第55話 怖ろしき者達・・・
「銀河人」は、キティルハルムの街並みに、驚嘆していた。
「で、あそこが、職人街にゃ。」
「「「げっ!」」」
絶句する彼らだが・・・
「なんだにゃ!無礼なやつらにゃ!」
いや・・・
私には彼らの気持ちがわかってしまった。
あそこって、ミケランジェロ一族が密集しているから、私とてあまり行きたくない。
にゃーにゃーうるさいんだわ・・・
先入観なしに付き合えた君主は、初代女王やライル二世くらいだろう。
「うちから出た名工の作品で、素晴らしいのが、エメラインの「クリスタルの骸骨にゃ・・・
あの頭蓋骨にあの肋骨・・・
ああ・・・キレイだにゃー・・・」
うっとりしている。
あ・・・あぶねえよこいつ!
「あんた・・・これまで、かつおぶし・・・六個は彫らされたって聞いたわよ・・・」
「十個にゃ・・・」
あ・・・涙目・・・
聞かないほうがよかったことを聞いてしまったかも・・・
「殿下・・・なんでナキ殿はしょぼくれておられるんですか?」
ボブカットの女性パイロットが、尋ねてきた。
言わなきゃだめだな・・・言いたくないが・・・
「彼女の家は、彫刻家の家なんです。
これまで、王立学校を卒業したものの、ふらふらしていたため、跡を継ぐと決まってから、それはもうしごかれ続けて・・・」
「それと、かつおぶしは・・・」
「ミケランジェロ一族の彫刻家は、弟子に懲罰と称して「かつおぶし」で彫像を彫らせます・・・」
ううッ・・・言うのもツラい・・・
「・・・・・・」
「美味しそうなかつおぶしをですよ・・・」
言ってて、よだれが出てくる・・・
「そ・・・それって・・・拷問じゃあ・・・」
猫にかつおぶしを彫れということのひどさを・・・
人間族ですら、理解できてしまうこのつらさ・・・
「はい・・・現にこいつ・・・廃人同様になったことすらあるとか・・・」
恐ろしい・・・
前世で労働者をしていたし、転生してから学校では、先生たちに筋がいいとほめられた。
私は、ちらりと「職人もいいかな?」と思ったことすらある。
だが、今ならわかる!
「職人王」がいなかった理由が!
「人猫でなくても、今の説明で充分・・・」
わかってくれたか・・・
鰹節の懲罰とは・・・
「拷問」なのです・・・




