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4-9 地獄

登場人物まとめ

A[整備班 自動車関係に詳しく体も声もでかいが気弱な所もある]

B[研究班、高齢の女教授で研究以外に興味が無く性格がキツい]

D[研究班、研究肌で声が小さく話す前に少し貯める癖がある]

E[整備班、体躯のわりに運動は苦手だが他は多芸で飄々とした性格の個人主義]

G[偵察班、体は大きいが器用貧乏で非日常を好む変人で親しい人間には語尾を伸ばす癖がある]

K[施設班、工学に詳しく冷静沈着で天才肌なまとめ役] 

O[施設班、少し気弱でオタクっぽいが機械やドローンに造詣が深い] 

P[遠征班、小柄だが朗らかで野外での活動の才能が高く一度見た風景を忘れることが無い] 

S[遠征班、糸目で音楽や文学に詳しいムッツリスケベ] 

T[遠征班、小柄だが自転車が趣味で体力が高い人の好い性格] 

H[遠征班、元学芸員の歴史オタでフィールドワークの経験から重機を動かせ体力もある]

I[偵察班、長身痩躯で極めて性格が善性な人物] 


 大学の拠点内、モニターに映る凄惨な光景を顔をしかめながらOが操るドローンが映し出している。その操作室とも呼べる部屋には何枚ものモニターと電子機器が設置されており、3人の男たち、O、K、に加え珍しくEもモニターを眺めていた。


「フッ、第1編隊はそれなりの精度という事か、風の影響か少し修正が必要だな・・・どうしたO?」


「いや、楽しそうだね、人殺したけどさ・・・」


「楽しいかだと?フン、まあ、そうだな。否定はせん、折角用意したものが使われて効果がでれば楽しいものだ。あと、生きることは殺すことだ、倫理か?哲学か?フッ無駄だな。」


 モニター上には上空からのライブ映像が映され、グリッド線や幾つかの移動する光点が重なっている。


 目的地までにいくつか建てられたアンテナを介してデータの送受信はスムーズに行われている、偵察班が道を塞ぐ集団と接触していなかったのは遠征班の装甲トラックを待つだけではない。有事の際に用意されたアルファベッツの力、その初めての行使の為であった。


 大学の屋上の一角から大型のドローンが3機編成で次々と飛び出し、一息に高度を上げると出発した遠征班を追いかけるように飛んでいく。一機ごとにコントローラーで操作するのではなくプログラムに沿って空を駆けていく、その腹に凶悪な仕掛けを孕みながら。これらの構築を行ったのはK、彼自身からすれば造作も無いことであったが、最低限の試験しかできておらず実際の運用を行う機会を内心、心待ちにしていた。


 勿論Sが行っている交渉次第では平和的に終わる可能性もあったが、その可能性は極めて低いと踏んでいた。そもそもまともな集団が残っている可能性は低く、この状況まで生き延びているのであれば自分たちのような奇人変人の類か、強権的な集団であるはずであった。そして前者よりも後者の存在のほうが圧倒的に多い・・・そんなに自分みたいな変人が居て堪るかとKは考えフライング気味であるもののドローン群を飛ばしていた。


 偵察班の身の小人数や、中途半端な戦力による攻撃はこちらも被害を受ける可能性がある。やらないのであれば完全撤退、だが、やるのであれば先制的に、そして圧倒的かつ徹底的に叩き潰す必要があった。仮に交渉相手が善人だとしても、勲章持ちだとしても、仲間の安全には代えられない。人情を見せて傷つき讃えられる大人ぶった世論はすでに崩壊した。


「おお、やっぱりあいつら銃持ってるな。見た目通り堅気じゃなかったか。」


 Eもモニター越しにドローンを操っていた。普段の偵察については面倒だからと敬遠しているが、捜査の腕前はOに勝るとも劣らない。今回はまるでゲームのように敵を倒していくミッションだ、Eも積極的に参加を表明した。

 モニター越しの強面は拳銃を構えて騒々しい音を立てている・・・もっとも、上空を移動するドローンに早々当たるものでは無い。挑発するように、翻弄するように縦横無尽に動き、男がカチカチと弾が切れた拳銃に目を向けたのを確認すると降下、小さなカプセルを真上から落とすと反転上昇し離脱する。カプセルは空中で弾けると中からは液体と栗のような鋭い針が付いた金属球が複数ばら撒かれ、その幾つかの雫と鉄球は強面の男に当たる。男は反射的に手で払い落とそうとし、刺さってしまい顔を顰める。だが、徐々に顔色は悪くなり膝をつくと呆然と口を開けてそのまま倒れた。


「毒物のカクテル、効くな。ボツリヌス菌の毒素、よく整形とか医療用とかに使おうと思ったもんだな。それに薬草園のアコニチンにフッ化水素酸とかいろいろとかけられたり刺されたり、味わいたくはないなあ。」


「ボツリヌス菌毒素ならGが痔の治療で昔使ってみたとか言ってたけど・・・」


「マジですかO?」


「うんE。なんか片頭痛持ちだからニトロ使うと地獄って言ってたよ。」


「は~、やっぱり使うことあるんだ。ああ、でももうこの場所には危なくて入れないな。」


「フン、気にするなE。今回はこの場所の物資回収は想定していない、道路側は汚染しないように小型焼夷弾でやれ。」


「了解K。最初からそうしてるよ、作戦通りだ。」


「うわあ・・・この人たち怖いなぁ」


「ん?何か言ったかO?」


「いやいや何も言ってないよK。あっ、一人建屋から森に逃げようとしてるよE!作戦区画Eの27からDの28に向かってる。」


「おお了解・・・よしこれでいいな。弾切れになっちゃったから装甲トラックに戻って補給するよ。」


 Kがプログラミングしたドローンの編隊群は上空から敵の密集地点や、建屋などの拠点に上空から爆薬、焼夷弾、そして毒ガス弾を大まかに落としていき戦力の大半を削る。毒ガスといってもシンプルで次亜塩素酸ナトリウムと酸が入った容器を同時に落として地上で炸裂させ塩素ガスを発生させるシンプルなものだ。漂白剤や消毒液、バッテリーやら洗剤、原料には事欠かない安価でかつ毒性が高い。刺激性と色に関してはなかなか評価が難しい、無いほうが警戒心を与えられるが、あった方が混乱させやすい。指揮系統がバラバラな方が攻撃側としても有利に立てる。攻撃の終わった編隊は拠点である大学へと戻るようになっている。基本的には決められた経路を移動して爆弾等を落として大学まで勝手に戻るようになっているが、気象条件や作戦の変更、重点的な攻撃の必要性があった時のためにKが細かく動作を修正しながら全体を動かしている。


 概ね敵を倒したり戦闘不能な状態に陥れることが出来たら次は残党の始末だ。これはEの操るドローンが行っている。慎重な敵は息をひそめていたり冷静に対処し御指揮系統を取り戻そうとするだろうし、ただ逃げる敵も残せば禍根が残る。戦場を飛び回り個別に、かつ確実に倒すための毒針鉄球と毒液のグレネード、さらに小型の焼夷弾を5個ずつ装備しており敵の頭上から急降下しつつ攻撃を仕掛けていく。予備の弾薬は装甲トラックにあり、すぐに補給とバッテリー交換を行い再び攻撃に向かう。


 一番上空に静止し全体を見つつ、グリッド線で区切られたエリアを示しつつ作戦エリア全体を把握し、攻撃に集中している2人が見落としがちになっている情報の収集に専念しているのがOのドローンの役割だ。敵の位置や異常があった際の報告を行い攻撃がスムーズに行われるようになっている。


 今回は相手の集団を話をしているうち、どう見てもまともな集団では無く反社会的な活動をしていた人間であることが薄々分かった、今となっては社会も警察もいないのが皮肉ではあったが。

 話をすると言ってこちらの人員を人質にし、本拠地の場所を喋らせて物資を根こそぎとって邪魔者は殺してやろうという悪意が感じられた。もっともそれほどではなくてもこちらに敵対的な様子であれば攻撃を仕掛けることは決まっていた。こちらに有利となる交渉相手でない限り、平和的な解決は望めなかった。そして一度攻撃を始めればいかなる存在であれ逃がすつもりも無い、奇襲とは最初の一回目だから効果が大きいからだ。生き残った者は大抵は怯えて逃げるだけだろうが、対処法を練られてしまっては面白くなかった。


 

 苛烈な攻撃は、而してそれほど長い時間では無かった。あっというまに始まり、あっというまに終わった。ただ、今も燃え続ける炎が周囲を赤く照らしている。暦の上では秋であったが、それでもまだ湿度は高く森林の延焼は恐らくないと思われた。もっとも森林が燃えたとしても被害を受ける近隣の人間は最早いなかった。

 

 動く影は無く、Oのドローンが映すモニターには地獄が広がっている。口に酸っぱいものが逆流してくるのを何とか押し留める。Oは平然と事を行える他の仲間に恐怖はあったが、感謝と畏敬の念もあった。O自身が直接手を下さなくていいような役割を回してくれたし、それを非難する様子も全くなかった。得難い仲間の心づかいを感じ、押し留めた酸っぱいものをもとの場所へと飲み込む。現地付近で様子を見守っている偵察班と遠征班に状況を知らせるのは自分の役割だ、回線を開けて口を開く。


「こちらO、敵は殲滅!」

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