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2-10 帰還

登場人物まとめ

A[整備班 自動車関係に詳しく体も声もでかいが気弱な所もある]

B[研究班、高齢の女教授で研究以外に興味が無く性格がキツい]

D[研究班、研究肌で声が小さく話す前に少し貯める癖がある]

E[整備班、体躯のわりに運動は苦手だが他は多芸で飄々とした性格の個人主義]

G[偵察班、体は大きいが器用貧乏で非日常を好む変人で親しい人間には語尾を伸ばす癖がある]

K[施設班、工学に詳しく冷静沈着で天才肌なまとめ役] 

O[施設班、少し気弱でオタクっぽいが機械やドローンに造詣が深い] 

P[遠征班、小柄だが朗らかで野外での活動の才能が高く一度見た風景を忘れることが無い] 

S[遠征班、糸目で音楽や文学に詳しいムッツリスケベ] 

T[遠征班、小柄だが自転車が趣味で体力が高い人の好い性格] 

H[遠征班、元学芸員の歴史オタでフィールドワークの経験から重機を動かせ体力もある]

I[偵察班、長身痩躯で極めて性格が善性な人物] 


「ふひ~、なんとか戻ってこれたなァ」


「ええ、臭いも弱くなってきていましたし危なかったですね」


「一応、予備のも持ってきてあったけど無駄遣いできるほど量無いしなァ・・・」


 GとIの二人は武骨な大きな建屋の前に立っていた。コンクリート打ちっぱなしの外観を近代的デザインと言い張っているような灰色の外観、周囲は塀で囲まれており、学生からはムショの愛称で呼ばれていたとある大学。『アルファベッツ』の拠点だった。


 いくつかある出入り口の門は補強されたうえで開かないように潰されており、塀の上部には目立たないように鉄線が張り巡らされている。何も知らない侵入者が触れれば生存を考慮しない電流が容赦なく命を奪う。


 建屋の窓もほとんどが内側から補強されて中をうかがうことも難しく、光の出入りもない。


 これは、単純に感染者に襲われた際の補強に加え、生活感を極限まで消していわゆる『非感染者』がやってくることを防ぐ意図があった。


 屋上には流行りのエコのために敷かれたソーラーパネル、堀に近いところには井戸がある。大規模に水を使う施設には案外専用水道として井戸を持っているところも多い、水道代の節約と、非常時への対応のためだ。まさにこの非常時には普段は胡乱なエコロジストの主張が存外に役立っていた。



 木陰に紛れるように配置された防犯カメラが正門の前に立つ二人をそのレンズでじっと見つめていた。


 Gがカメラに向かって片手をあげ中指を立てると、低い音を立てて門が動き僅かなスペースを作る。


 二人が敷地内に入ると門は再び固く閉ざされた。



 その敷地内は閑散としており、セミの鳴き声の影から低く響く発電機の音が僅かに聞くことができる。刈られることのない雑草が花壇からあふれんばかりに自己主張をしていた。


 二人は校舎の正面入り口では無く、校舎を回り込み裏口へと足を進める。


 裏口を開けるとそこは小さな部屋となっており、ドアを開けた瞬間強い風が吹きつけてくる。チープな外見の壁材や部屋の不自然な狭さがもともとあった部屋ではなく最近拵えられたことを感じさせた。


 風に逆らいつつ部屋を進むと上下左右、背面以外のあらゆる方向より風が吹きつけてくる。ただし、風の流れは入口に向くように配置されており、二人は強風に耐えながら先へ進む。


「相変わらずエアシャワーの勢いがつよいなァ・・・」


「余計なものを着ていなければ涼しいんでしょうけれど」


「まァ・・・仕方ないな」


 ドアを開けると次も狭い部屋で、天井近くにつけられたシャワーからツンと来る消毒液が強めの雨程度に散布されていた。


 二人がずぶ濡れになりながら進むと、こんどは再びエアシャワーの部屋。さらに進み、今度は別の狭小な部屋。スピーカーからやや高い男の声が流れる。


『えー、こちらOです。お疲れさんです。とりあえず、紫外線処理を行うので感じの大の字になるように手足を伸ばしてね』


「了解だ」「わかりました」


 GとIの二人は指示に従い両手を水平になるように伸ばし、足を広げる。


 不自然に狭い部屋だが、その上下左右にはUV等が設置してあった。


『よーし、じゃあ目をつぶって・・・点灯!・・・11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、はいオーケー。じゃあ次は・・・』


 指示に従い二人は様々なポーズで紫外線を浴びる。


「Gさん、これって体にはよくないですよね」


「当たり前だァ、いくら全身防備かつUVクリームとか塗っていても良いはずはない」


「ですよね・・・このマスクの目の部分にもUVカットフィルムは貼ってはありますが」


「まァ、仕方がないさ。何が原因なのかもわからんのだからなァ・・・」


 しばらく経過し、ようやくポージングが終了し、息を整える二人に次の指示が出された。


『お疲れさんです。じゃあ、次はコンベアに荷物乗せてね』


「オー・ケイ、コーヒーとかあったから持ってきたぞ、結構良さそうだ」


「紅茶もですよ、ああ、でもOさんもコーヒーのほうが好きでしたっけ」


『おお!いいね!ストックが切れ始めてたから助かるよ。インスタントはまだ予備があるけどあんまり美味しくないからね』


 雑談をしつつも背嚢を部屋の片隅にあるベルトコンベアへと乗せる。そのコンベアは別の部屋へとつながっており、どこから持ってきたか分厚い鉛の板や水を多量に含んだゲルの層で覆われた小さなスペースへと続いていた。


『うん、荷物はガンマ線室に入ったね・・・では、スイッチ!オン!』


 ウイルスさえ不活化する線量が放射線源から照射され、GとIの背負っていた荷物を貫通していく。ラジオアイソトープ室、大学がにぎわっていた時代には実験用や滅菌用によく使われていた部屋であった。放射線をただ当てるだけではなく、放射性元素で標識した分子などによる実験も行われており、高感度の測定器もあった。


「ま、こっちはモニタもないから何も見えん、ガンマ線源も目に見える光は無いがなァ・・・ま、先にいくわァ、ようやくこの暑苦しい装備を脱げるわ」


「はは、ええ、こっちも汗でぐしゃぐしゃです」


 次の個室は端のほうにベルトコンベアがある以外には特に何もないが、床には大きめのゴミ袋が置かれていた。


 二人は仮に付着物があった場合飛散されても困るので慎重に装面したガスマスクや、ディスポータブルの防護服、靴さえも脱いでゴミ袋に入れていく。外した防護服やガスマスク、しかし二人の素顔はまだスキニーな手袋やマスク、ゴーグルで隠されていた。


 慎重にゴミ袋の口を閉めるとGとIはそれぞれもっていた袋をコンベアに乗せ、Oに報告する。これらもまた遠隔操作によりガンマ線滅菌され、倉庫のゴミ置き場へと放り込まれた。


 最後の個室、そこでようやく二人はすべての装備を外すことができた。冷たいペットボトルが置かれており、その心使いに感謝しつつ一気に中身を煽った。


「ふう、相変わらず帰ってきてからも煩雑ですが・・・裏口の廊下を細かく区切って部屋を作り、出入り口に。完成する前に僕たちに感染者が出なくて幸いでした」


「ん?ああ・・・早いうちから準備を進めていたからなァ、あのババ・・・いや、Bの勘とKの素早い動きのおかげだな」


「いやいやGさんも最初から動いていたでしょう、ただ、あの保存食は僕は苦手ですが」


「そうかい?俺は好きだぜ・・・安い、栄養がある、在庫もたくさんあってすぐに集まった。味もあのいかにも保存食って感じが俺は嫌いじゃないなァ、ま、美味くはないが」


 人心地ついてドアを開ければようやく真の大学構内であった。


 窓は厳重に目張りされたうえバリケードで補強、空調が常に動いており、外気はHEPAフィルターを通して供給され、常に陽圧になるように設定されている。


 気温的には快適だが薄暗い廊下。


「だが、まァ・・・まずは」


「シャワーですね」


「だよなァ」


 まだ暑い中、クールベストの保冷材も解け切ってしまい二人は汗でベタつき臭いの気になる体を清めるため、とりあえずシャワールームへと向かうのであった。




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