第343話 もう一つの「未来」
「平行世界・・・!」
報告を聞いた私は、仰天した。
「なんだいソレ?」
実験用マウス一号が聞く。
「・・・陛下の受け売りなんだけどさ・・・」
発酵業務用マウス一号が、説明する。
「Aという事件があった。そこで、Bという行動を起こす。
するとCという結果が、できる。
しかし、Cの結果に対し「時間魔法」を使ってBを実行しないことで、B´という選択肢ができて、C´という「もう一つの結果」ができあがる。
地球人は、昔から「わかって」いたそうだよ。」
「・・・そうか・・・
あのパスキール・パレスは「今のこの世界」ではなく、「初代六勇者」を追ってきた「邪進化」した「超魔王」の居城か・・・」
「つまり、ネズミさんたちと同類じゃないの。」
ユニィが、言った。
「多分、あそこに「僕」はいないね。
いたとしても、現在の「僕」じゃない。
なにせ、全てが滅んだ世界では、僕は「無用の長物」だからね。
恐らく、ご主人様や、他の大魔王はただの情報として取り込まれているだけだろう。」
「では・・・
彼らは・・・」
「「敵」だね。
僕たちのように、君らと戦って理解したわけじゃない。
ありゃ、ただの暴走した「悪魔」だ。」
イリアの言葉に、実験用マウス一号が答えた。
そのときだ。
一人の騎士が、報告に現れた。
「へ・・・陛下・・・!
司書神カイロス様が、時空神クロノス様を伴って「深淵の図書館の扉からお越しです!」
「すぐお通しして!」
やはりか・・・!
「時間魔法」に関わっている!
並行世界論
実は、「世界」は一つではなく、人間たちの行動の「選択肢」によって、決定されるという説がある。
近年、未来から誤作動を起こしたコンピュータの問題解決のため、「現代」のコンピュータを入手する目的でやってきたという「未来人」の予言と、実際の歴史に「ズレ」が生じているという。
「本人」は、自分が歴史に多少なりとも「介入したため」としているが、真相はいかに・・・




