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3-13 とある支配者の気炎 前編

体調がひどく悪いです、皆さまも風邪にはお気をつけて・・・とはいえ、仕事があれば行かねばならぬのが勤め人。

なっとらん、誠にもってなっとらん。


 儂が議員になったとき、敗戦からの復活を目指して多くの輩が切磋琢磨し寝食忘れて我武者羅に進んでおった。


 そして儂が防衛大臣となった時、米国の下に甘んじてはならぬと自衛隊の装備や兵器を国産で賄おうとし、それは根回しもあって概ね充足できた。


 だが、今の政治というものは、いったい何なのだ?


 つまらん失言の追及や揚げ足取りで一向に進まぬ議会討論、少数派の意見を取り入れるのが美徳とでも思っているのかわざわざ明文化する下らぬ配慮・・・言葉遊び。そう、言葉遊びだ、綺麗な言い方でも雑な言い方でも内容は同じだがそんな詰まらんことで言葉を濁し、ややこしくしている。政策もまた下らぬ目先の対処に言葉だけの経費節約、下らぬ規則で増える手間のほうが余程経済活動の妨げとなっておるというに。


 考えただけで苛立とが募る。専用のケースを開け、父から受け継いだ海泡石のパイプを取り出し馴染みの刻み葉を押し込みダンパーで均す。マッチを擦って静かに火をつけゆっくりと息を吸う。薄っすらと飴色になったパイプだが、これ以上色が変わることも無いだろう。煙草が悪しきものとされて暫く経つ、早世した息子も今はどこにいるかわからぬ孫も、嫌煙家だ。儂とて、正しき理論を否定はせんからそのことに関しては何も言うまい、だが多くの者がこの味を知らぬまま生きるとは誠に詰まらぬ世になったものだ。このパイプも実用品からただの鑑賞品となり、埋もれていくだろう。


 暫し煙を燻らせ、心を落ち着ける。酒を共に飲む者もいるが、儂は反対だ、この繊細な味を出すには細かな息の調整が必要、そしてせっかくの風味に水を差すことになる―――



 一服したが、改めて思う。最近の政治家を名乗る輩は小物だらけだ。


 政治家と支援者、利益と見返りはそんなもの当たり前だ。だが、昔は大胆に金を動かしていた。国を良くしてやろうとガツンとした政策をどんどんやって国土を塗り替えていった。言葉選びも多少はしたが今ほど気持ちの悪いようなおべっかは使ってはいないし堂々としていた。小のつまらぬ権利だの意見だの下らぬものは放っておき、多くの人間が利益を出し国が発展するように先を見据えて金を出していた。


 我が国の資源は漁業以外は恵まれていないのも明確、外郭団体や天下りといった旨味も持たせながらも研究や開発に莫大な予算を投入していた。今のあまりに狭苦しく暗い日本と違い、混乱や犯罪は多々あったが、それでもなにより活気があった。今の政治家はつまらぬ規制案を通すことが仕事と考えておる、規制なんぞ必要以上に増やせば活気が無くなるのは当たり前だ。


 大臣を引退してからも、自衛隊の上層部や他の影響力を持つ老獪な財閥の指導者との関係は常に持っていた。特に、自衛隊は近頃の大臣では文民統制とはいえ大きな決断は出来ず、有事の際に真面に指揮ができる存在として何かあれば儂が大臣に返り咲く事が内々に決まっていた。政治家の支援者たちもこれは知っていたが今の小物政治家共にはブン屋への漏洩の危険があり黙っていたが。


 幸いと言っては何だが、今のところ大きな戦争の流れは我が国にはない。だが、自衛隊の兵器も米国に媚び輸入に頼り、米国が戦争をおこしても介入せずに利益を逃し、すぐに成果の出ない技術開発への増資も行わず最低限の支援だけで事を済ませている。少子化?福祉費用?増税?幼稚園を増やそうが保険料を増やそうが本質はそこではない、ようは日本国という企業が収益をあげられていないのがすべての原因なのだ!他の国にはない技術を次々と生み出し、新興国に介入し資源を安く手に入れ高い技術で加工するという、資源が無い国の資金の調達方法の常識が出来ていないからだ。若者に金も希望も無いから子供が少ないのだ、国に金が無いから下らぬ増税や国債の発行が必要となるのだ・・・あの輝かしい日々よ!


 斜陽の国を睨みながら朽ち果てる日を待つのみだった。


 だが、幸か不幸か、儂が再び動く日が来たのだ。


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