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1-18 陸路の来訪者

「ああああああ!もおおおお!!」


 人気の無い大学に叫び声がこだまする。


「おい、教授は一体何で騒いでいるんだ?」


「大方ババアはネットが切れて論文サイトに繋げない事で怒り心頭って所だろうさァな」


 眼鏡の位置を中指で直している目鼻立ちの整った男に、背の高い男は肩を竦めて返した。


「ただ―――事前にある程度の奴等を集められた事は行幸だったな」


「ああ・・・うんにゃ、だが一部だけだ。大体の奴は連絡がつかないか、来れないと言われたな。もう連絡もとれんなァ」


「いや、少ないがなかなか悪くない集まり方だ。それに予想通りでもある・・・仮に全員来てたらキャパシティを越えていた」


「ヒュー!!そこまで折り込み済みか、相変わらずクールなヤツだよお前さんはァ。ん?・・・ちょっと待ってくれ・・・誰か来たようだな・・・バイクか、珍しい。・・一応ババアを宥めておくかねェ。」






 厚生労働省と書かれたジャケットをライダースーツの上から羽織りフルフェイスのヘルメットを被ったままの、顔は見えないが恐らく男はバイクの荷台から大きめの箱を取り出して抱えていた。


 一方にはディスポータブルの防護服と防毒マスクにウイルス対策用のフィルターを張り付けた男たち。


 互いに怪しげな男たちがロビーで相対していた。


「教授は今お忙しくてね・・・我々で対応させてもらいます。」


「ああ!そうっすか!すいませんねお忙しい所・・・ワタシはこういったモノで、コレを各機関に配っているんですよ。」


 そう言うと抱えていた荷物と名刺を手頃なテーブルに乗せて梱包を解いた。


「これは・・・通信機ですか?」


 色々な端子のついた箱形の機械、それには巨大なパラボナアンテナと大きなレジャーシートの様なものが付属していた。


「ええ、インターネットが使えなくなって連絡もしんどくなってますからね!これじゃ不便ってことで災害時や局地通信用に作られていたコレを配ってるんですわ、ワタシは所管が厚労省だったもので研究機関を回ってまして…」


 そう言いながら分厚い本をフルフェイスの男は取り出した。


「詳しくはコレに書いてありますが・・・使える衛星が限られるんで通信時間とアンテナの角度は日にちによって書いてある様に弄って下さいね。あと、そんなに重くないデータならパソコンを繋いで送受信できますわ。このシートは超薄型のソーラーパネルになっとりまして広げると大分大きいんですが充電につかってください」


「成る程、これで研究に進展があったらデータを送ればいいのか・・・ソーラーパネルも通信時以外には別の用途に使えそうだな。」


「ええ、それでかまいませんとも。データベースにもアクセスできますから他の機関の情報や我々からの通達も見ていただけますわな、研究に役立ちそうな論文とかも大方移してありますから上手いことつかってくださいよ。」 


 背の高い男は安堵するかのようなため息を吐き、喜色を含ませた声をだした。


「いやぁ、そいつは助かります・・・ババ、いや教授も喜ぶでしょう。」


「ははは、そう喜んでもらえると来た甲斐もありましたわ!」


 フルフェイスの男は黒色のオフロードバイクのハンドルを労わる様に撫でた、その様子を見て目鼻立ちの整った男が問いかける。


「しかし・・・貴方はバイクでよくここまで来れたものだな、大変だったのでは?」


「あー、えー・・・言い難い事ですがね、もっと重要度が高い施設には上の方がヘリで色々運んどります。ワタシはまぁ下っ端でして・・・こういったところの連絡に回されているんですよ」

 

 ポーズであろうか、ヘルメットの頭を手で書くようにしながら申し訳なさそうな口調で話す男に、さもあらんと他の者は思った。元々の担当者であるウイルス学の教授は家族の様子を見に行くと言ったきり行方不明になり、他の研究者も徐々に数を減らし残っている人数は偏屈な女老教授の一派以外には殆どいなかったのだ。


「ええ、分かっていますから大丈夫です。貴方もお疲れ様です・・・もしよければ街の様子や他の場所の様子も教えていただきたいのだが・・・恥ずかしながら余り外に出ないので・・・」


「構いませんよ、そうですな―――――まあ、ひどいもんですわ――――」



 フルフェイスの男は何かを思うように空へと顔を向け、語り始めた。


仕事がやばい、終わらない・・・こういうときは酒を飲んで落ち着くんだ→炬燵で寝落ち→いつものネット巡回が終わらない!→やべぇよ、やべぇよ・・・

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