし、色恋沙汰はどうも苦手でして。ディーン様のご相談にのれるかどうか。あまり自信がありませんが」

と、申し訳なさそうに呟く。


「そうじゃなくて、お前がここに来たってことは。

帝国の軍部が動いたってことだろ。こっちも話しておきたいことがあるしな」

なんとかそう言うと。


「ああ、そちらの件ですね。 ――分かりました」

ライアンが、楽しそうに笑いながら頷く。


少し離れた場所で騒ぎを見ていたシスター・ケイトに。

「サラを呼んできてくれないか」

そう頼む。

彼女は俺をジッと睨んでから。無言でコクリと頷いて、部屋を出てゆく。


これでようやく作戦会議ができると、ため息をついたら。

リリーがそっと近付いてきて、耳打ちした。


「下僕よ! いいかげん、その犬娘の乳から手を離したらどうじゃ」

慌てて手を離したが、ルウルは真っ赤な顔のまま動かない。


暴れるのを取り押さえているときは、気付かなかったが。

今になって、その胸の感触が手によみがえる。

やっぱり…… ブラジャーしてないですよね。


「す、すまない。わざとじゃないんだ……」

動揺した俺の頭と、リリーの顔が、かるくぶつかってしまう。


「なにをするんじゃ、阿呆が!」

ぶつかった口を押えて、てれたように抗議するリリーを見て。


シスター・エラーンが、ポツリと呟いた。

「さ、さすがですね、有言実行です。 ……鬼畜ですね」


いや、それは多分……

――違うと思うのだが。



サラがシスター・ケイトに連れられて、部屋に入ると。シスター・エラーンの顔を見て、ペコリと頭を下げ。


「ケイト様からお話は伺いました。ブラウンモールのクレッグ司祭が危険だって。

――あたし、そんなことになるなんて、思わなくって」

そう言って、身体を震わせた。


隣に立っていたシスター・ケイトが、サラを優しく抱き留める。


「誰もキミを責めたりしない。だから、なにがあったのか正直に話してほしい」

俺がそう言うと、サラは。


「ディーン様、お願いです! クレッグ司祭を、ブラウンモールの教会のみんなを…… 助けてください!」

そう叫んで、祈るように俺を見つめる。



だから俺は……

「その願い、司祭として全力をつくそう」

――そう、クールに答えた。



++ ++ ++ ++ ++



「始まりは、修道院で見た夢なんです」

サラの話を要約すると。


枕元にラズロットを名乗る男があらわれ、サラが『聖者候補』であること。聖国が危険にさらされていること。それを守るにはブラウンモールと帝都の教会にある『秘宝』を取り出さなくてはいけないこと。


それらをお告げとして聞いたという。


夢の導きどおりに修道院を抜け出すと。

「偶然」壊れた柵が見付かり。

そこを抜けると「偶然」ブラウンモール行きの馬車に出くわし。

なんの問題もなく、ブラウンモールの教会までたどり着くことができたそうだ。


「そこでクレッグ司祭様に事情をお話しました。

司祭様は、初めはあたしの話を信じてくれませんでしたが。

お告げにあった呪文を唱え、秘宝のひとつ『アイギス』を教会の鏡から抜きだすと。やっと信じてくれて、帝都までの列車のチケットを用意してくれました」


そして帝都について、教会を訪ねたが…… 入ることができなかったそうだ。


「あの短刀の妖魔があらわれてから、ディーン司祭が教会を訪れるまで。

教会にはだれひとり来る者はおりませんでしたから。

なんらかの呪術がかかっていたんでしょう」

ハンドリーさんがそう呟き、視線が俺に集中した。


「ちょっと入りずらいな、とは。思ったんだが」


言い訳がましくそう答えたら。また室内にため息が充満した。


「そうですか…… でも、お告げの解呪方法は日にちが決まっていて。

その日にその数字を入力しないと呪いは解けないと言ってましたし」

サラが残念そうに、そう言うので。


「それなら大丈夫だ、そこにある短刀が多分それだろう」

ルウルが持っている短刀を指さしてから。


「ちなみにお告げの数字は?」

サラに聞いてみると、8つの数字を答えたので。


逆算して。

「それは1月以上前の日付だな……」

そう答えたら、サラはおどろきの表情に変わった。


確認のため俺がリリーの顔を見ると、残念そうに首を横に振り。

「ラズロットもそこまで阿呆ではない。秘宝とやらには心当たりがあるが、そんなものは今回の聖国の危機とは無関係じゃし。

だいいちあの阿呆は…… 誰かにベラベラしゃべって、任せるようなこともせん。

そもそも下僕にとりつくまでは、まともに話すこともできなんだはずじゃ。

どこかに偽物がおって、何かをたくらんでおるのじゃろう」


サラはその話を聞いて。


「ええ、たぶんその通りなんでしょう。

あたしが違和感に気付いたのは、帝都に着いてからなんですが……

アイギスは既に力を失い、あたしから離れなくなりましたし。

さきほどのお話の通り、帝都の教会には入ることもできませんでした」


そして途方に暮れていると。

「またお告げがあって、ここで働くようにと」

悲しそうに、そう呟いた。


「まずはその、取れなくなったアイギスを見せてくれないか?

伝承が正しければ、サラが危険だ。

術者の聖力(ホーリー)を吸い続けて、力を維持するそうだからな」


俺がそう言うと、サラは少し悩んでから……

なぜか上着を脱ぎ始めた。


「あっ! こら、見ちゃダメ」

お嬢様が慌ててサラに近付き。

シスター・ケイトとナタリー司教が輪になって、サラを取り囲んだ。


「まあ、こんな形で…… つらかったでしょう」

シスター・ケイトが、心配そうに呟き。


「これは…… アイギスで間違いないですね」

ナタリー司教が、『真贋』で確認し。


「どうゆうこと? あ、あたしより大きいわ……」

お嬢様がなにかにおどろいていた。


「俺ならそいつを外せるが。 ――手で触れないと、不可能だ。

どうすればいい?」


女性陣が悩むように唸ると。

「なら、あたいがこいつの目を塞ぐから。そのスキに、解呪すればいい」

ルウルが俺の後ろに立って、手をワキワキさせた。


「また目に指を突っ込まないでくれよ」



俺が念を押すと……

――やっぱりルウルは、俺の目に指を突っ込んだ。



++ ++ ++ ++ ++



痛みを我慢して、ムニョンとしたなにかから「それ」を。

アンティーク・ウィスパーで解除する。


カタリとなにかが落ちる音がすると。


「さあ、今のうちに服を着てください」

「魔力的な残滓もないわね、安心して」

「なに、この大きなブラジャー? あなた、あたしより年下よね」


女性陣の声が聞こえたが……

とりあえず最後の一言は、聞かなかったことにしよう。


ルウルがやっと手を離してくれたので、一息つくと。


「だいたいのことは理解できました。

ディーン様、西壁騎士団が不穏な動きをはじめましたし。

南壁騎士団も駅の包囲を開始したようです。

この件は、帝国が絡んでいるとみて間違いないですね。

――我々北壁騎士隊には、何の連絡もありませんでしたが」


ライアンが薄笑いを浮かべて、そう言った。


「騎士団を動かすことができるのは、皇帝や宰相を除くと。

どんな奴が考えられる」


俺の質問に。

「確かにそのお2人でしたら、我々を飛ばすことはないでしょうね。

考えられるのは…… 公爵クラスの政治的権力を持った人物。

例えば、こちらの伯爵家のご夫人や。

あるいは、直接、軍に信頼と実権を持った人物。

――勇者一行も、可能でしょう」

そう答えると。ライアンは窓の外を、そっと眺めた。


お嬢様が息を飲み、ルウルの目に怒りの炎がともったが。

誰かがしゃべり出す前に、軍勢の足音がここまでとどいてきた。


「どっちにしても、悠長にはしてられそうにないな」

俺は立ち上がって、ライアンの横に並び。


パンツを見たりおっぱいを揉んだりしてる暇はなかったと。

少しだけ、後悔しながら。



心の中でクールに……

――俺はそっと、ため息をついた。

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