1-5 女性教授との対話
さて、のちにGと名乗る男はかつて青春を過ごした町並みを歩いていた。
大学というものは比較的郊外に多い、広い土地が必要なことを思えば当たり前のことではあったが。例にも漏れずに男の出身の大学も閑静な住宅街・・・田舎過ぎず、だが都会とはいえない場所にあった。ただし、新しく開発された区画も多いためにそれなりに店は揃っており交通アクセスもそう悪くは無かった。
大学には付属の高校があり、高校、大学、大学院と8年間もの間過ごした場所には流石に思い入れがある。充実した学生生活だったとは言えないかったが、それでも社会人になってからの一年と若かりし頃の一年では流れる時間の早さが異なるものだ―――そんなとりとめのない事を考えつつ、ふと見上げればそこはすでに大学の正門であった。
守衛室にて記帳を行いバッジを胸に付けつつ懐かしの廊下を歩き、とある一室で足を止め、4回ノックを行う。
「はい、どうぞぉ」
「失礼します」
「あらあら、随分お久しぶりねえ!」
「ご無沙汰してます。近くに来たもので寄らせていただきました」
「ああ、嬉しいわねェ。今何しているの?」
「親の介護で前職を辞めまして・・・今は特に何も」
「駄目よ!若いうちは働かないと!・・・ああ、でも貴方研究者にはそこまで向いてないからここでは雇わないわよ?」
男は歯に絹着せぬ教授の言葉に苦笑しながら昔のことを思い出した。
教授は老齢の女性研究者だった。優秀な研究者であったかといわれると多少の考える余地がある・・・遺伝子操作、細胞内の情報伝達、微生物の代謝物の解析、等々幅広く様々な知見を持っていることは賞賛に値する。だが、成果としては―――――最大でもインパクトファクター5辺りが関の山といった所だった。
悪い数値でもないし、流行の分野でもなく基礎研究が多いので仕方がない側面もあった。そして基礎研究こそが学問として重要であることは言うまでも無い。
ただこの教授、生涯独身であり、研究室にずっと住み着いているといわれる程に毎日研究を行っている。だが、それでも論文と世間の評価を考えれば中の中、よくある一般的な教授と位置づけられるだろう・・・勿論、昔の時代に女性ながら教授という最高峰まで上り詰めたこと自体は努力の証をうかがわせるものではあった。
だが、それにしてもこの教授、学内での評判は下の下に近かった。
非常に気分屋であり朝と昼で言う事が変わる、それでいて非常に怒りやすい。研究熱心なのは良い事ではあるが、それを他者に強要する節がある。
「・・・そういえば、他の先生方はどうされたんですか?」
「ん?彼女は辞めたわ、折角助教にしてあげたのに・・・何が不満だったのかしらね?彼のほうは奥さんが入院中だから有給とっているわ、困るわねェ」
教授はとりわけ若い女性、しかもファッショナブルな格好をしているとそれだけで風紀が乱れると言って強く当たった。そして家庭や趣味をもつ人間にとっては研究とはいえ24時間仕事だけに生きるという事は難しいものだ。学生に対してもこのような態度で臨む為に結構な人数が学部長に訴えてゼミを移動していった・・・ただし、イケメンには優しかったが。そのイケメンも猫なで声の教授の姿に恐怖を覚えて逃げていくのであった。
男はイケメンというよりも大柄で強面に当たることと、研究テーマがゼミでも傍流であったために奇跡的に被害を余り受けない立ち居地にあったため比較的教授への忌避感も無かった。
顔見知りの助教と講師の先生への態度に顔には出さないが内心で眉をひそめつつ、それでも少し懐かしく思うのであった。
忙しい・・・その上某DMMゲームのイベントが中々進まずに執筆時間がとれない!しかも夕飯で酒を飲むもんだから炬燵で寝落ちる、悪循環ですねェ・・・。
アクアビット買って飲んでいますが、香草効きすぎィ!炭酸で割ってレモン汁少量添加すると個人的には丁度いいかも、薬っぽさはありますがそこも好みですかね?