第37話 進化と退化
ぎゅむッ。
爪の辺りを押してみる。
反応なし。
「ふんッ!」
意識を送ってみる。
反応なし。
「何やってるんですか?」
イリアが、声をかけてきた。
「爪・・・ないのよね・・・」
「ありませんよ。」
ないのだ。
爪は。
正確に言うと、建国期の人猫は、爪が猫の爪になって伸びたらしい。
事実、ノワール女王は、超魔王の助手であったネズミと戦うときに、右手に杖を持ち、左手から爪を伸ばして戦ったらしい。
また、夫・ライル一世との睦事を邪魔される度に、初代宰相エラルを引っかいていたとか。
痛そうだ。
つまり、爪がないとは、人間の爪のままであるということだ。
「「人間生活」永いですからねぇ・・・
退化したみたいです。」
それでも、外見と身体能力を残している。
「でも・・・
尻尾がなくなっていないのはいいですね。」
イリアは、尻尾をユニィの目の前でぱたぱたとさせる。
「きゃうううッ!」
ユニィは、喜んでイリアの尻尾にじゃれる。
「こういう使い方もできる。」
戦うことに使う例もあるのだが。
格闘士と呼ばれる、戦士たちは、ミスリルで作られた「キャットクロウ」なる爪と手甲を合わせた武器を利き手に装備して戦う。
これは、建国期を経て爪が退化しながらも、格闘技を使用していた格闘士のために開発されたという。
ユニィの耳をなでてみる。
「きゃははは!」
うーん・・・
こういうのもいいなあ・・・
残念!
爪は伸びません!