青い鳥の羽をもぐ。
この世に幸せなど無い。
あるのは不幸と苦痛だけ。
そう思わないと生きていけない。
森を彷徨いながら考えるのは後ろ向きな事ばかり。
だって仕方ない。
私は一人だから。
傍には誰もいない。
一緒にいたはずの兄はもういない。
青い鳥を見つけた、と言って兄は森の奥へと走って行ってしまった。
私を置き去りにして行ってしまった。
どんなに泣いても、叫んでも誰もいない。
あるのは無常な木々ばかり。
気が狂ってしまうわ。
バサバサと鳥の羽ばたきが聞こえるけれど、私にはどうでもいい事だ。
恐怖を打ち消すためにただ前だけを見て歩く。
今はそれしか出来ない。
幸せの青い鳥なんかいるわけない。
御伽噺を信じるなんて愚かな兄。
でもそんな兄を信じているなんて愚かな自分。
昨日の両親の会話を思い出す。
「もうあの子を育てることが出来ないわ。だってあの子は…!」
昨日の兄の言葉を思い出す。
「それでも可愛いと思っているんだ…」
両親にとって私は要らない子供。
兄は可愛がってくれたけれど、結局兄も私を捨てたのだ。
兄のためならば、青い鳥を探しても良かったのに。
…今、青い鳥を見つけてしまったら、私はきっと羽をむしり取ってしまうだろう。
二度と飛ばないように。
二度と不幸にならないように。
幸せは己の手でつかむもの。