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2-9 傍観

登場人物まとめ

A[整備班 自動車関係に詳しく体も声もでかいが気弱な所もある]

B[研究班、高齢の女教授で研究以外に興味が無く性格がキツい]

D[研究班、研究肌で声が小さく話す前に少し貯める癖がある]

E[整備班、体躯のわりに運動は苦手だが他は多芸で飄々とした性格の個人主義]

G[偵察班、体は大きいが器用貧乏で非日常を好む変人で親しい人間には語尾を伸ばす癖がある]

K[施設班、工学に詳しく冷静沈着で天才肌なまとめ役] 

O[施設班、少し気弱でオタクっぽいが機械やドローンに造詣が深い] 

P[遠征班、小柄だが朗らかで野外での活動の才能が高く一度見た風景を忘れることが無い] 

S[遠征班、糸目で音楽や文学に詳しいムッツリスケベ] 

T[遠征班、小柄だが自転車が趣味で体力が高い人の好い性格] 

H[遠征班、元学芸員の歴史オタでフィールドワークの経験から重機を動かせ体力もある]

I[偵察班、長身痩躯で極めて性格が善性な人物] 


 ゾンビといえば、B級ホラーものでは動きが鈍重でゆっくりと迫ってくるイメージがある。だが、この『ゾンビ』は違っていた。


 思考力が大幅に低下して本能だけの存在になり、身形は汚らしく変貌しているものの『生きて』いる存在となる、身体能力的には感染していない人間から低下していない。


 むしろ、タガが外れたように、幼児が後先考えず動き回るように、体の負担も考えずに全力で追ってくる。幸い手を前に出したり振り回しながら、つまり滅茶苦茶なフォームで走るために見た目ほどの速度はなく、スタミナが切れれば勝手に崩れ落ちる・・・ただし、感染者がアスリートや運動好きであった場合は足が遅い人間では逃げ切れないことも多い。そして逃げ回っている間に新たな『ゾンビ』に見つかり次々と交代するかのように追われてなかなか逃げ切れるものではない。


 どこかの部屋に逃げ込みドアを閉めても手足が折れても気にせずに全力で破壊しにくるために木製の薄いドアは壊されることもある。ドアが壊されなかったとしても、その音を聞きつけて群がってきて窓や薄い壁を壊して追い詰めてくる。


 つまり、『ゾンビ』の『獲物』として目をつけられた時点で大方危機的な状態となる。


 勿論、乗り物を使ったり身体能力に自信のあるものが『ゾンビ』の密度が低いところまで逃げれば助かる。また、遭遇した1匹目を速やかに攻撃して処理すれば良い。


 建屋も丈夫なもので、他の出入り口から速やかに逃げられるのであれば逃走経路としては悪くない。思考能力も低下しているため入り組んだ場所であれば撒くこともできる。


「ま、こんな道を騒がせながら逃げてるようじゃあダメだなァ」


 Gがやれやれといった風に肩をすくませる。一人の恰幅の良い女生徒が転び、悲鳴を上げたが、このすぐ後に上がる絶叫の前には可愛いものであった。


「おっと、また一人やられてる・・・若い女とはいえ、太ってるのはそそられねェなァ」


「・・・Gさん、不謹慎ですよ」


「ああ、すまんね、RIP、RIP。そういえばちょいと前に全寮制の高校が出来てたよな、なんかカタカナの名前のやつ」


「ええ、ミッション系の学校でしたっけ。周囲で入ったって人はあまり聞かないところですね」


「厳格かつ最新の設備を備えた私立高校・・・その実は、問題を抱えた奴らの掃き溜めって噂もあったなァ、どうにか高卒にするための駆け込み寺。いや教会か」


「噂は所詮噂ですよ。でも、寮や学校で設備がそろっていれば彼らは最近までそこで籠城していたのかもしれませんね、新しい施設なら防災用の設備や物資もあったでしょうし・・・帰るところもないのであれば可哀そうなことですが」


「ははは、今じゃあ帰る場所もない奴らが殆どさァ。ま、こうして話していてもただの予測にすぎんがね。お、また一人捕まったな・・・ああ、くそ今度は顔が残念なやつだ」


「・・・Gさん」


「おっと、ミスターI、少しふざけていたことは謝る・・・が、この感じだと囮を置いていったら、何人か助かって『しまう』かもしれんな」


「ああ・・・彼らは、助けることは」


 Iが悲しそうに顔をゆがませるが、Gは楽し気な表情を引き締めて言った。


「しない、絶対だ。」


 無表情に近い冷たい顔をしたGが睨むモニターに映る非感染者の学生たち、その恰好は半袖の制服や暑くて脱いだのかTシャツやタンクトップ、酷ければ靴は革靴。ただパニックになり走り回っているだけ。


「むしろ、我々に接触してきたほうが危険だ、この危機管理能力も無い奴らがどんなバカなことを仕出かすか、わかったもんじゃない・・・逃げる方向によっては、最悪始末せんといかんなァ」


「始末・・・」


「なあに、俺がやる。必要なことだろうさァ」


「僕たちに、力があれば・・・いっても仕方のないことですけれども」


 拳を握り締めるIに、頬を緩めたGが軽く声をかけた。


「国、いや世界が無理だったんだ、しょうがないさな、気にしてもどうにもならんよ。お・・・あっちに逃げるか、それならまァわざわざ追わなくてもよさそうだ」


「大学から遠ざかっているんですか」


「ああ、海の方向へ逃げてるなァ・・・ま、後は運しだいになるだろうが」


「ええ・・・」


 仮に、感染者から逃げることはできても感染から逃げられるかは極めて怪しい。それが防げるのであれば、数多いる医療関係者が匙を投げることも無かった筈だ。


「ま、とりあえず帰り道の邪魔が少し別のところに流れたと前向きに考えようや」


「帰りましょう、ええ」


 Gはドローン一式を戻し、武器を再び刺又に持ち帰ると重い腰を上げて立ち上がる。地震を守る悪臭を放つ袋に視線を少し向け、自分たちとて安全ではないことを再確認し、大学への帰路を急ぐのであった。



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