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1-20 ある警察官の妻

年怒魔痛ねんどまつ、ついにやってきたか・・・有給使えといわれても使う暇は無いんですよね、ゾンビとは俺のことだったか・・・\(0μ0\)アー

「今日は配給の日ね・・・あまり外に行きたくないけれど」


 地方都市の片隅にある住宅街の一軒家、主婦は思う。窓の外を見れば小雨、しかし食糧の備蓄…切り詰めてなるべく保存してはいるしそれなりにはあるのだが…、それでもあるに越したことはないと思い直し外出することに決めた。


「ママ今からお外いってくるからお留守番よろしくね~」


「え~ずるい~、ぼくもおそとであそびたい!!」


「遊びに行くんじゃないの!大人しくしてなさいっ!」


「おこるママきらいっ!!」


そう行って二階に走っていく娘をみて女は怒鳴ってしまったのを後悔するように小さくため息を吐いた・・・子供はまだ幼いし、外で遊びたいのもわかる。テレビもやっていない時間が多く、やっていてもニュースばかり、ゲームも頻繁な停電でそうそう使えず―――警察官である父親は都市部へと出向したきりもう3ヶ月も帰ってきていない。


 主婦自身も大きな不安を抱えて、しかし子供には気丈に振舞っていたがふとした際にはそれが噴き零れてしまう。小さく首を降ると、使い古したリュックサックを背負い家を出る。


 通りの人影はまばらで、たまに見かける人影に怯え・・・それが主婦と同じように鞄を持ち配給所へと向かっていく人であるとわかりほっと息を吐くのであった。感染者により襲われている人を見たことも最早一度や二度では無かった、もっとも直ぐに駆けつけた自衛官や警官達によってそれらの感染者はすぐに取り押さえられ強力なスタンガンで気絶させられていた。


 それでも少し前は近所の同じく小さな子をもつ母親たちと雑談をしながら配給所まで歩いていっていたものなのだが、最早最近は知り合いの姿を見かけることも殆ど無くなっていた。


 小さな路地は敢えて大型の自動車で塞がれ、バリケードのようになっていた。以前よりずっと減ってはいたが、自衛隊員や警察官が視界に写ると僅かに安心する。その傍を通る際、小さく会釈して配給場へと向かった。





 集積所にはすでにそれなりの人数がいたが、それでも行列を作っていた全盛期に比べるとその数はとても寂しいものになっていた。役所の職員に身分証明書を見せて名簿にサインをした上で配給を行っている建屋へと向かった。


「・・・はいどうぞ、米とサプリメント、それから乾物ね」


「ありがとうございます。え?何かいつもより大分多いですがいいのですか?」


「・・・ええ、最近はとりにくる人も減ったしね。まだ持てるならもっと持っていったほうが・・・いや、どうする?」


「え?えっと・・・ではもう少しもらっておきます、すいません」


「・・・いえいえ」


 主婦としては貰えるものは貰っておこうといった、かつてのスーパーマーケットの特売品を狙うような軽い気持ちで言ったのではあるが、配給を行っている職員のどこか申し訳なさそうな目線に気がつくことは無かった。


「ええっと、こんなにすいません・・・よっこいしょっと、お、重いわ、ありがとうございました」


「ああ、帰り道気をつけてね・・・では次の人どうぞ」


 主婦はいつもより遥かに重い荷物を息を切らせ、途中で休憩を挟みつつ何とか家まで運び込んだ。そして、家の鍵を開けようとして・・・鍵がすでに開いているのに気がつき青い顔となって急いで家へと飛び込んだ。


 子供が心配であった主婦であったが、そこには意外な顔があった。


「よかった!戻ってきたか!」


「あなた!?帰ってこれたのね!仕事はもう大丈夫なの?」


「ああ、いや。だがそんな暇は無い、急いで荷物をまとめてくれ、時間が無い!」


「えっと・・・どういうことなの?」


 ひどくあわてた様子の夫に主婦は再開の喜びを覚えつつも戸惑いを隠せないでいた、これほどに焦燥した夫の姿を見るのは初めてだった。


「・・・もう、この町は放棄されるんだ。いや、この町だけじゃない、いくつかの大都市以外は全てだ!もう道路維持や配給、感染者対策、色々と全部が追いつかなくなったんだ。このまま全部が駄目になるくらいなら残った能力を大都市部に集中させて生き延びさせようと上は考えているらしい・・・幸い、警察官は家族と一緒に移動するようバスが用意されているんだけれど、あまり出発まで時間が無い!」


「え・・・じゃ、じゃあ他のお宅の人はどうなるの?」


「・・・ばれないように静かに移動するんだ。意味は、わかるね?・・・今は家族のことだけを考えるんだ、さあ急いで!」


「え、ええ!!」


 主婦は罪悪感を覚えつつも、息子の顔を思い出し首を振る。配給さえ来なくなった町がどうなるのか、主婦には想像もつかなかったが・・・今はただ、心を鬼にしようと決めたのであった。


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