4-10 後始末
登場人物まとめ
A[整備班 自動車関係に詳しく体も声もでかいが気弱な所もある]
B[研究班、高齢の女教授で研究以外に興味が無く性格がキツい]
D[研究班、研究肌で声が小さく話す前に少し貯める癖がある]
E[整備班、体躯のわりに運動は苦手だが他は多芸で飄々とした性格の個人主義]
G[偵察班、体は大きいが器用貧乏で非日常を好む変人で親しい人間には語尾を伸ばす癖がある]
K[施設班、工学に詳しく冷静沈着で天才肌なまとめ役]
O[施設班、少し気弱でオタクっぽいが機械やドローンに造詣が深い]
P[遠征班、小柄だが朗らかで野外での活動の才能が高く一度見た風景を忘れることが無い]
S[遠征班、糸目で音楽や文学に詳しいムッツリスケベ]
T[遠征班、小柄だが自転車が趣味で体力が高い人の好い性格]
H[遠征班、元学芸員の歴史オタでフィールドワークの経験から重機を動かせ体力もある]
I[偵察班、長身痩躯で極めて性格が善性な人物]
『こちらO、敵は殲滅!』
「だってよォ、覗き魔さん。まァ、こっそり覗き見るのはお互いさまってところだがなァ・・・」
「う・・ああう・・・」
とあるコンクリート製の建屋の3階、まだ青空だが頂点からすこし落ちた日が残暑の熱をもって倒れている男を焦がす。まだ20代前半であろうあどけなさを残した顔は苦痛に歪み、血だまりをつくってうつ伏せに倒れていた。
その手足を見るとご丁寧に肘と膝が砕かれている。
「結局蓋を開けてみりゃアどんなトリックかと思えば、フツーの災害用無線機・・・どっかの公共施設にでもあったんだろうさなァ、これと双眼鏡っつうシンプルさよ」
建屋内のカーテンが掛けられた窓の脇にある机の上には無線機、スナック、ペットボトルの水が置いてあり、眼下には大通りが一望できる。
GとIは他の仲間から離れて単独行動を行い、自分たちを見つけた監視役を探していた。ただ、探していたとはいえ実際は闇雲に廻っていたのではなく確率的に人が居そうなところを狙い撃ちしていた。
「だがなァ、残暑っていうレベルじゃなく暑いのはわかるがなァ、このご時世とはいえ綺麗なカーテンがついた窓が開いていて、それが道沿いの場所って言うんじゃあ流石に怪しいよなァ」
日本人というものは案外几帳面なものだ、いくら底辺と呼ばれる生活であっても、他の途上国と比べればかなり衛生的に配慮するし、細かなところをしっかりと無意識にやっている。具体的に言うならば窓だ。中山間部の人口減少による廃屋の増加は問題になっていたが、いずれも案外窓はしっかり閉まっている。今回のアリゾナ病の騒動でも低階層のガラスは割られているところもあるが、ある程度高いになると、電気もかなりの間粘って送電されていたこともあり住んでいた人間が締めていることが殆どだ。
もちろん開けっ放しとなっていた窓もあるが、そのような場所のカーテンは流石に汚れ始めている・・・ご丁寧に窓の開け閉めでも行っていなければの話だ。
怪しい箇所を攻撃準備と現地の監視をKとSに任せていたOがドローンであらかじめ当たりを付け、Gに連絡していた。Gはそれを受けてなるべく身を隠しながら移動し、目星のつけた場所に着くと小型ドローンで様子を窺う。2件目の場所で、窓の隙間から人影を確認、しばらく様子を見ていたが人数は一人のうえ、特に武装もしていなかった様子の為建屋に侵入した。
建屋内のドアには鍵なんてそうそうついておらず、3階の部屋のドアを少し開けるとアルファベッツ自家製の閃光グレネードを投げ込むと同時に踏み込み強襲した。
当初は殺害を選択肢に入れていたが、人質や何かの役に立つかもしれないとの考えから行動能力を奪う程度に済ませていた。
「さァて、おたくのハウスも燃えちゃったようだし、もう用はないよなァ?」
「ぐっ・・・や、やめろ」
Gは手で弄んでいたクロスボウの矢先を呻いている男の額に向ける。男の目に映るのはガスマスクを付けてポンチョを被り、凶器を向ける異形の姿。息は荒く、口はもつれる。
「く、ひ、人殺し!」
「・・・」
「人殺しだぞ!許されるはずが」
「HAHAHA!ナイスジョークだなァ!」
一瞬黙ったGの姿に光明を見出したか畳みかけようとする男であったが、それは予想外の朗らかな笑い声で遮られる。
「いやァ、何を今更ってところだな。お前さんだって外を徘徊する奴らを何人も殺ってきただルォ?」
「あ、あれはゾンビだ!」
「一緒だ、あれはただの理性を失った人間だ。本質といってもいいかもしれん、だが殺した時点でみんな人殺しだ。ただそれが真実だ。」
断じるGの声には有無を言わせぬ重さがあった。
「ま、それに俺たちのような通行人を今まで食い物にしてきたんだろォ?まっさか童貞とかあオボコとか言う訳じゃァねえよな?そういうこったァ、覚悟しなされ」
「・・・糞、糞!何なんだよ!急にこんなになって!なんなんだよこの世界は!糞糞っ!!」
傷ついた男は体を震わせながら怨嗟の声を上げる、その怒りは多かれ少なかれ今生きている人間の内面に必ずあった。
「まァ、そうだな。この世界がクソ・・・いや、肥料にもならん糞未満の価値も無いってトコロは同意するよ。ま、一つ修正するなら、もともと糞未満の世界だったぞ昔から、なァ。さあさあもういいだろう、俺も用事があって忙しいんだ、念仏を唱えてもいいがどうせ人間がつくったもんだから極楽には連れてってくれないだろうさなァ」
男は目をぎゅっとつむり、体を丸める。それは心身共にある防御反応であった。
だが、暫く待ってもその時は訪れない。
「・・・D、マジか、結構めんどくさいし帰りになるぞォ?ああ、でも感染していないのが欲しい、か。ま、いいがなァ気持ちは分かる。でも結構痛めつけたから死んでても知らんし優先順位は低いぞォ、あ、それはもちろん分かってる、と。」
男が恐る恐る目を開けると、通信機に向かい話しかけていたガスマスクがクロスボウを降ろす光景が見えた。
「おい、静かにしていれば、まァいわゆる捕虜として連れてってやる。また後でここに寄るから暴れるんじゃないぞォ?ま、手足砕かれて動けないだろうがなァ・・・」
その言葉に希望を見出した男が涙を流して首を振り肯定する、だが、反対にGは浮かない様子ではあった。部屋を出て、外側から簡単に扉があかないように適当な棚で塞いだ後、建屋の入り口で警戒するIと合流するために階段を降りる。
「・・・あのまま死んでいた方が、きっと幸せだったろうになァ・・・」
Gは爪楊枝の先ほどの憐憫の心を男に向け、そして忘れる。今からが今回のミッションの本番なのだ。かなり邪魔が入ったが、ソーラーパネルを運ぶ重労働が待っている。
コロナウイルスのせいで逆に仕事が忙しすぎる・・・




