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第54話 イリアの職場心理学

「あ・・・

あの・・・イリア閣下・・・?」


ソフィの部下の一人の、二十代くらいの男性が、イリアに話しかけてきた。


「どうかされました?」


「部下がね・・・仕事中、口を聞いてくれないんですよ。」


まったく・・・「外国人」に相談することか?


「詳細を。

状況がわからないなら、お答えしかねます。」


ユニィの頭をなでながら、イリアは尋ねる。


機動兵器テルナハル第一大隊長アルティス・ファナウ大佐であります。

実は、部下ナル・エストリア少佐の亭主が、私の前任者で、結婚退役したのであります。

最初は、亭主が、どうのと言っておったのですが・・・」


「はあ〜そうですか・・・」


イリアには、大体わかった。


ミリアムが、過去に経験したことに酷似していたからだ。


ナルという人物は、職場での仕事の円滑化のために、「亭主」が、どのように働いていたかを参考程度に彼に教えていたのだろう。


「ナル少佐は、あくまで「前任者」の仕事をお教えしていただけではないですか?

しかし、息抜きのふざけた会話ならともかく、「仕事の会話」でご亭主のことを言ってしまったため、「セクハラ野郎」だと思われた可能性が高いですね。

今度は、「前任者としてのご亭主」の話をまじめに聞いてあげてください。

改善要求や提案など、少佐との仕事の連携が、円滑になるものと思います。」


「そ・・・そうだったのか!」


イリアは、ペットボトルのお茶を飲む。


「しかし、なぜその若さでこんなことをわかっておいでで?」


アルティス大佐は、えらく感心した。


「妻が・・・ミリアム様が、新しく王立学校で導入される「職場心理学」です。

古くは、ライテス卿がアルミニウム精錬工場での現場監督の意識向上を実施したことで効率・生産性が向上したことに端を発しています。」


「ほう・・・どのような・・・」


「作業でミスした場合、「お前をしかっていて時間がとられるんだ!」と言われるのと、「しかられて作業時間がとれず効率が悪化するのは嫌だろう?」と言われて・・・

どちらが、より反省しますか?」


アルティス大佐は、感心した。


この星は、指導者クラスがこんなことを考えているのかと。


「ま・・・ミリアム様も、前世では、「こう叱られたほうがいいのに。」と思って文句を言っても、取り合ってくれなかったといっておられました。

確かに、叱られているほうが悪いのですが、叱られ方ひとつで向上するか、悪化するか決まってしまうものです。」


そう言うと、イリアはまたお茶を飲んだ。

こういったことが、今の日本に欠けています。

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