第533話 年末アニメ収録
「だりゃあああッ!」
私は、裂帛の気合を込める。
画面の向こうの、黒猫の魔導師が、船の上でクラーケンに魔法をぶっ放すシーンだ。
「カット!」
OKが出た。
「にゃあ・・・
さすが、陛下にゃ・・・
「ノワール女王物語」の初代陛下や、「勇者ルミナリア物語」のノワール二世陛下役は陛下しか考えられないにゃ。」
ミケランジェロ一族のアニメ監督スクリナ・ミケランジェロが絶賛する。
って・・・
毎回、「主役」で呼ばれてるんだけど・・・
「で・・・
あちしは大抵、リケちゃん役にゃ・・・」
しょげているナキ。
「年末アニメは、キティルハルム国民の最大の娯楽にゃ。
手は抜けないにゃ。」
言うと、スクリナは左手を引っこ抜く。
すぽんと。
「!!!」
「冗談にゃ。」
そのまま、「本物」を袖から出す。
「びっくりしたにゃ?」
誰あろう、ルカ様に見せたアニメを製作したのも彼女だったりする。
「でも、今言ったことはホントにゃ。」
妥協ないのだ。
「しかし、「ミリアム戦記」の本人役もすばらしかったにゃ!」
「恥ずかしいんだけど・・・」
「謙遜されても困るにゃ!」
スクリナは、私の肩に手を置く。
「「本物」の気合を叩き込むにゃ!」
さすがに、ミケランジェロ一族・・・
恐い・・・




