1-17 止まる都市~WWW~
インターネットの無い社会、メジャーになってからは僅か20年と少ししか経過していないが…今では無いことが想像できない存在。サービスを利用したSNSや通信、情報収集娯楽等々…今ではスマートホンが主流となり使わない日が無いと断言してもいい程である。
いや、むしろ今までよく持ったと言うべきであった。
海外の数々のリンクが途切れて久しく、大手通信会社の日本の支店が独自にサーバーを管理し、通信会社が通信網を維持し繋がりにくいながらも国からの支援もあって無料のwifiスポットを各地に展開し大きく社会に貢献していた。だが、それを管理する人間がついに不足し破綻した・・・只それだけの事であった。
まず自殺者が増えた。只でさえこの『アリゾナ病』で自殺者の数はかつて無いほどに膨れ上がっていたが、さらに統計の折れ線グラフは恐ろしいほどの急勾配を見せた。人々は満足に外出できない中、齧りつくように握っていた僅か300gに満たない電子機器の機能が失われただけで不安に駆られ、恐慌に至る姿もまた多かったのだ。
基本的な通話に関しては、固定電話は繋がりにくいながらも国の積極的な支援の元に辛うじて維持されていた。だがそれもまた時間の問題であることは必死で作業にあたる職員が一番よく解っていた。
もっとも現代社会において固定電話を持っている世帯は大きく減少しており、この事は外出が自粛されている上に外部との通信が遮断されたことを意味しており自殺者が大きく増える要員にもなり、そして不要な外出が増え被害者を増やすことにもなった。
配給所までの主要道路や会場には警察や自衛官、自治体の自警団が配備されており感染者が急に襲いかかってきたときや急に発生した場合には慣れもあってか、かなり乱暴にではあるがすぐに取り押さえられていたが・・・路地裏や過疎地域、入り組んだ場所には自宅で発症し食糧を求めて蠢く感染者の姿が散見され、極度に空腹の感染者は手ごろで大きなエモノ、不用意にうろつく人間を襲うことが珍しくなくなってきていた。
・・・そして通信の問題は今なお戦い続ける全国の研究機関にも影響を及ぼしていた。




