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1-3 予兆

 まるで坂を転がり落ちる雪球のように事態は急速に悪化していった。


 新聞やニュース、インターネット、ありとあらゆるメディアが連日のように騒ぎ立てる。


 視聴者の不安を煽りテレビにしがみ付かせようとする報道番組や、とある一面のみを誇張した雑誌、学者でもない自称評論家達がネタがある事をこれ幸いにと騒ぎに騒いだが・・・それでも積み重ねられた情報から得られた現在の状況は広く伝えられることとなった。



 ニュースを見ていた民家の住人は不安げにサイレンの鳴り止まない窓の外に目をやる。街のあちこちでは警察官が暴れる人間を取り押さえようとしていた、また事故の後始末にも追われて非番の職員を駆りだしても足りなくなってきていた。


 料理中や運転中に発症した際に生じた火事の対応に消防車はフル稼働で消火に当たっていた。勿論、これらの事故による死傷者、取り押さえられた人を運び、治療するためにも救急車が必要であり110番も119番もなかなか繋がる事は無く、繋がったとしても対応できる余力が無いことも多かった。


 このような状況でも真面目な日本のサラリーマンは日々の糧を得るためにせっせと働いていたが、隣で働く同僚の発症や作業中の事故の多発によって仕事の効率はぐんと低下してしまっていた。そうした労働中の事故・・・これがデスクワークであればコンピューターや備品が壊れてサーバーへの保管を怠っていた社員が精神的に発狂する程度で済んでいたのだが、インフラを管理する技術者であると、これはもう、笑うことが出来なかった。


 バスや電車の事故、これは利用者が発症する騒ぎもあったが運転手が発症した場合は悲惨であった。建物に突っ込んだり速度超過による脱線、別の車両との事故等で交通インフラを寸断し周辺にも大きな被害を出すこととなった。恐ろしいことに旅客機さえ航行中に制御を失い街中へと落下し大きな被害を生んだ事故もあった。


 ライフラインにも影響が出始めていた。電気やガスは多発する事故に伴う電線や管が破損、また作業員の減少による点検の不備等で停電や供給の滞りが散見された。水道は今のところ大きな問題は無いもののやはり人員の不足によって無収水率が少しずつ増えつつあった。



 ただし、それでも社会はまだ正常に周っていた。電車やバスは時刻表に変更を加えながらも全力で運転していたし、仕事帰りに一杯やって帰るサラリーマンの姿も普通に見られていた。発症した人間も日本の全人口からすれば0.1%を下回る程度であり・・・だがその僅かな人数によってでも社会に大きな影響があるということも示されていた。


―――この時、最初の発症者の発見から1ヶ月が過ぎようとしていた。

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