1-13 有能なる「○」
年末年始忙しくて更新遅くてすいません。今年度最後の投稿!(ギリギリ2016年)
大学の研究室にて老教授に酷使されている男は、目鼻立ちが整っている中背で細身の男と話をしていた―――いずれ「K」と呼ばれる男だ。「G」と呼ばれる男とは高校、大学時代を通して親交があった。
「お久!何年ぶりかね・・・俺は普通に就職したが、そっちは残って研究者コースだったなァ」
「ああ、学会でアメリカに行っていた。御両親の事は大変だったと聞いたぞ」
「まあ、な。ま、元々薄っすらと予感はしてたからなァ・・・今の方が余程大変じゃないかね?」
茶化すように男は両手を広げる、そのようすを見た細身の男は眼鏡を気障ったらしく直した。
「ふっ、相変わらずだなお前は。確かにアメリカから帰ってくるだけでも大分時間が掛かった、空港は閉鎖で船便でようやく少し前に帰ってこれた所だ」
「おっと、USAさんも酷いのか?」
「多分お前が思っているよりも酷いな。あっちも軍隊が大分出張って何とか抑えているが感染者以上に混乱に乗じた暴徒が酷い、地方自治体の権限が強いがそれは富裕層の地域が優先的に税金で守られていると言うことでもある・・・逆の地域は酷いもんだ、いやむしろ最早治安が機能していない地域の方が多いくらいだな、インフラもその辺りの地域は壊滅しているし感染者と暴徒が殺しあっている様子が普通に見られるようだな。皮肉にも俺はそのおかげで問題なく過ごせ、帰ってくることが出来たがな」
研究施設が集まるのは一等地、それも元々警備が厳しく優遇されている地域であることが多い。必然的に富裕層や知識人が多く派遣される警察官の数も多かった。
「アリゾナが最初と言われているしなァ・・・まぁ酷いのが当たり前かね。あっちじゃ治療の方はどうなってんだい?」
「俺は工学が専門だから医療のほうは良くは分からん。だが基本的には監獄や刑務所に押し込んで後は食事だけ用意して放置と聞いた。無論高額な医療費が払えて家族から希望があれば病院での軟禁生活を送る感染者もいるが。根本的な治療法の話は聞かんな」
「そうか・・・ババアの言うとおりだなァ」
「ババア?仮にも教授にそれは無いだろ・・・確かに悪い噂しか聞かないが。むしろお前が何でここにいてあの教授の下働きになっているのだ?」
「いや、あれはババアで十分だ、噂以上、マジで、在りし日の先輩方をリスペクトするレベルだ!いや済まん、話がそれたなァ・・・しかし、まあ、何というか・・・第六感ってやつかな?非科学的でアレだが・・・それにもうフットワークも軽いしねェ」
「・・・そうか、いや、笑わないぞ。俺もアメリカから戻ってきてすぐに両親と弟を祖母の住んでいる鄙びた離島まで送ってきた、金は余り余っているから無理も聞かせたし物資も多量にな――――この騒動、確かにそうそう治まるようには思えん」
「ほう、いわゆる疎開って奴か。もはや死語だが日の目を見るとはねェ・・・しかし、一緒に島に行かなかったのは何でだ?」
「ん?それは勿論研究があるからに決まっているだろ」
男は表情を変えずに言い張るその顔を見て苦笑した、やはり、研究者と言う人種はどこかおかしい、と。
「進んでいるのか?人型二足歩行兵器の開発?」
「兵器とは公式には言えないがな、あれは浪漫だ、その為の研究だ。ソフトの方が問題だ、ハードの構造も大事だが制御が上手くいけば何とでもなる。人が乗れる試作品はできているぞ、胴体部と足だけで吊るされた状態だが・・・この騒動のせいでどれだけ遅れるか」
「全く、ぶれないねェ、そっちも!ま、大学自体も感染者のせいで人死にが出て休校状態、生徒も教員も残っちゃあいないなァ・・・おかげで共同機器ががら空きでババアからの仕事がやばいほどにあるが。というか、もはや小中高の全部が休校状態だったさな」
「ガキは喜ぶかも知れんな、最も公園で遊ぶわけにもいかないだろうが」
「今時の子供は外じゃあ余り遊ばないって。ゲームがメインの上に、面白い遊具も危険だとかいうクレーマーのせいで潰されてるからなァ。邪魔だからって球技さえ禁止にさせられている場所も少なくない・・・それで、どうすんだこれから?」
男は問いかける。「これから」、この言葉は非常な重さを持っていた。研究を続けることは、実際のところあまり現実的ではない、最新の研究はその環境も高度なものを要求する。施設としての大学は健在なものの、機能としては大分低下した状態にすでにある。そしてそれ以上に迫り来る脅威にどう対処するかの問いかけでもあった。
「・・・最悪を考えないといけないだろう、今行っているデータのまとめが終わったらすぐにそちらに取り掛かる。まだ街の機能が残っているうちに物資を集めないとな。幸いここは大型の総合大学、機材は揃っている、お前はもう動いているな?」
「まァね、俺はそっちほど頭も良くは無いがやれることはやっているさ。密林通販がまだ動いているときにコレでもかというくらいに色々と買い揃えたよ・・・ババアの金でな。金は独身だし余りまくっているんだってよォ」
「ほう、流石だな。頼もしい限りだ・・・食糧は何を用意した」
「はいさ!勿論カロリースティック倉庫部屋にぎゅうぎゅう詰め、プレーン大目で!!」
「はぁ!?あの糞まずい総合栄養食品か!?馬鹿野郎!ぶれないな相変わらず!」
「いいだろ!俺は好きなんだよ!周りの評価は悪いけどさァ!あの栄養補給を第一に突き詰めた無駄の無さ、敢えてのあの味、不人気ゆえの安さ、パーフェクトだろォ!?」
カロリースティックとは一本で400kcalを誇り必要な栄養素の殆どを詰め込んだと言われる小さく長方形のぼそぼそとした食感のスティックでアルミ包装紙に包まれており保存性も高く、非常食としては極めて優秀であった。ただし、その味、特にフレーバーも何も無いプレーン味は酷評されていた。
「有用性は、認める、認めるが・・・いや、仕方が無い」
「うん、まァ在庫が大量にあるのはアレしかなかったという点もありますがねェ・・・他にも色々と集めてあるけどチェックを頼むわ、一人だと色々と見逃す。ババアは研究以外には無関心だしなァ」
「分かった、早々にやろう。それに、連絡がつく中で無事な連中がいたら集めることも視野に入れたほうがいいかもしれん、有用な奴だけでもな」
「お前さん以上に有能な奴もそうそういまいに・・・まァいいさ、おいおいやっていこうぜ」
立ち上がった二人の男のシルエットは廊下の奥へと消えていった。
正月も酒を飲まねば・・・日本酒は種類が多すぎる、ワインのぶどうの品種以上に分かりにくいかもしれませぬ・・・米の品種も勉強するべきか!?




