第569話 ある大魔王の墓参り4
「あのころの私が、ただ一つ間違っていたことは・・・
「世界を破壊し、全てを無に帰す」ことだった。
当然だ。
そんなことをすれば、当時ファルストどころかその腹の中にいた我が子を殺していたことになる。」
「今の時代で、ようやく「悟った」のね。」
キティルハルムの王宮・・・
私とウォルストは、「スパークリング・ワイン」を飲んでいた。
「しかし・・・
お前・・・
人の悩みやグチを聞くのがうまいな。」
「とうぜんでしょ。」
ウォルストは、意外そうな顔をする。
「私は女王の他に、魔導士、格闘士、錬金術師、科学導師、王立図書館館長、教師の肩書を持っているわ。
教師としての専攻は「職場心理学」。」
「なるほど・・・
この国の連中が、皆素直なのは、お前が「教育」しているからか。
「国母」とは、よく言ったものだ。」
「お褒めにあずかり、恐悦至極♪」
「私も、お前のような師につきたかったものだ。」
おや?
意外だ。
「そう?」
「ああ。
今の私は、私たちの過去の過ちの尻ぬぐいをしてくれている、お前たちの邪魔を排除することと、今の仲間たちのいる世界を守ることしかできん。
それが、「負け犬」だった私が、「勝てる」唯一の手段だ。」
そう言うと、ウォルストは、印を結ぶ。
「墓参りに付き合ってくれて、礼を言う。
では、またな。」
ウォルストは、空間転移で帰った。
「人に歴史ありか・・・」
私は、空を見た。




