2-13 第1案件
登場人物まとめ
A[整備班 自動車関係に詳しく体も声もでかいが気弱な所もある]
B[研究班、高齢の女教授で研究以外に興味が無く性格がキツい]
D[研究班、研究肌で声が小さく話す前に少し貯める癖がある]
E[整備班、体躯のわりに運動は苦手だが他は多芸で飄々とした性格の個人主義]
G[偵察班、体は大きいが器用貧乏で非日常を好む変人で親しい人間には語尾を伸ばす癖がある]
K[施設班、工学に詳しく冷静沈着で天才肌なまとめ役]
O[施設班、少し気弱でオタクっぽいが機械やドローンに造詣が深い]
P[遠征班、小柄だが朗らかで野外での活動の才能が高く一度見た風景を忘れることが無い]
S[遠征班、糸目で音楽や文学に詳しいムッツリスケベ]
T[遠征班、小柄だが自転車が趣味で体力が高い人の好い性格]
H[遠征班、元学芸員の歴史オタでフィールドワークの経験から重機を動かせ体力もある]
I[偵察班、長身痩躯で極めて性格が善性な人物]
『―――街に設置してある定点カメラの一つで数人の学生服を着た集団が確認された』
モニターに映る面々が息を飲むが、騒ぐ者はいない。皆Kがこのような場で無駄な行動をとることを好まないと知っていたし、その認識は各員にもあった。
『おそらくGが発見した集団とは別だ、場所も違う。だが、元は同じ学校で籠城していたと考えられる』
『ええ?そうなんですか。そうすると、僕たちやKさんが見つけた以外にもまだ同じような学生さんがいるということですね。できれば助けてはあげたいですが・・・』
『ミスターK、たしかお前さんは『微妙』な報告と言っていたなァ?あのバカな学生たちを見るに悪い報告としか思えんが』
IとGの言葉にKが僅かに嘆息した。
『ああ、正直なところ悪い状況に寄っている『微妙』、だ。発見した集団は、それなりの防疫対策の意識が感じられた。レインコートやゴーグル、マスクの着用が確認された。レインコートが透明でなければ学生服ということが分からなかった程度にはしっかりと着込んでいたな。まあ、何にせよカメラの付近にOに長距離ドローンを飛ばして確認してもらったが・・・さらに悪い事態が生じた、詳しくはOが話す』
『うん、みんな知っているとは思うけど、僕たちはまだ街にいる非感染者全員を敵とは考えていないよね、潜在的な高いリスクとは思っているけど。ま、まあ真面な非感染者の集団とは緩やかな協力関係を築きたいし、その見極めもかねてドローンで探していて集団を見つけたのは良かったんだけど・・・』
ばつが悪そうな表情でOが続ける。
『いやあ、ごめん。ドローンが見つけられちゃったようなんだ』
観察していた集団がドローンに向けて指さしていた様子がモニタに映ったと続けた。
追い詰められている非感染者が、そのような明らかに人間が関与している物体を見ればどう思うのか、想像に難くない。まず、助けてもらおうと気を引き、それでもだめなら探し始めるだろう。場合によっては分裂はしたようだが他の知己の集団にも声をかけて探索するかもしれない。それは『ゾンビ』の動きをかき乱しこちらの動きが取れにくくなるうえ、拠点の大学が発見され数の多い集団に押し寄せられれば厄介だ。仮にも人間、あの手この手で侵入しようとし、排除しようとすれば暴力的な手段をもって襲ってくるだろう。
『いやいや、仕方がないな、あのドローンって結構大きいし。むしろ、見つかっているとわかっているほうが対策も取りやすいよ。奇襲っていうのが一番怖いからね、どんなに強くて数が多くても混乱して総崩れになっちゃうのは史実でもそれなりにあるしね』
『・・・H君ありがとう。一応、ドローンを戻すときに大学とは別の方向・・・180度逆だとちょっと考える人がいれば危ないかもしれないから、100度くらい別の方向に進ませてから戻したよ』
『はは、欺瞞はできているなら文句は無いね。こういうのは見つかるときは見つかるよ』
『まァ、ババアだけにはみんな黙っとけ、絶対グダグダと文句言うからなァ・・・』
『ははは・・・絶対言うね、あの人なら』
『・・・ 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ・・・』
『うわ、なつかしいミームだな』
『え?僕は知らないけど有名な言葉?』
Tの言葉に続き各々が仕方がないことだと口々に言う。ここで何の役にも立たない批判や文句、説教をするような者はいなかったし、そもそもそのような者は最初から集められてはいなかった。
『みんな、ごめんね。とりあえず、こちらで確認したのは体格的に女性が4人、男性が2人の集団だったよ。入口に簡単なバリケードがあった雑居ビルの3階に窓ガラス越しに確認できたね、飲食店が入っていたところだし食料を探していたのかもしれない』
ゴッという音により全員が一度静まる、Kがマイクを指で軽くはじいた音であった。
『一度まとめる。まず見つかったものはしょうがない。次に、先ほどOが言ったように我々も理知的な相手であれば話し合うことも考慮に入れて良い。が、我々としてもこのような集団が現れたのは初めてだ。対応を話し合いたい』
『とはいえ、もう考えてあるんでしょ?』
『無論だP。まずは、監視の強化だ。結構な人数が高校から出てきたならば、まだ未発見の集団もいるはずだ。俺もドローンを動かして探す、Gも手が空いているときは手伝え。極限状況こそ本質が現れる、それぞれの集団を発見、監視して協力に値するかを見定めたい。各集団の拠点があれば夜にドローンで近づき盗聴器をセットして様子を窺う』
『はっはっは、いいんじゃねえか?』
『・・・まずは様子を見ねば何とも言えんか』
『対人装備をもう一度確認したほうがよさそうだな』
『あの、いいですか?』
『I、なんだ?』
『見極めるのは仕方ないですけど、あまりに追い詰めすぎるのもどうかと思います。余裕や希望があるからこそ上手く対応ができる人だっているかもしれませんし』
『あー、俺もミスターIの意見には賛成だァ』
『ほう?Gが人道的なことを言うとは珍しい』
『いやね、見つかっちゃったなら、いっそこちらから接触するというのはどうかね?長距離ドローンに紙でも持たせてまあまあ真面そうな集団に指示を出す。その行動によってはまたドローンでカロリーバーや我々の使わない井戸のある場所などを報酬として渡しても良い・・・クエストさな、僕たちみんなゲームは大好き。犯罪者の9割以上がゲームをやっているというデータもあるなァ』
『・・・ふっ、積極案だな。俺も教えてやる、感染者になった人間の全てが一酸化二水素を摂取したことがある』
『ぶはっ!!一酸化二水素って・・・そりゃあ、規制しないとなァ。そうすれば感染者になる人間はいなくなるわなァ』
『ふん、まったくだ・・・話を戻す。仮に、指示を受けた後の行動が不適当な集団があれば?』
『まァ、こんな世知辛い世の中よ』
Gは笑みを浮かべて言った
『事故が起きるなァ』




