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1-8 綻びと俗名


 社会の状況も刻一刻と変化していった。勿論悪い方へと。


 フラッシュが瞬く中、疲れきった様子の厚生労働省高官から感染者は日本の人口の1%を超えて今尚増加中との発表がなされた。現在治療法の確立や患者の入院する病院の確保等を全力挙げて行っていくとの発言もあったが人々の不安は治まることは無かった。


 交通インフラ、特に路上での事故は数知れず・・・運転手が発症、同乗者が発症、そして路上へと走り出た発症者との接触、勿論事故が起これば警察や消防が動かなければならない。車の移動や負傷者の救助だけでは全ては済まない、事故状況の確認や検証等々やることは多い。事故の規模が大きければ必要となる人の数もこれまた多い。国からも公共交通の確保と生活物資の運送を第一とし、自家用車での外出は極力控えるするよう周知された。


 警察では既に引退したOBへの非常勤職員の打診や中途採用者の積極採用、警察学校へ通う新人の即時戦力化等が進められていたがそれでも仕事量は増すばかりで職務が滞っていた。これに加えて社会への不安からか治安も悪化してきており非番で休むことの出来る職員は最早殆どいなかった。


 交通渋滞はあらゆるところで見られ、それは事故の対応への悪影響も与えていた。ただでさえ普段から遅れるバス停の時刻表は無用の長物と化し、大きく本数を減らし不定期にやってくるバス停には長蛇の列ができていた、地方から都市部へ買い出しに行こうとする人々・・・数多の商品数を誇ったスーパーマーケットやコンビニエンスストアでは不安から買占めを行おうとする人々の動きもあって商品の欠乏が目立ってきていた。


 『器質性意識水準低下症候群』、これは日本だけではなく全世界的に蔓延していた。故に、多くの物資やエネルギーを輸入に頼る国としては少なくない悪影響を受けていた。そして、この頃になるとこの長ったらしい病名に別の通称が広がり始めた。事の起こりは定かではないが、インターネットの掲示板を介して広がった名前であった。





 ――――――『アリゾナ病』


 最初にこの『器質性意識水準低下症候群』が確認されたのがアメリカ合衆国のアリゾナであるという噂が嘘か真かはさておき囁かれた為に広がった俗名であったが、呼びやすい名前と面白がったマスコミが使用し始めたこともあり日本において知名度が急速に高まっていった。

 

 

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